ベイビー・ブローカーのレビュー・感想・評価
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悲しく温かい物語。ソンガンホは何をやっても上手い
捨てられた赤ん坊、捨てた母親、ベイビーブローカーと刑事。悲しく温かい物語。家族を愛おしく思い、人生を肯定する希望に包まれる。韓国お得意のクライム・バイオレンス風味の映画かと思ったら全然違った。
赤ん坊を育てたことのある人は、あの小さく温かく柔らかい存在を思い返し泣きそうになってしまうこと請け合い。ソン・ガンホは何をやっても上手い。刑事役のペ・ドゥナも良い。
全編を通して独特な静謐さが漂う。外国人俳優を動かし、撮影したカットを編集してこの雰囲気を漂わせるのは神業級の仕事ではないか。
期待を大きく上回る出来。久しぶりに良い映画に出会った。
ソン・ガンホ対ぺ・ドュナ
「壊れて傷んでも、その中にはしばしば美しい瞬間がある。それをすくい上げたかった」
是枝監督が『万引き家族』で言っていたこと。本作も同じ匂いがする。
美しい瞬間を紡ぎだすもの。
ソン・ガンホの不器用な優しさ。
彼の相棒が、産みの母親に言う「父親になってもいいよ」というひとこと。
一人一人に、「生まれてくれてありがとう」と伝える、疑似家族の男の子。
おむつ替えやボタン付けをするソン・ガンホの、照れ隠しの表情。
観る側は、暗黙の了解の役割分担に動揺を隠せなくなる。
当事者視線では善、第三者視線では悪。ふたつの世界が静かに生息する。
村上春樹は、「ユーモアと優しさをもってしか語れない絶望と暗転がある」と言っている。
是枝監督は、ベイビーブローカー側の疑似家族を通して、そこを見事に表現している。
対ソン・ガンホは、美しい瞬間は幻想にすぎない、と言いたげに彼らを追う女刑事役のぺ・ドュナ。
彼女の鋭利な刃のような現実感が、幻想との間で切なくも揺れ動く。
赤ちゃんポストに入れられた新生児を売り渡す人身売買グループ。 もち...
神演技
是枝監督の優しい目線
遅ればせながら鑑賞 心温まる作品でした
福引き家族
“家族”である。是枝裕和の興味は最近これにつきるようだ。パルムドールに輝いた『万引き家族』に引き続き両親に捨てられた元子供たち&現子供たちが疑似家族を形成する物語から、是枝は一体何を描こうとしたのだろう。相模原市の施設で起きた障害者大量殺傷事件(2016年)に大層心を傷めた是枝は、この世界で“生まれてくる価値のない人間なんて果たしているのだろうか”という人類の根源的な問題にとりつかれているのである。
『万引き家族』の主人公役安藤サクラが警察の取り調べに対し「捨てたんじゃない拾ったんだよ」と答える印象的なシーンを覚えていらっしゃるだろうか。バアちゃん(樹木希林)の死体遺棄罪の是非を世に問うた場面である。暴力団組長の父親を殺害し逃亡するため邪魔になった赤ちゃんをポストに捨てた愛人の元売春婦ソヨン(イ・ジウン)。赤ちゃんの有償養子縁組先をサン・ヒョン(ソン・ガンホ)と一緒に探し回る元捨て子のドンス(カン・ドウォン)が似たようなことを口走る場面に注目したい。
なかなか縁組先が決まらずイラつくソヨンに対し、ドンスがこう言って慰めるのである。「捨てたんじゃない。(死んだパトロンが属していた暴力団から)守ろうとしたんじゃないのか」と。邪魔になったからといって我が子を捨てる母親なんているわけがない、そこにはソヨンのようにのっぴきならない事情がきっとあったにちがいない。是枝裕和はやはり、あくまでも人間の性善説を信じる日本人らしい映画監督なのである。
現行犯逮捕を目論むペ・ドゥナふんする女刑事の追跡を受けながら-、サン・ヒョン、ドンス、ソヨン、赤ちゃん、そしてドンスが働いている孤児院から脱走してきた子供まで加わって、サン・ヒョンの運転するオンボロワンボックスの中は、さながら疑似親子のように和気藹々とした雰囲気に満たされていく。その関係性は、血のつながつてない家族を描いた前々作と全く同じといってもよいだろう。後部ドアが壊れて開いたり閉まったりするこのワンボックス、母親の胎内(子宮)をイメージしていたのではないだろうか。
ようやく有望な売り先が見つかりホット一安心のメンバー一人一人に、(暗闇の中で)「生まれてきてくれてありがとう」と声をかけていくソヨンは、ワンボックスの子宮から生まれた赤ちゃんに語りかける聖母さながら。その警察と内緒で司法取引したソヨンのせいで、赤ちゃんの養子縁組は結局失敗に終わる。しかし、是枝はラストを『万引き家族』とは真逆のハッピーエンドに無理やりにでもねじ曲げるのである。『パラサイト』同様雲隠れしていたサン・ヒョンのみならず、疑似家族はさらに人数を増やし、売られようとした赤ちゃんの成長をあくまでも見届けようとするのである。
「生まれてきてくれてありがとう」
是枝裕和。韓国映画を撮る。
2019年『真実』を外人キャストでしかも全編フランス語で、
日仏合作で撮り終えた是枝裕和監督。
『真実』独特の明るさと自由に溢れていた。
『ベイビー・ブローカー』は韓国人キャストで、韓国オールロケの純粋の
韓国映画です。
是枝裕和監督は映画に、国境も言葉の壁も全く関係ないことを証明した。
母国のように溶け込み自由自在に撮影する彼は真の国際人だ。
是枝監督の優しさや映画への情熱が言葉の壁を超えて伝わるのだろう。
「映画」は「音楽」や「美術」「写真」と同様に万国共通芸術かも知れない。
最高の韓国人キャストが集結して、
『ベイビー・ブローカー』に映る韓国は最高に美しい国だ。
撮影したホン・ギョンピョさんの映す韓国は、上下左右に幅広くて(つまり広角・・)
切り取るカットも実に垢抜けている。
ボロのワンボックスカーが走る海辺の一般道も、山間地帯も異常に美しい。
主人公たちは後半でソウル行きの列車に乗り換える。
高速列車がトンネルに吸い込まれる。
画面はトンネルの上の山並みをヘリコプターから付近一帯の美しい山の連なりを写す。
なんと肥沃な美しい山、森、木々だろう。
都会もクリーニング店も路地も皆、ストーリーを持ち話しかける。
(かつて無いほど韓国が魅力的に撮影されている)
何故だろう?
是枝裕和が分け隔てない心で韓国を韓国人を敬い、愛し、
見たそのまの韓国を映画に落とし込む。
俳優たちは力みも虚栄も捨ててありのままの自分で、
自由奔放に演じている。
(その環境を作る事が如何に大事かを知る映画でもあった)
そして『ベイビー・ブローカー』は最高に面白い。
ロードムービーで、赤ちゃんを斡旋する犯人側には
「ベイビー・ボックス」に乳児を捨てた母親も合流している。
そして彼らを尾行してるのは「ベビー斡旋の現行犯」で逮捕を目論む
警察の女性刑事2人。
見て行くうちに、ブローカーのソン・ガンホと共犯のカン・ドンウォンが
犯罪者なのか?、そうでないのか?
観客の私には、分からなくなって行く。
彼らは正しい行為を行なっているのではないか?
赤ちゃんにとって一番良い《生きる環境の選択》を探して
いるのではないのか?
そう思えてくる。
捨てた母親は劣悪な環境に育ち、しかも大変な罪を犯している。
見てると、まず最初に赤ん坊を保護したらどうなのか?
そう思うし、
殺人犯はまず身柄の拘束だろう!
そう思う。
女性刑事は頑なに「ベビー斡旋の現行犯逮捕」に拘る。
ロードムービーは観光旅行を兼ねて「観覧車」に乗ったり、
射的をしたり、ソン・ガンホは離婚して離れ離れになってる娘に
面会したりもする。
そして何組も顔合わせする《養子縁組》はことごとく母親が
《難癖》が付けて、ぶち壊したりが面白いし可笑しい。
捨てられた赤ん坊にとって、一番良い選択とは何なのだろう?
その回答を探して、
ブローカーも警察もそして観客も右往左往して、
そして真剣に考えることになる。
そういう映画。
この子にとって、一番の幸せとは何か?
それを探し続ける映画。
安易に答えは示さない。
けれど観客は、
ウソンちゃん(赤ん坊)が、たくさんの
『生まれてきてくれて、ありがとう』
を浴びて大きくなることだろうと、
確信する。
昨日鑑賞、2本立て1本目。是枝監督の韓国作品。 大いに期待したが、...
期待してた故に、もう少し強く残る何かが欲しい
需要と供給は対をなすが、法は需要と供給のいずれにも対をなす
温かい日常と旅
韓国名俳優たちと日本の名監督のコラボは遥か高みに到達。
救いのない世界で心が救われるようなお話し。
赤ちゃんポストは日本にもある。あれがなければ救える命も救われない。やむにやまれず一人で出産の負担を背負わされるのは常に女性だ。若い女性が一人でどうすることもできず駅のトイレで出産しそのまま遺棄、その罪を背負うのも女性だ。男性側が罪を負うことなどないこの理不尽な世界
。出産する女性に全ての負担を押し付けてる社会、少子化に歯止めがかからないのもうなづける。
イーロンマスク氏が言う通り、ろくな少子化対策も打てない国は衰退の一途をたどるばかりである。
本作で赤ん坊を赤ちゃんポストに委ねるソヨンもやはり複雑な事情を抱えていた。そんな赤ちゃんポストを利用して金儲けを企むサンヒョンとドンスだが、どうにも憎めない存在。なにしろ違法な行為ではあっても逆に法整備が整ってない点にも問題があるし、また彼らのブローカーとしての行為もけして非人道的ではなく赤ちゃんのことも考えての養子縁組仲介業ともとれる。
そんな三人が最良の赤ちゃん引き取り手を探すヘンテコロードムービー、ついでに彼らを検挙しようとする女刑事コンビも引き連れて。
さすが是枝監督作品。登場人物一人一人の描きこみに手抜きがなく、一見ライトな人間ドラマと思わせておいて実はかなりの重厚さも兼ね備えていて、観るものをぐいぐい引っ張って離さない。
そして是枝監督の見事な演出にこたえた韓国役者陣、主役級のメンバーをこれだけ贅沢に揃えて見事な作品に作り上げた。
本年度ベスト5に入る傑作。
いい映画なんでしようね。多分。
家族とは何か?
「そして父になる」「万引き家族」と家族とは何か、血縁とは何かを新しい表現方法で映像化した作品「ベイビー・ブローカー」遅くなったが鑑賞させていただきました。
生んだばかりの子供をベイビーボックスへ預ける若い母親、でも当然当事者には手放さなければいけない理由がある。
子供を大変な思いで産む、その子供を理由もなく手放すわけがない。
ブローカーと聞くと悪でしかないが、ここにも理由がある。
やはり、是枝監督は映像の魔術師、映画が進みにつれスクリーンへ引きずり込まれる。
世界各国から監督のオファーがやまないであろう。
アメリカ映画のような解り易さはない無い、複雑怪奇な人間模様。
でも、そうなんだよね、だから面白いんだよね。
切口も良い、表現方法も良い、俳優陣の質が高く本当に上質な映画をありがとう!
どの乗り物にも留まれない、けど
是枝監督のティーチイン付き上映で見ました!
最後の展開が読み取れなかったのですが、質問してくれた方ありがとうございます!(感じたままで良いと思いつつも)
乗り物(ゆりかごも含む)の中でのシーンが特に良いと感じて心に残っています。
どの乗り物にも留まれないことが切なく尊い。
家族も、人が生まれて育ちゆくこともかなあ。
ロードムービーの中でそんなことを思っていたら、
最後のあの乗り物が出てくるシーンはそういう事だったのか、
とティーチインで知ることができ、
より深い鑑賞となりました。
是枝監督が「言い過ぎな感じがしたから最後のシーンは切った(入れなかった?)」とおっしゃっていたような。
ティーチインの場を尊重してネタバレは無しにします。
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