「おにぎりシーンは意味不明」映画 太陽の子 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
おにぎりシーンは意味不明
原爆開発に携わった京大の学生を太陽の子と呼ぶのだろうか、核融合も核分裂も核エネルギー反応として一括りにして美化したような表現、タイトルに違和感を禁じ得ない。
日本人は唯一の核爆弾の被害者だが裏を明かせば原爆を作ろうとしていた事実は、どっちもどっちというところ、軍国主義の宿命とは分かっていても傷口に塩を塗られた気分にさせられる。
また、米国に合作を申し入れたというのも、あなたたちへの免罪符になる映画ですよと言うことなら噴飯もの。
戦争に巻き込まれた若者の葛藤、悲劇という点では数多の作品で描かれているので凡庸の感、最後の山頂でのおにぎりシーンの長回しは意味不明、当時、銀シャリと言われた貴重な米飯を学生ふぜいが頬張れたのは何故なのか、また視線の先に異変勃発のような思わせぶり、まさか京都に原爆投下かい?
(脱線です)
原子物理学の研究は戦前から始まっており、その優秀さは後の湯川博士、朝永博士らのノーベル賞受賞でも明らかですね。
原爆開発に着手したのは陸軍からの命を託された理研の仁科研究室が中心で、後に海軍が京大の荒勝研究室に原爆の元となるウラン235の生成を依頼した。
本作は後者の研究所を描いています。原材料は陶磁器の釉薬の着色剤として用いられていた硝酸ウラニル (ウランの硝酸塩)、京大は京都市五条坂の陶磁器専門の薬品問屋から仕入れていたようです。
ウラン鉱石は国内では希少、児玉誉士夫の一党が上海などから隠密裏に調達していたともいう、理研の方は福島の石川郡石川町から学徒動員で掘り出された鉱石を使っていたらしい。福島にウラン鉱脈があったと言うのも因縁めいていて背筋が寒い。
核分裂の連鎖には濃縮されたウラン235が必要だが天然には僅かしか含まれておらず分離や濃縮方法が鍵となる。劇中でも遠心分離法での実験が映されていましたね。理研の方法は熱拡散法であったがいずれの方法でも大量生成は困難だった、マンハッタン計画では気体拡散法でウラン235の濃度をある程度まで高めてから電磁法に掛ける方法が採られた。
従って、日本は基礎研究はしていたが実用化は無理だったと言うのが定説のようだ。
ところが、信憑性は定かでないが日本軍は北朝鮮の興南で原爆を製造しており1945年8月12日早朝、北朝鮮興南沖にて海上爆発に成功していたというCIA機密情報があるそうだ。
直後に関係者は侵攻したソ連軍に拉致されたという。ひょっとして今の北朝鮮の核開発のルーツは日本軍に合ったのか・・。どうせ映画にするなら、こちらの視点の方が興味深いですが、ヒューマンドラマでは無くなってしまいますね。