「未来の話をたくさんしよう」映画 太陽の子 movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
未来の話をたくさんしよう
科学の根本の原子を突き詰めていくとどうなるか。
恐ろしいことを言わはるなぁ。
そこに尽きる。開発競争に巻き込まれる京大研究室。
科学を突き詰めるとエネルギーの解放と破壊、そこには一瞬にして人体の原子の結びつきを変え、人体を石にし、人体の水分を沸騰させ剥けた皮が爪で止まり垂れ下がる地獄絵図と化す。
人間の心が大切に思う守りたい気持ちなど、科学の原理には通用しない。
科学者として学問を突き詰める純粋な気持ちは、
たとえその時が戦時下でなかったとしても、
机上を実際に試そうとすれば、それは人体に影響と危険を及ぼす。
原子力でも、遺伝子でも、同じ事ではないのかな。
作中、研究が殺人と紙一重と学者一同自覚をし、葛藤をしている。そこに、進んで、勝つためやアメリカ人の命を狙うために、落としたいとまで望む物は1人も出てこない。
そうなのだ戦争の惨禍は、誰も望まずに起こる。
それは科学にも組織論にも国際学にも経済学にも通ずるが、でも確かに人間が引き起こすこと。
命がある有り難みを実感し、
命の危険と隣り合わせの時、生きたいと直感し、
大切な人に生きていて欲しいと望み、
自分の命をどう使うのか、考え抜いて悩み、
できれば平和のため、日本の未来のために使いたい、
そう望む、自分の属する人類自体が、
兵器よりも恐ろしい、戦争自体を引き起こす。
下手すれば、意思を持って、
人は人殺しにもなってしまう。
自分がそういう種の生物だということが、
度々末恐ろしく、この作品も、
見終えてしばらく鳥肌が止まらない。
兵器を極めて、牽制し合う世界平和。
弾で一瞬で死ぬ人体、一瞬で狂う幸せな気持ち。
そこに大量殺戮を計画して、
苦しみと憎しみと復讐を生んで、何になる?
武器を売買して資金確保し、石油を取り合い、これをやっているから国が資源と食糧を確保し餓死せず済む仕組み。人類は恐ろしい。
開発戦争に負けました!とはっきり言わせるこの映画の製作はイオン系か。。
終戦まで未来ある学生を守った先生。
研究の、戦争の、更にその先の、未来を考えなければいけないと繰り返し作中でもメッセージが出てくる。
本当にその通り。
密かに弟の方が大切なのかなと感じる兄だったが、
母はちゃんと見ているし、
どちらにも特大おにぎりを作って、
帰宅を願い送り出す。
食い縛り生きているが戦争終われと秘める世津、
空爆を見る一瞬の三浦春馬の視線から、
あぁ裕之は憎しみも知ってしまったとわかる描写、
どんな時も平静な修の感じていた困惑と責任と喪失が、
比叡山で静かに溢れ出す描写。
演出意識の高い過剰な描写は出てこず、
落ち着いた台詞と表情の中でも、
伝わってくる人間的感情の数々に、
ますます戦争が怖い。
未来を考えよう。
口に出すのも憚られるおぞましい光景は確実に含まれていないはず。