ベイビー・ブローカーのレビュー・感想・評価
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疑似家族と自己肯定
是枝監督は様々な形の家族の姿を描く映画をつくる印象がある。そしてどの作品にも、家族には血縁よりも大事なことがあるというテーマが横たわっている気がする。
本作もそう。教会の赤ちゃんポスト(ベイビーボックス)に捨てられた赤ちゃんを転売するブローカーたちと、赤ちゃんを捨てた母親、そして親に捨てられた男の子が共同生活を営むうちに疑似家族のような関係性になっていく様が描かれる。従来の是枝作品と違うのはロードムービーであるところ。赤ちゃんの養父母を探す旅の中で4人(赤ちゃん入れて5人か)が本当の家族のような関係になっていくのがいい。
全体の通して観ると家族の話ではあるが、本質的には自己肯定の話のように思えた。母親に捨てられた自分、子どもを捨てる自分、妻と子どもから距離を置かれる自分。そうした自分を否定するのではなく、生まれてきて今生きていることが素晴らしいんだと優しく教えてくれる感じ。その象徴的なソヨンとヘジンの言葉でやはり泣かされてしまった。
いや、それどういうこと?って意味がわかりづらいところがあるし、展開がちょっと遅かったりする。完璧とは言えない出来だと思う。でも、十分魅力のある映画だった。
ちなみに韓国映画でよくある食事シーンは少なめ。ここらへんが日本人である是枝裕和監督が作った韓国を舞台にした映画という感じがして興味深い。あくまで韓国映画ではなく是枝映画だった。
日本的な感じて欲しい、悟って欲しい映画
是枝監督が韓国の実力派俳優を使って、何を表現するか、に期待して見に行きました。韓国ドラマの実力派俳優が主要出演者以外にも沢山出られています。韓国ドラマファンにはここで楽しめたかも!?
内容としては、しっとり「静」の映画で、特に中盤までは盛り上がりも少なく、ただぼーっと見ているだけなら眠ってしまうかもという感じでした。
その中でも特筆すべきはイ・ジウンの演技でした。物語の流れに沿って表情や佇まいが変わっていく様子が素晴らしかった。必ずしもストーリーの順の撮影でも無いでしょうが、他者と過ごす中での感情の変化が表現されていました。ただ、我が子がそばにいるのに、関わらない、気に留めない様子が、「情がうつらないように」という理由だけでは納得がいきにくいのが残念でした。
ハリウッドや韓国映画には少ない「感じて欲しい、悟って欲しい」空気感が良いところでもあり、万国受けしないところでもあるのでしょう。
ハートフルなクライムサスペンス
ん?と思うところも雰囲気で─
正解のない優しさ
どちらが善でどちらが悪か
中絶の是非が世間を賑わせてますが、
この映画は出産した子供を手放すことを
選んだ母親が巻き起こしたお話。
子供が欲しくてたまらない人もいれば
産まれた子供を手放す決断をする人もいる。
命の大切さだけを説かれても、
一つの側面からしか見なければ
問題は問題のままになってしまうのかも。
なんて思わせてくれた素敵な作品でした。
行動だけ、結果だけで判断するのではなく、
その過程に何があったのかを知ることで、
善悪だけで判断すべきでないこと
時には誰か何気ない愛が助けになることも
あるのかもしれない。
最大多数の大きな幸福ではないけれど
小さな希望を持てるお話でした。
特に女性は妊娠に関して
色々苦しむときもある思いますが
少しだけ気持ちが楽になれる映画と思いました。
イ・ジウン
人身売買か非合法の善意なのか
赤ちゃんポストで捨てられた赤ん坊を500万ウォンで売ることを副業で行っている主人公は20代前後の若い女性が捨てた赤ん坊を売るために韓国中をクリーニング屋の車で転々と旅していく。思ったより暗くなく、コメディ的な映画で観終わった後、感慨深い気持ちになれました。主人公は決して立派な大人ではないですが、倫理観や赤ちゃんに対する愛情をしっかり持っていてとても人間味のある人物でした。
是枝監督はグレー(狭間)な部分を描くのが本当にうまくて、洗車中に車の窓を開けたり、警官にクリーニングの車で遊園地に行くと嘘をつくシーンなど、ありえないけどありえる場面が随所に出てきて映画好きの期待を裏切らないとてもユーモア溢れる映画でした。
個人的に印象深かったのは、三組目の里親夫婦がウソンくんに授乳するシーンでした。それを見ていた生みの親スジンが自分の胸を掴む瞬間、「女性が子供を産むと母乳が出る」という一般常識すら知らないスジンは、おそらく母性が芽生えていなくて義務感でウソンくんの面倒を見ていたんだと感じました。
家族の定義とは何か
犯罪だけど、性根は腐ってない
疑似家族系&ロードムービー系映画。 本年度ベスト。
上映時間が少し長め。
多少のストレスはあったけど見応えがあった印象。
なぜ韓国で本作を作ったのか疑問。
調べたら韓国の赤ちゃんポストが多く問題になっていると言う事で納得。
二人のベイビーブローカー。
子供を売りたい母。
売られる赤ちゃん。
何故か施設のチビッ子。
このメンバーのロードムービー。
これに加え、いつも車内でご飯食べてる二人の女性刑事が登場。
食べ物があまり美味しそうで無かったのが残念(笑)
子供を売りたい母。
ソヨンの気持ちが切ない。
最初は心を開かない笑顔の無い表情。
徐々に笑顔になっ行くソヨンが良い。
ブローカーのドンス。子供を売るブローカーだけど全然悪い人には見えない。
子供達に人気がある心の優しい感じが印象的。
クリーニング屋のサンヒョン。
借金の為に赤ちゃんポストの子供を売るけど、彼にも事情があっての行動。
子供との食事のシーンが泣ける。
子供を売りたいソヨンの過去が衝撃的過ぎた。
ラストも疑似家族を連想させる、あるアイテムが良かった。
鑑賞中、何故日本の役者を使わないかと思って観てたので、
サンヒョンを佐藤二朗さん。
ソヨンを松岡茉優さん。
ドンスを坂口健太郎さん。
女性刑事の部下をあいみょんさん。
と勝手に置き換えて鑑賞してました( ´∀`)
俳優の演技は満点もストーリーにはがっかり
今年楽しみにしていた是枝監督の最新作だが、俳優の演技は満点もストーリーには尻切れトンボ感があった。俳優の演技は満点。特にIUことイ・ジウンの演技はソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ペドウナ相手に堂々とこなした点は見事。しかし、ストーリーは減点。どこか淡白で尻切れトンボ感がいなめない。赤ちゃんポストをテーマにしている本作の内容だが、赤ちゃんポストだけではなく日本で問題となっている幼児虐待の報道も頭に入れて本作は観たほうがいいだろう。題名もマイナス。もう少し工夫があっても。韓流エンタメの人気者の演技がうまくてもストーリー次第で台無しになる事を思い知らされた。残念ながら合格点はあげられない。
ほっこりロードムービー
言いたい、言われたい一言
肝心なところがひっかかる
是枝裕和監督が手がけた韓国映画
いわゆる赤ちゃんポストに預けられた乳児を巡る物語、韓国では Baby Boxと称されて毎年それなりの数の保護実績があるらしい
ほとんどのケースで実質的には捨てられてる訳だけど、赤ちゃんが往々にして「必ず迎えに来るから」とかのいい加減なメッセージを握らされてるから俄然いろいろややこしくなるそうで
子供が欲しい気持ち、養子縁組への需要がそうこうして社会的に満たされないとき、反社会的な人身売買の仕組が補完的に供給を担う
そんな "ブローカー" があのソン•ガンホ、他の俳優さんもみなさんさすがの出来、でも一番素晴らしかったのは、乳児役の乳児
非常に興味深い
が、大元がどうしてもひっかかったなー、本当にこの裏の仕組をそうと知られないように使うなら、出生証明とか住民登録とか相応に緻密な仕込みがいるはずで、そしてそうであるがゆえに、こんな雑な業者には頼らんだろう
是枝監督が選んだ次のフィールド、文化を汲んだドラマが魅力的
『万引き家族』以来の是枝監督作品。すっかり海外をフィールドに移したイメージだったけど、家族の愛は万国共通。むしろ、描きたいモノをこだわるために海外に行っているんだろうな…と思った。
家族とは何か…。赤ちゃんの取引を介した重いストーリーだと思っていたが、重くならないような工夫が散りばめられており、観やすさが光る。個々のキャラクターに感情の比重を乗せすぎず、関係性の変化によって感情がグラデーションしていく。同時に、ロードムービーとしての高揚感も持ち合わせており、半島を横断する様はどこか微笑ましい。
韓国には「赤ちゃんポスト」があることにまず驚いた。それによって助かる命も多いと思う。日本で捨てられた赤ちゃんのニュースを触れることが多いだけになおさら。その中で、「生まれてくれて、ありがとう」と言える日は来るのか。個々の立場を感じつつ、グルグルとその正義が頭を巡る。誰も願う幸せはそうズレてないはずだから。
いい意味で裏切られた…。韓国の事情を上手く取り込みながら、魅せてくれたのも凄く勉強になったし発見も多かった。是枝作品の過去作、今一度見返してみようかな。
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