「山本晋也を久しぶりに見た気がする。」映画 太陽の子 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
山本晋也を久しぶりに見た気がする。
「カントク」といえば山本晋也。「ほとんどビョーキ」という流行語を生み出したり、映画の解説なんかもしてたり(特に男はつらいよシリーズが印象的)したが、やっぱり『愛染恭子の未亡人下宿』(1984)が最高峰。そんなカントクもヨボヨボ爺さんの役をやるんだと感慨深かった。
TVドラマ版は未見ですが、ETV特集「本の原爆開発~未公開書簡が明かす仁科芳雄の軌跡~」を見ました。理研仁科の場合は陸軍から依頼され「二号計画」と呼ばれていたが、映画では海軍が京大の荒勝教授(國村隼)に依頼して「F研究」と呼ばれていた。アメリカの巨大プロジェクト「マンハッタン計画」とはけた外れに小規模なものだったことが写真からも読み取れるのです。
「これで戦争を終わらせられる」といった台詞もあったことから、原子核爆弾の威力を確信していたことが窺われるけど、それが徐々に科学者の心と相反するように良心の呵責にも苛まれる。戦争に勝つことと、世津が戦後の未来まで考えていること、そして現実的に弟(三浦春馬)が再び戦地に赴くこと・・・様々な思いが若者たちを交錯し、言葉には表れないが戦争の虚しさを表現していた。
清水焼窯元で仕入れる黄色い粉ウラン。仕入れ先の意外性もあり、かなり勉強になりました。そして核分裂や化学反応の美しさに見入られる学者魂、計算は苦手なのに実験が生きがいとなる主人公・石村修(柳楽)のキャラも面白い。そして特攻へと向かう裕之の儚さ。彼らが海で戯れる光景は戦時下とはいえ、美しかったです。
原爆が投下された広島を訪れる荒勝教授と修たち。「これがぼくらが造ろうとしていたものの正体なんですね」と、兵器を作ろうとしていたのだと理解する。探究心は純粋なものなのに、現状を見ないとわからないものなのだ。なお、比叡山に登ろうと決意したのは荒勝教授が語ったエピソードのようだ。