「傷ついても尚、君は美しい」映画 さよなら私のクラマー ファーストタッチ Dポッターさんの映画レビュー(感想・評価)
傷ついても尚、君は美しい
アニメ版しか観ていなかったのですが、とても魅力的な登場人物たちと作風に惹かれて劇場版を鑑賞しました。
アニメ版冒頭などで度々回想シーンとして描かれていた恩田希たちの高校入学以前の物語が今作では描かれています。
天才サッカー少女、恩田希(のんちゃん)が高校男子サッカー部の3人それぞれとの微妙な距離感で慕われている背景や、彼女がナメックから「親分」と呼ばれている訳など、アニメ版だけを観ているとちょっと不思議な理由が分かる作品でした。
きっと作者の一番描きたかったのはこの中学時代の彼女なんだろうなと感じるほど、魅力的です。
男子に混ざってどれだけ練習をしても、チームの誰より巧くても試合に使ってもらえない苦境、苛立ち。
クラブの時代には自分の方が巧かったのに、身長もフィジカルも追い抜かれていく焦り。挙句、ユニフォームさえもらえない悔しさと危うさ。
そして衝突しながらも監督が恩田を「日本女子サッカー界の宝」と信じて大切に育てようとしている事、さっちゃん(マネージャー)との信頼感。
そして小学4年で転校していったナメックが対戦校のキャプテンとして再会。
自分より背も低く泣いてばかりだった子分は、彼女に追いつきたくて泥だらけ、傷だらけになっても体を張ってチームを盛り立てる姿に彼女も何かを感じます。
彼女自身もまたどんなに弾き飛ばされても、傷ついても、何度も立ち上がる姿は高校サッカーのテーマソング『振り向くな君は美しい』の歌詞のようです。
そして彼女たちの監督が言う「フットボールを愉しもう」はまさに、恩田希にとってのサッカーを始めた原点であり、それを思い出してからの彼女のプレイはまさにファンタジスタ。
“フィジカルで勝てないのならフィジカル以外の全てを使って勝ってやる”
普段は色々と雑な恩田希が、性別の壁に悩んでもがいて、そしてそれを跳ね除けようと男子たちとぶつかり合う姿は感動的でさえあります。
そしてエンドロール後にアニメ版へと繋がるシーンが描かれ、またアニメ版もまた原作も見てみようと思いました。
映画館の大きなスクリーンで、ピッチを縦横無尽にダイナミックに展開されるプレイは迫力あり。
恩田のプレイはついアニメであることを忘れてしまうほど観客を魅了します。
あとさっちゃんの正妻力が高くて、キュンとします(笑)