ベイビー・ブローカーのレビュー・感想・評価
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殺人に対する葛藤の薄さ
『三度目の殺人』が、映画の中で一番好きなので、期待して観に行きました。
是枝監督らしく、感じ方は視聴者に委ねるスタイル。
どんなメッセージを受け取るか、何を感じるかを押し付けない代わり、画面の中に、音に、セリフに、ギュギュッとメッセージが凝縮されています。
この映画のメインテーマは「すべての命への祝福」なのだろうと思います。
そして、命への責任を負わされて、全うし切れなかった人間への赦し、でしょう。
祝福だけでも赦しだけでも足りない。
祝福された命を、やむを得ない事情で一人では背負いきれなかった人間を赦す、この矛盾した二つがこの映画全般を通して語られていたように思います。
しかしただ、これは韓国映画だけでなくハリウッド映画にも感じるのですが、相手が「悪人」であれば、あまりにも簡単に殺しすぎないか。
この映画で殺されるのはヤクザ世界の人々なのですが……殺人者にあまりにも葛藤がなさすぎて、感情移入しきることができません。
いくら大切な人を守るためとはいえ、一気に殺人に短絡してしまうのは、ルサンチマンや恨のなせるわざなのでしょうか?????
それにしても。
その点でやはり、この映画は「韓国映画」なのであって、「是枝監督の映画」として評価してはいけないのかもしれません。
赤ちゃん万引きそして父になる
是枝監督は奇妙な家族愛を作り上げるのが好きだ。血の繋がりには特にこだわる。今回の作品は、赤ちゃんポストに捨てられた子を闇で売りさばくブローカー、捨てる母親、産めない女性、養子が欲しい夫婦のそれぞれの事情がしっかりとらえられて進行していく。韓国の現在のお国柄をよく表現している。冒頭の土砂降りの階段のシーンは、奥手に高層マンションがそびえたっていて手前が貧困街と貧富の差が激しいことがうかがえる。「パラサイト半地下の家族」を思い出させる。とても悪人には見えないブローカーの2人と、捨てた赤ちゃんを取りにきた母親との奇妙なドライブが始まる。旅をするうちにそれぞれの境遇が化学反応を起こしたような、不思議な情が生まれていく。何の為に生まれてきたのか。家族とは。血の繋がりとは。幸せとは。様々な感情が問いかける良い作品でした。
“家族とは"是枝テーマの追求
ペ・ドゥナ演じるスジンの〇〇シーン
19年公開のフランス映画『真実』でもそうでしたが、今作も主に現地韓国のスタッフで制作されているため、少なくとも日本人から観たらきっちり「韓国映画」に仕上がっているように感じます。
特にその要因は『パラサイト 半地下の家族(20)』『哭声 コクソン(17)』『バーニング 劇場版(19)』『流浪の月(22)』など多くの作品で撮影を務めるホン・ギョンピョの影響も大きいのかと思います。
また、韓国映画でついついそそられてしまう「飲食シーン」。
今回は特に張り込みをしながらのスジン刑事(ペ・ドゥナ)の食事が堪りません。韓国おでん「オムク」に始まり、ミニトマト、やや硬めに仕上がったカップラーメン、そしてグミ。スジンにとっては腹を満たすためだけの残念な「ガッカリ飯」なのでしょうけど、なぜかそれを観せられた日本人(いつの間にか私、日本代表として話してますがw)はついつい韓国料理が食べたくなるのです。
さて、内容の方はサスペンス要素が物語の「肝」となっていく展開のため「観てのお楽しみ」とさせていただきますが、成り行き上「家族」のように振る舞う5名のロードムービーは、時折のスリルと、お互いを思いやる温かさで、割と「王道」な展開でもって普遍的なテーマ「子供の将来と幸せ」を色々な立場から感じ、考えさせる、是枝さん十八番の「家族物語」に仕上がっています。
俳優陣が最高だが脚本と演出がチープ
この是枝監督は今一つ突き抜けない人だと思う。俳優陣に助けられて、作品がグッと良くなる他力なところが強い。韓国を代表するこれだけの役者が揃えば、難色を示すことなど先ずないだろうと敬服するに値するキャストにスタッフたちも優秀な人たちを集めた割には、そのチームの実力80〜90%くらいしか出せていない。100%、120%ではないのだ。何かに対しての遠慮のようなものがあるのか、監督の性格なのかもしれないが毎回ほんの少しの力量不足を感じさせられるのだ。そこそこ国際的な賞をもらってな終わりなのか、それとも飛躍的に化けるのか?次回作に期待したい。私はこの監督は嫌いではない。むしろ、好ましく思っているだけに化けてもらいたい。しかし、ソン・ガンホ、ぺ・ドゥナの演技は素晴らしい。日本にはもはやいない優れた俳優だ。
女には共感難しい
社会問題を真正面から
赤ちゃんポスト、育児放棄といった社会問題を描いた本作は、産む側それぞれの事情はあれど、育児放棄や望まれない出産は哀しみの連鎖につながり、痛みを伴うというメッセージ性が込められていました。シビアで重いテーマではありますが、一歩で血の繋がりではない家族の絆や形には温もりや希望を感じ、救いのある作品になっていたと感じます。
物語全体としては比較的シンプルな構成でありながら、たっぷり間を取り余白を残して進むため、やや退屈に感じてしまった部分も。エンタメ性が薄く、終始重苦しい空気感だったのも気になりました。
チャレンジングな姿勢やテーマの興味深さはあれど、もう少し娯楽作品としても楽しめると良かったのにな…。
いい映画だが、是枝作品としては物足りない
是枝監督のファンには申し訳ないが、自分が期待していたほどの作品にはなっていなかった。
やはり、韓国の問題や民族性などが、自らの血になるぐらいの関わりがないなら、外国人である是枝監督が、この作品を作るのは控えた方がよかったように思う。
結局、作品としては社会問題を追求し、その背景やそこで生きる人たちの気持ちや優しさ、どうしようもない嫌な面などを描き切れなかったのではないか?それは、監督が日本人であるため、韓国と妥協せず向き合い迫ることができなかったからではなかったか?
また、この作品は何がテーマなのかはっきりしない。ベイビーブローカー、子どもの養子縁組み、海外への臓器提供などの問題、子どもを捨てる社会的背景、韓国の家族や人間関係の温かさや特徴、個々人が大切にされない社会等々。これらは、監督自身の韓国作品への迷いや追求のにぶさが出ているからではないか?
だから、映画の流れが平板で単調に成りがちで、映画に引き込まれるような迫力やリズムが感じられない。つまりそれは、日本人監督の作品であるが故に、韓国作品に真実みを実感できないことから来ているように思う。
決して悪い作品ではないが、是枝作品としては物足りない。
不覚にも泣かされた
万引き家族、風な…
心が揺り動かされた。
まさに是枝監督のテイスト満載
家族とは何だろう
オープニングの画面上に大雨と急坂、そして階段の暗い映像が出て、パラサイトを彷彿とさせるようなイメージが、しかし始まってみればそんなイメージは一新でした。
赤ちゃんポストに預けた子供の売買事件に関する謎解きかと思いきや、登場人物たちそれぞれの人生模様から家族の在り方を読み解くドラマなのだと理解してからは、色々と推察を思い巡らせたのですが、スポットが当たっている人物が多く、しかもその背景がぼんやりとしていて、誰にも感情移入できないまま終わってしまいました。
翌日に三姉妹を鑑賞したのですが、今作品を含め日本と韓国の家族像の違いからか、どちらもそれほど共感を得られませんでした。
是枝監督作品は万引き家族や海街ダイアリーでホロリとさせられたので、やはりお国柄なのでしょうか。
それでも家族(血縁だけではない結びつきも含めて)の在り方、育ってきた環境、何が子供にとっての幸せなのだろうか、などなど考えさせてくれる良い作品ではありました。
是枝監督らしい作品
丹念な取材が物語を重厚にする
本作を観て、さらに作品パンフレットを読んで、人口が日本の約半分という韓国で、日本より一桁多い赤ちゃんポストの利用があると知った。
今年初め、米国に里子に行った韓国人青年の苦悩を描いた米国映画『ブルー・バイユー』も観たが、一方で移民問題もあり、根が複雑に見える。
さて、『ベイビー・ブローカー』である。
主要人物が、その俳優の起用を想定した「当て書き」をされていたということもあり、驚くほど俳優の個性と役柄がマッチしていた。
映画の冒頭で反感を持った役柄もいたが、物語が進むにつれて共感へと変わってきたから不思議だ。
日本では、最初に「赤ちゃんポスト」を始めた熊本の慈恵病院以外では、北海道の一例しかないようだが、それで足りているはずがない。
これらの施設には、行政からの補助もないらしいが、赤ちゃんが育つ環境の充実は本来国の責務のはず。政府の少子化対策も掛け声ばかりで何ら実効性がない。
「赤ちゃんポスト」のような施設が広がらない一方で、日本では相変わらず、乳幼児の死体遺棄や虐待の問題が報じられている。
『ベイビー・ブローカー』自体は是枝監督オリジナルの創作だが、この作品をきっかけに赤ちゃんの育つ環境について全国的な議論が起きることを期待したい。
家族とは?生きるとは?
少し期待しすぎた感はあったけど、普通に面白かった
旅を通して悪意は善意に変わり、憎しみは愛に変わる
裏で赤ちゃんの横流しを行うブローカーのサンヒョンとドンス。
いつも通り赤ちゃんポストに預けられた子どもを高く売ろうとしていたところにその子の母親が戻ってくる。
ひょんなことから始まった偽家族による養父母探しの旅。
彼らを現行犯で逮捕したい刑事のスジンは後輩のイ刑事と共に彼らを追うが…
韓国映画だから所謂韓国映画を期待してしまうが、あくまでも韓国が舞台の是枝映画だった。
要所要所に韓国映画を意識してるような点が見られるが、監督自身もそんなに韓国映画を意識しすぎず普通に撮れば良いとも思う。
でもやっぱり是枝映画。外さない。
歪な家族が旅を通してお互いを知り、絆を深め合っていく愛の物語。
これといった急展開もなく、赤ちゃんを高く売るための逃避行と言ってしまえばそれだけのことだが、確実に映画の中で愛が育まれていく様子に感動した。
メインはサンヒョンやドンスだが、悪と捉えてもおかしくないソヨンや本来そこまで目立つはずのないヘジンに花を持たせているところに好感を持った。
息子に授乳する養母を後ろから見つめるシーン、洗車のシーン、ステーキのシーン、射的のシーン、観覧車のシーン。
好きな場面は語り尽くせない。
どのシーンを切り取っても絵になる非常に満足度の高い作品だった。
唯一気に入らなかったのが物語の落とし所について。
正直あの登場人物にはもっと第三者でいて欲しかったので、あの展開はあまりに予想外だったしあまり満足がいかない。
寧ろ最後の数分の「その後の物語」は描かず、一つの旅の終わりまでで切った方が綺麗な終わり方だったと思った。
でも、2回目を観にいきたいくらい好きなことに変わりはない。
取り敢えず今夜はIUの曲を聴くことにしよう。
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