「非常に品質が高いサスペンス」白爪草 プラダを着た陰キャさんの映画レビュー(感想・評価)
非常に品質が高いサスペンス
本映画はVtuber起用映画ということで多くの人はその品質に疑問を持つことだろうが、私の場合は開始数分でそれは払拭された。
花屋という鮮やかなビジュアル、シンプルながら心に刺さる音楽、無駄のない秀逸な脚本、そして主演の緩みの無いシリアスな演技によって見事に作品が品質の高いサスペンスとして成り立っている。
70分程度の尺で映画としては短めだが、内容の密度が高く、中だるみすることなく鑑賞できた。ワンシチュエーション映画ながら画作りが凝っており、観る楽しさにおいても本作は高いレベルにある。
今作の秀逸な点として、双子というサスペンスでは使い古された題材を選び、それでもなお視聴者の予想を超えた展開を用意したことを挙げたい。
殆どの視聴者は双子どちらも疑い続けながら鑑賞するだろう。双子の情報は会話によってのみ開示されるので、蒼、紅の言葉が真実かどうか、一体何が狙いなのか予想しながら物語を追うことになる。そして終盤にはその予想を二転三転させる展開が用意され、怒涛のカタルシスを視聴者に味あわせてくれるのだ。だが、全てを明らかにするわけではなく、何点かの謎を意図的に残しており、秀逸な後味の悪さを与えてくれる。
本作はAAA級の莫大な制作費の映画と比べれば映像作品として劣るところはあるが、サスペンス、ミステリーとしての質はまったくそれらに劣らない。
今作に関わったスタッフ、そして主演の電脳少女シロさんには最大限の感謝を贈りたい。
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