ハッピー・オールド・イヤーのレビュー・感想・評価
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人生の断捨離
とても良い映画だった。
留学から戻った女性が理想のキャリアを求めて、自宅をオフィスに改装しようと考えた。闇雲に断捨離を始めるけれど、親友のプレゼントを捨てたことでその親友とケンカになる。
それをきっかけに彼女の心の中に小さな火が灯った。
本当の断捨離ってなんだろうと思わず考えてしまう。
もらったもの、借りたものを返す行為の中で自分があえてみないようにしていた過去に気が付いてしまう。
きちんと向き合わないと本当の断捨離はできないのだ。
最後の表情、彼女の未来を照らすような良い笑顔だった。
タイの映画は初めてみたけれど、この女優の演技は素晴らしかった。ちょっと冨永愛を思わせる素晴らしいスタイルだった。
序盤から感情を揺らし続ける・・・そして揺れたまま終わる映画
関係の決着の仕方はひとそれぞれ最善の選択をする。それがお互い合意の上ならよし。決着に失敗すれば、わだかまりを持ち続けるか(エム)、忘れるか(ジーン)、もう一度清算しなおすか(ジーン、ピンク)、美しい記憶として前向きにとらえるか(兄)、日常に埋没させるか(母)。決着の仕方を他人に強要できないし、巻き込めない。
時と場合によってやり方を変えて対応したけど、人間同士で割り切れない部分もある。
ものに宿る記憶がドラマを生む。捨てる人と捨てられる人、忘れる人と忘れられない人。
無意識なまま捨てる側と忘れる側にならないように気を配りたいと思いました。
マリー・ローランサン曰く「死んだ女より 悲しいのは 忘れられた女」
エムも勝手にジーンに忘れられて辛かったろうに。それを近くで感じ続けるミー。
最後のシーンで母の想いより自分の気持ちを優先させたジーン。兄の心労を察します。
チェロを返却された友達との物語も気になるところ。
ジーンは最後に自分のしてきたことや至らなかったことを理解したのだろうけど、
それでも自分にとって最善の選択をする。
他人(父親)に大事にされた経験が少ないから他人を思いやれないのか?それとも、他人を犠牲にしてでも譲れない選択だったのか。
ドラマの山場が一転に集中している映画ではなく、わりと序盤から静かにアップダウンしていて退屈しなかったです。
あと、意外と日本製の馴染み深いものがタイにはあふれていました。
無理に捨てたり、捨てられたりする、捨てられない話
ビターな物語りだなぁ、こりゃまた。タイらしく無く。
「理想の家」「理想とするミニマルライフ」のために、何でもかんでも、ポンコラポンコラ捨ててしまおうとするジーン。スウェーデンへ留学に立つ時は彼氏をポイ捨て。人の心の痛みを知らずに、この歳になりました。的な。
前に進む時には捨てなくてはならないものもある。けど。捨ててはいけないものもあれば、捨てる必要がないめのもあるわけで。
父親に捨てられたトラウマからか、痛みに思いを馳せる事をやめたんじゃないの?この子。って思う。
ミニマルライフへの仕上げとして捨てたピアノ。喚き立てる母親の言葉から逃げる為に耳をヘッドホンで塞ぐジーン。シンガポールへ引っ越すエムと、エムに捨てられたミーに言い放たれた「自分のために進むだけ」と言う言葉。
理想の家でインタビューを受けながら涙するジーン。
捨てても捨てても逃げられない。
モノは捨てられても、
心は捨てられないから。
的な。
タイは親兄弟を敬い従い、親族・友人を大切にする国。だったはず。こんな映画を作らなければならないくらいにタイ国民の心は荒んでしまったのかと。そんな心配してしまうのでありました。
良かった。ちょっとだけ。
人生の一本と言える最高傑作
この映画は、私にとって、人生の一本と言えるくらい大切な映画になってしまった。
しかし、もう一度観たいかと言われたら、今はまだいい、と答えてしまうだろう…。
そのくらい、心を掻き乱されるような、トラウマ級に刻みこまれた作品となった。
ものすごくリアルで、でもやはり究極のファンタジーのように、淡々と語られる人間模様。
ジーンを演じるチュティモンさんの演技が本当に素晴らしかった。ジーンはいつも同じ服を着て、ほとんど真顔で、ミニマルを体現している人物だが、その感情を露わにしない表情や色のないモノトーンの服装をした主人公は、まるでテネットの名もなき男のように作用し、観ている者が彼女に自身を投影できるようになっているのだ。私はいとも簡単に、ジーンに憑依するように、感情移入してしまっていた。
彼女が家中を断捨離するために片付けをしながら、少しずつ過去と向き合っていく様を観て、私自身の心の奥底に封印していた思い出と向き合わざるを得なかった。彼女が捨てきれないモノが、余りにも自分のそれとリンクしてしまい、苦しいとさえ感じた。元カレの家のインターホンを押すの…押さないの…のシーンや、ピアノの椅子に座って恐る恐る電話をかけるシーンは、目を背けたくなるような、まるでホラー映画のような場面だった。
ピアノを勝手に捨てたことに怒る母親の甲高い怒声を遮るようにヘッドホンのノイズキャンセルをONにして不貞寝するシーンには、苦々しくもありながら、安堵し、共感してしまう自分がいた。
最善の判断…それは結局、自分にとっての最善であり、他人にとっては最悪の判断かもしれない。
でもそうやって人は生きていくしかない。誰も傷つけずに生きるなんて出来ない。過去を掘り起こして、あの時の行動は最善だったのだろうかと考えても、起こってしまったことを帳消しになんてできないし、前に進む最善の材料にはならないのだと思う。。
最後に、理想通りミニマルに改装された家を眺めている彼女の表情には、不要だと考える物質は捨てることができたけれども、決して捨て去ることのできない過去をまた心の奥底に抱えて生きていく決意が現れているような、清々しく微笑んでいるようでもあった。いや、そうあって欲しい。
元カレのパソコンの中に保存してあった昔のジーンのように、鮮やかな色がプリントされたTシャツを着て楽しそうに笑っている・・・そんな日がまた彼女に訪れて欲しい。
止めどなく流れる涙に、しばらく劇場の席を立つことができなかった。パンフレットを買おうとするも涙の止まらない私に、売店のスタッフの方が「大丈夫ですか?そんなに感動してもらえて良かったです。」と声をかけてくれた。
一年の終わりに、このような作品に出会えて良かったと思う。
物を捨てること・整理することの難しさ。
初めて映画館を独り占めしました。
初めてタイの映画を観ました。
映画を観て、しみじみ捨てること・整理することは難しいなと。
①ゴール(最終目標)を設定する。
②思い出に浸らない。
③感情に溺れない。
④迷わない。
⑤物を増やさない。
⑥振り返らない。
映画では、この6点を重視していました。
しかし、物を捨てるのは難しいことで、私もよくありますが、
人からもらったものを捨てる・処分するのはなかなか難しいのです。
いやな別れ方をした、嫌な思いでしかない、
そんなものであれば簡単に処分できるのですが・・・。
全部が全部そんなわけもなく、
例えば、フラれて別れた彼氏からもらったもの。
これは、新しい恋に進んでも、捨てられない。捨てたくない思い出なのです。
私は、ミニマム・ミニマリストには到底なれませんが。
静かな映画で、いろいろ考える時間になりました。
本当に断捨離してよかったの?
2020年12月30日@シネリーブル梅田
ストーリーは、ミニマニストの主人公が自宅の断捨離を通じて過去の思い出を清算するというもの。
本作が人生初のタイ映画だったが、精細な感情の動きも描かれていて、とても驚きました。
てっきり断捨離するなかで途切れていた友情が再び紡がれるのかと思っていたが、真逆でびっくりしました。
映画の中で断捨離の掟が流れるのだが、主人公は全然その通り行動できていないところに笑いました。
断捨離しながら友人も、思い出も、捨てていくように見えて少し寂しく見えました。
主人公が物や友人を捨てることに葛藤している姿や自分の断捨離によって人を傷つけてしまったことを落ち込む姿が印象的。
それでも最後に家族を捨てた父との思い出であるピアノを処分します。
ラストで見せる主人公の涙は、捨てきれない思い出とそこにあったが無くなったピアノの空虚感に潰されそうになってでたものなのかな。
あの断捨離の掟は、冒頭から始まるインタビューで主人公が語る経験に基づく掟なのかと思いました。
心に沁みる映画だった
ただ捨てて物を少なくする事が重要ではない。
それが無いと未来を始められない物、
それを捨てなきゃ新しく歩き出せない物、
どちらも大切な物。
その区別をつけてしっかり実行する事が断捨離なんだね。
勝気な主人公ジーンとその家族の心の奥に居座る深い悲しみのくだりにロックオン。
皆、父が好きだった。悲劇の前も後も。
父のピアノを捨てる事を頑なに拒否する母。前に進む為に捨てようと決心するジーン。とても身勝手なようにも思えるけど、その心の傷の深さに心が痛んだ。
お母さん、そんなにピアノを捨てたく無いなら、子供達がそのピアノを大切に思えるようなあなた自身の生き方を子供達に見せてあげるべきだったのでは?...なんてね。強い母を求めすぎかな?
ジーンの元彼エムの言葉にもグサリときた。
「君は、自分の為に謝っている」
「本当に申し訳無いと思うなら謝ってほしくなかった」
どちらのセリフにも心当たりがある。突き詰めれば謝罪によって少しでも救われたい自分も、謝罪した時点で加害者と被害者の立場が逆転するような錯覚も。
ある意味、ジーンの父は正しかったのかも知れない。娘ジーンの電話に一言も発しなかったのは、故意か否か。真相は分からないがこの一件で、ジーンは長年のモヤモヤした想いと決別する事ができたのだから。
ただ、いさぎよくとはいかない。バラバラにした唯一の思い出の写真を結局捨てたのはホテルの清掃係の人だ。ジーンの部屋を最後に無にしてくれたのは包容力抜群の兄ジェーだった。
自分で捨てれない時は人の力を借りてもいいよ。
捨てるモノ、置いておくモノ、心の中のモノも整理して元気出さなきゃね。
エムは素敵な男性だった。けれども前にジーンが彼を選ばなかったのもわかる気がする。
(今カノ?)ミー、落ち込むことは無いわ。自らでないにしろ元カノのTシャツを今カノに着せてる男性なんて、どんなに優しくてもあなたに相応しくない。
色々な人の心の機微が網羅された繊細な映画。監督さんてどんな人だろう。もう一度観てみたい。また違う捉え方になるかもしれない。そんな映画だった。
~人生をリセットする6つのメソッド~
みたいなサブタイトルが付かなくて良かった。配給会社のセンスに感謝。
「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」で好きになった彼女の主演作ということで観た。門脇麦のようなクールな美しさが本当にいい。撮影監督の巧みな手腕できれいに撮れていた。それだけで満点。
大小様々の判断を積み重ねた結果を人生という。新たな道を進もうとする際に、たまたま来し方を振り返ってみたら、パンドラの箱が開いてしまった。更には過去の決断が、かつての恋人の人生観も変えてしまったらしい。
わたしには未来がある。見たい過去だけを選んで振り返るしかない母親の思いをも切り捨てて、わたしは将来を切り開く。
これから結婚生活をクリエイトする若夫婦には過去は美しいだろう。思いがけずタイムマシンに乗るのも悪くないとは思う。
それでも人生は続いてゆく。最適解を選択し、不必要なものは捨てて前に進もう。
本作は、一人の女性が重い哀しみを代償にして、自分の人生を獲得する話。若い人にはたまらないんじゃない。
【"君が捨てたモノの中に大切なモノは本当に無いのかい?" 若き女性が、軽い気持ちで始めた断捨離をする過程で、様々な経験をし、イロイロな事を学ぶ姿を描いた作品。】
-私の枕頭には、多数の本の側に幼き子供達の写真を入れた写真立てがある。
五百冊の本、二百枚のCDを数年かけて断捨離して来たが、家族の写真だけは一枚も捨ててはいない・・。-
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◆スェーデンでミニマルライフスタイルを学んだデザイナーのジーン(チュティモン・ジョンジャルーンスックジン)は、母と兄と暮らす家を大晦日までの1ヶ月で、デザイン事務所にリフォームするために、戸惑い、反発する2人を横目に大規模な断捨離を実行して行く・・。
◆印象的なシーン(前半はやや否定的にジーンの行為を観ています・・。)
・本屋で、"本を買うとモノが増えるから・・"と内容をスマホでパシャリ!とジーンが写すシーン。
-それは、広義で見ての窃盗だよ!今、本屋さんは君の様な行為をする人達が増えて、大変なんだよ!-
・CDを"ストリーミングできるから・・"とジーンがポイポイとCDを捨てるシーン。
-あのね、君が自分で買ったCDならば、捨てるのに異論はないが、友人ピンクから贈られたCDを捨てるのは、どうなのよ・・。
それから、アルバムは全曲通して聴くのが、通常スタイルでしょう。アーティストは曲順にもこだわっているのだよ。マア、今では好きな曲だけ”効率よく”聴くのが普通のようだが・・。-
◆自分の勝手な都合で、連絡を取らなくなったエムのカメラを彼の元(すぐ近く)に送り届けるが、受取拒否で戻って来るシーン。ジーンの顔色に動揺が隠せない・・。
ー 後ろめたかったのだね・・。ー
・渋々、自分で届けるとエームが優しく赦してくれる。エーム、優しいなあ、と思ったら再後半、エームからキツイ言葉が・・。又、エームの傍には”あるTシャツ”を着た可愛らしい彼女ミーがいる。
- この辺りをナワポン・タムロンラタナリット監督はサラリと描いているが、後半、このシーンの”効かせ方”が絶妙に上手いのである。-
・片づけは進むが、難物ジーンが幼かった時に家を出て行った父親が弾いていたピアノが残る。母親は頑なに処分する事を、拒むが・・。
- 母親を兄に連れ出してもらい、古物商に売ってしまうジーン。激しく怒る母親。ヘッドフォンをして、その罵声を遮るジーン。けれど、自分たちを置いて出て行った父親には、キチンと電話をかけて確認していたものなあ・・。父親はジーンの声が分からなかったようだし。それが、ジーンが父親と決別する決意を持たせたのだろう。哀しいね。母親の気持ちは考えなかったのかい? ジーンの仏頂面がドンドンひどくなっていく・・。-
・エムがフィリピンに行くことになり、ジーンとミーとで食事をするシーン。エームから、段ボール箱二箱分のジーンの私物を渡されて・・。
- エム、矢張り怒っているのかな・・。-
・ミーが着ていたTシャツ(もともと、ジーンのものであった・・)をジーンに返しに来るシーン。そして、エムと一緒にフィリピンには行かないと告げるシーン。
- 涙を流して、詫びるジーン。自分が余計な事をしたばかりに、エムとミーの関係性を壊してしまった・・。ー
・エムが最後の荷物を整理している時に、ジーンに言い放った厳しい言葉。
”お前は、俺に詫びているのではない。自分を慰めているだけだ・・。”
◆そして、大晦日 ジーンはホテルに籠り・・。
翌朝、ベッドには大切にしていた母親と兄と自分とあのピアノを父親が楽しそうに弾いている姿が映っている家族写真がちぎられていた・・。
<劇中、モノには様々な想い出が残されていると言う制作陣の思いを込めた、
”ジーンの友人からの昔奥さんになる人と撮った写真を探して欲しい”
という物語を絡めたりして、
『断捨離とは単に、モノを効率的に処分する事ではなく、そのモノと関わった人々との関係性、自らの思い出も”整理する”ことである・・。』という大切な事を描いた作品。
新年、過去の思い入れのある写真、品々を整理し終えたジーンの姿をどう見るのかは、観た人次第であろう・・。>
たまたま時間が空いたので直感で選んで鑑賞しました。タイの映画を見る...
たまたま時間が空いたので直感で選んで鑑賞しました。タイの映画を見るのは初めてかも。間の取り方が長いなぁ〜と思うシーンが多かった。タイっぽさを感じるところはあまり多くなかったかな。でもスマホの文字入力画面は初めて見た。新鮮。
色々と物を捨てて、返して、なんだかんだありつつ主人公がちょっと成長して殻を脱いで、吹っ切れた感じで最初のシーンに戻ってくるハッピーエンド!とずっと信じて見てたから、最後ぜんぜんそうじゃなくって切ない感じで終わってしまってめっちゃ切なかった…。うぅっ。
年末掃除の断捨離の後押しになるかと思って見たのに全然ならないよ…。断捨離でもピアノ捨てたらあかんよ…(泣)元カレの今カノもめっちゃ出来すぎな良い子やった(泣)なんか最後もうちょっと救いがほしかったなぁ〜〜(泣)
自分勝手な主人公に振り回される脇役たち
実家を自分のオフィスにするために断捨離を始めた主人公ですが、遠い昔に友人や元彼から貰ったり借りたりしたものを返すという身勝手すぎる行動に腹が立つ映画でした。
元彼との一悶着で自分の身勝手さに気づきを得たにもかかわらず、クライマックスでは母親が捨ててほしくなかった父親が置いてったピアノまでも捨てて激昂させるという胸糞の悪さ。
バッドジーニアスの製作陣ということで期待していきましたが、残念です。
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