劇場公開日 2021年7月9日

「漫画、ジャニーズだろと侮るなかれ。近年一の傑作演技派青春映画」ハニーレモンソーダ Zia Ecoさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0漫画、ジャニーズだろと侮るなかれ。近年一の傑作演技派青春映画

2021年7月12日
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幸せ

原作を知らない人には、この夏ひとつ映画を見るならこれを迷いなく勧めたい。原作ファンも実際観たら少なくとも半数は感動で衝撃を受けるはず。感動というのは決して泣けるという意味ではない。凄く良質な映画。原作の人間ドラマ性の濃い部分だけを集めて作り上げられた映画で、出演者が【主演含め】全員相当な演技派で、少女漫画展開ではありつつもひとつひとつのセリフと感情に説得力があり過ぎる。こんな(漫画原作の)恋愛映画今まで見たことがない。実写ものというか普通に映画としての完成度がとても高い。出演者の綺麗な顔を拝んだりイチャつくシーンを楽しむためのものでは全くない。それは主演のsnowmanラウールが万人受けするタイプの美形ではないことからも明らかだろう。ただ実際彼は映画の中でとんでもなく美しく、また素晴らしい演技をしている。ラウールと吉川愛、堀田真由の名演技を見る為に何度も通いたいくらいだ。他のメインキャスト3人も漫画ものっぽいキラキラ感を醸しつつ一つの作品に集結するには十分過ぎる演技力の高さでヒロイン達を手堅く支えている。また映画の長さが内容の濃さに対して足りないくらいなので無駄な綺麗カットやいちゃつきシーンは一切無い。1s残らず全てが作品にとって重要なシーンだ。こんな濃く素晴らしい作品をよくあんなチープでライトな予告にできたもんだ、ってくらい予告じゃ何も見えていない。(←賛辞)予告は原作の本来の読者層に向けたものだろうが、この映画はそんな純な児童から人生を重ねた大人までの心にくるだろう。個人的には、大人の方が演出や演技の深いところまで掴めてこの映画が深く深く響くと思う。見るまでは吉川愛とラウールの顔立ちが原作のキャラのむしろ逆を言っているところやスタイリングの解釈違いになんで!?という気持ちだったが、見たらこれが画期的な正解だったと分かった。ふたりの顔の華やかさが、原作のしゅわしゅわした美しいイラストを生身で映像化していて衝撃的だった。未だかつて実写邦画が成し遂げたことのない域では?横向きのカットなどで普通の役者が演じたら生きた日本人感が出てしまうところを、このふたりでは一生漫画の美しさだった。観たらこの感想がわかってもらえるだろうと思う。ふたりの顔立ちの原作とのギャップだが、このふたりの映画での佇まいと演技力を前には、驚くほど全く存在していなかった。このレビューを見たからといって別にこの作品に期待しなくてもいい。だが、これを映画館で観れる機会を偏見で逃してしまうのは余りにも勿体ないことだと思う。本当に良作でした。観劇後、心は綺麗に洗われて、人を大事にしたい、優しく温かい気持ちに満ちていました。そんな期待しないで、試しに見てみたらどうでしょう。

Zia Eco