「前作は割と楽しめたけど、今作はダメっすよ」映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
前作は割と楽しめたけど、今作はダメっすよ
原作ファンとしてめっちゃ怒ってます。怒りのレビューなので超長いですよ。
私は原作ファンで、原作漫画は全巻持っています。テレビアニメ版も全話鑑賞済みです。TBSで放送されていた実写ドラマも最近鑑賞し、劇場版一作目『映画 賭ケグルイ』も鑑賞しました。ドラマや映画一作目は、多少の不満点はありつつも、普通に楽しんで鑑賞しました。
そんな賭ケグルイファンの私ですが、本作『絶体絶命ロシアンルーレット』に関しては、明確に酷い映画だったと思います。酷過ぎです。☆1つ付けているのは浜辺美波さんや中村ゆりかさんなど、好きな女優さんの演技が見られたからであって、映画のストーリーや脚本や登場するギャンブルの展開などに関しては☆0だと思います。内容関係なく、役者陣の演技や可愛さを堪能するだけが目的であれば鑑賞をオススメできますが、白熱のギャンブルやハラハラドキドキの熱いストーリー展開を期待しているならば鑑賞する価値はありません。
あと余談なんですが、後ろの席に座っていた男性が、スマホアプリで聴ける本映画の副音声をイヤホンで聴きながら鑑賞していたっぽいんですが、尋常じゃないくらい音漏れしていて、静かなシーンの副音声は話している内容が私にも聞こえるレベルでした。映画鑑賞に支障が出るレベルでうるさかったので、スマホアプリでの副音声について考えさせられました。
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生徒会が絶対的な権力を持ち、ギャンブルの強さで階級が決まるという私立百花王学園。その学園に転入してきたギャンブル狂・蛇喰夢子(浜辺美波)の活躍を描く劇場版2作目。夢子の活躍で絶対的権力を持っていた生徒会の地盤が崩れ始めたことに危機感を抱いた生徒会は、夢子を倒すために、2年前に学園を追われた最強のギャンブラーである視鬼神真玄(藤井流星)を招集したのだった。
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脚本の矛盾・演者の力量不足・違和感のある演出・全く魅力のないギャンブル。正直全部酷かったと思います。
まず脚本についてですが、本作の脚本は前後で矛盾していることが多く、原作もアニメも観てから鑑賞している私ですら理解できない部分が多かったです。例えば、生徒会長の桃喰にとっては説明不要であるはずの「上納金システム」について生徒会書記の五十嵐が会長に長々と説明する下りがあったり、「上納金ランキング下位100名が家畜となる」という上納金に関するルール説明があった後に「最近家畜の生徒が増えている」という説明があったり。違和感や矛盾を感じるシーンが挙げるとキリがないくらいに多いんですよね。前作でも多少は違和感のある部分はありましたが、ここまで酷くはなかったです。また、生徒会メンバーが集まる大人数のシーンなどで顕著だったんですけど、キャラクター同士の会話の合間に途中で他の登場人物が茶々入れたりして「めっちゃ会話のテンポが悪いな」っていうシーンがかなり多かったように感じます。会話が冗長で、しかも面白くない。
次に演者の力量不足についてです。
賭ケグルイの特徴として「顔芸」と揶揄されることもあるオーバーリアクションが挙げられます。ギャンブル中の心理状態を描写したりコメディシーンとして機能していたり、好き嫌いが分かれる演出ではありますが原作でもアニメ版でもあった賭ケグルイの特徴の一つです。
本作でもオーバーリアクションや声を荒らげるシーンなどが頻繁に登場するんですが、とにかくオーバーに演技し過ぎてて台詞が聞き取れないシーンが多すぎるんですよ。
特に本作のボスキャラクターである視鬼神を演じたジャニーズWESTの藤井流星さん。基本的には低い声で見せ場では叫ぶようなキャラクターなんですが、発声の問題なのかわかりませんが、とにかく何言ってんのか分からない。「なんでこれでOK出たんだ」ってくらい台詞が聞き取れない。某映画レビュアーさんが「劣化藤原竜也」と揶揄していましたが、本当にそんな感じです。
次に演出面です。
とにかく演出がくどい。そして無駄に大仰。製作陣は「これが賭ケグルイっぽさ」だと思っているのかもしれませんが、多分違うと思います。漫画版やアニメ版のオーバーな演出は、キャラクターの心理状態を描写したりするのに一役買っているところがありますが、本作の演出はとにかく「こういうの求めているんだろ?」って言うよう浅はかな感じ。「これやっとけば観客喜ぶだろ」っていう観客をバカにした演出にしか見えませんでした。特にラストシーンの木渡が生霊として登場するシーンとか、つまらないし意味不明。
最後に、本作の一番の問題点だと思うギャンブルについてです。
本作では3つのギャンブル(皇のギャンブルを含めれば4つ)が登場し、最強のギャンブラーである視鬼神が芽亜里・夢子・綺羅莉とギャンブルを行うという内容になっていますが、視鬼神がやっていることと言えば、ただの脅迫。ギャンブルの内容は関係なく、人質を取って「殺されたくなかったら降参しろ」と言うだけ。ギャンブルの内容も戦略とか心理戦とかそういうのは一切なく全てを運否天賦に任せたものばっかりで、しかもギャンブルと関係ない脅迫と恐喝で勝負が決まる。
例えるなら、「乱闘で勝ち負けが決まるプロ野球の試合」みたいなもんです。観客は野球の試合を観に来たのであって乱闘観に来たんじゃない。本作を鑑賞している人たちも、ヒリついたギャンブルを観たいのであって、脅迫で相手を降参させるだけのゲームを観たいんじゃないですよね。
この手の作品の面白さの肝であるはずのギャンブルがこの体たらくなので、本作が面白いワケがないんですよ。視鬼神に「オーラが見える」みたいなよくわからない設定がありましたが、ギャンブルには一切かかわってこない無駄設定でしたし。前作に登場したボスキャラの村雨は「カード1枚1枚を目で追える動体視力の持ち主で、場のカードの種類を全て把握できる」という特殊能力を持っていて、「会長に勝ったことがあるギャンブラー」という紹介にも納得できる強キャラクター感があって凄く良かったのに、視鬼神が「学園を追放された最強のギャンブラー」と言うにはあまりにも弱すぎです。
『賭ケグルイ』は『カイジ』と近く、駆け引きや心理戦に重点を置いた作品です。相手の思考を読んだり、相手が仕掛けてくるイカサマを逆に利用して勝利したりするタイプの作品なんです。だからこそ、本作の敵キャラである視鬼神が場外乱闘のような脅迫をしてきたり、ギャンブルの内容を根本から覆すような行動を取ることがおかしいと感じますし、そんな視鬼神の行動をすんなり受け入れてしまう生徒会メンバーや夢子に対して違和感を感じるんです。原作の夢子はギャンブルに対して強いこだわりを持っていて、ギャンブルのゲーム性を歪めるようなイカサマや相手の言動に対して不快感を露にする描写もあります。本作のようなギャンブルの内容とは全く関係のない場外乱闘で勝利しようとする視鬼神の行動を容認する夢子の言動は、原作ファンの私にとっては違和感でしかないんです。
原作が好きで、前作も結構楽しめた人間からしてみれば何だか裏切られた気分です。
続編を匂わせるラストシーンでしたが、次回作があるなら原作をしっかり読み直してもう少し内容を練ってから製作してほしいものです。