ベイビー・ブローカーのレビュー・感想・評価
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子供の幸せとは
雨の夜のソウルの教会。若い母親がベイビーボックスの前に赤ん坊を置き去りにした。この教会が人身売買に絡んでいると疑う女刑事二人は、母親と赤ん坊を追うが・・・
冷たいと思われた母親は実はわが子の事を案じていて、周りも次第に利己的な考えを捨てていきます。
サンヒョンとドンスには父親のような気持ちが芽生えます。
ソヨンにとってわが子は自分自身でもあるので、否定されたことが悲しく、苦しかったのでしょう。
スジン刑事は多くを語らないけれど、もしかしたら子供が欲しいのに恵まれず、その原因は夫にあったのかもしれません。子を捨てる親に憤りを感じていたのに、子供のことより犯人検挙を優先していたのでした。
皆で子供の将来を守ろうとする社会、実現したいです。
ちょっと気になったところ。
大事なわが子を雨の夜にベイビーボックスに入れずに地面に置き去りにした理由が全くわかりません。雰囲気としては良かったですが。あと、ベイビーボックスの扉が前に倒れるのは使い勝手が悪いです。赤ちゃんを入れる籠も果物カゴみたいなので何か敷かないと危ないです。
子供を買う側(本気で親になろうとしていて、しかも未遂)が執行猶予期間中なのに、売る側が刑期を終えているのは、変な感じでした。
でも、観て良かったです。
「生まれてきてくれてありがとう」
子供がかわいい!ウソン(羽星)もヘジン(海進)もしあわせになってほしい。サンヒョンとドンスが赤ちゃんの扱いが手慣れていた。あんな風にひょいひょい手伝ってくれる人がいたら子育てもずいぶんやりやすそう。 ボタンを付けてくれる人がいるのはいいな。全部自分でやらなくてもいいってなんて温かいんだろう。もっとみんなお互い頼り合ったらいいなと思った。 殺人や刑事との関わり方がちょっと分かりにくくて、もっとすっきりさせられたような。ヤクザとか本妻とか余計な感じがした。 ペドゥナがすっかり中年になっていた
まさに韓国版万引き家族ですね
テーマは家族愛と犯罪なので、まさに万引き家族ですね。ストーリーは全く違いますが、テーマは同じです。 是枝監督が韓国俳優と制作陣で作った映画ですね。 是枝監督も好きですが、韓国映画も韓国ドラマも好きなので、どうなるのか楽しみでした。 あのドラマのあの人など沢山出てきます。 韓国映画もドラマもとても派手な味付けです。「ここで泣いて」「ここで感動する」と、とてもわかりやすいです。日本では考えられない演出をしますが、それはそれで楽しいです。 この映画は韓国映画をイメージして観ると、とても薄味なことになります。韓国映画やハリウッド映画と比べて、だから日本の映画はダメなんだと言われそうですね。 薄味の出汁の日本映画です。 私は前半は眠気と戦うことに。 その分、後半は感動しましたが。 とにかく暗いシーンが多い。暗いとは物理的に明かりが無いという意味です。車の中のシーン、画面が真っ黒になって、誰が喋っているか分からないシーンが多かった。スクリーンなら分かるけど、スマホやテレビ画面では分からないかも。 韓国映画だったら間違いなく、下から照明当てますね。韓国映画視点なら分かりにくいのは悪だからです。日本映画では照明はありえないと思います。リアリティが無くなり、それってなんの光?スマホでも開いてるの?と気になってしまいます。 この暗いシーンと、昼間のビーチのシーンなどにギャップが必要なのだろうと思いました。 映画は監督のもの。 ひとつひとつがとても薄味したが、なんとも奥が深い。 やっぱり監督が日本人なら日本映画になるのだとと納得です。 韓国社会も反映されているのだと思います。 男の子は100万円で、女の子は80万円とか、そもそも買ってきた子供を実の子供や養子縁組できるのには驚きです。日本なら不可能ですよね。 犬や猫じゃないだから、その人が育てられるの?とか、子供拾ってきて売春させるとかあり?「日本のトー横逮捕」が可愛らしいわ。とか、余計なこと考えてしまいました。 韓国なら有り得るのか?日本が舞台ならコメディになっちゃうね。 こういう点は、「韓国なら有り得るのか、、」で片付けられる。 リアリティのある演出だけど、日本人にはそんなことある?とリアリティが無いというジレンマがあります。 ただ、是枝監督ファンは納得の後半だと思いますが、普通に見ると味のしない前半とも言えますね。ファンしか観ない映画なら良いですが、万人受けという意味では、もう少し前半にも味が欲しいところです。 是枝監督が監督と思えば納得ですが、もし違う監督なら評価が変わってしまうかも。 最後は、そうなるのか、、、と切なかった。
韓国映画なのが惜しい
乳幼児の死体遺棄や児童虐待がテレビや紙面で報道されるたび、なんで母親ばかりが罪に問われて母親を捨てた子供の父親は一切罪に問われないんだろうと思っていたのですが、是枝監督もそう思っているんだろうなという内容でした。 劇中に登場したベイビーボックスは韓国に実在する施設だそうで、もしかしたら韓国にもこのような問題があるのかもしれませんが、あまりにも身に覚えがある内容なので、なんで韓国映画として撮ったのだろうと疑問に思いました。私自身IUさんが好きだから見に行ったし(そもそも映画館が苦手なので出てなかったら見に行かなかった)、演技が演技と思えないあまりのリアルさで一瞬の寒さもなく集中して見れたので、韓国映画としてあることに不満があるわけではありません。疑問に思ったので是枝監督のインタビュー記事も読んで、韓国映画として撮影した理由も理解できましたが、私が見に行った劇場は、賑わいのあるショッピングモールの中の、田舎だけど映画によっては席が埋まっていてチケットが取れないこともあるような映画館なのに、公開三日目でしたが上映回数はたった3回、席数が少なめの奥の方にあるスクリーンで、コロナの席数制限とは関係がないことがはっきりわかるような空席具合でした。日本には韓国というだけですべてを嫌う人も多いし、韓国映画をスクリーンで上映することがポピュラーじゃないのだと思います。実際、某洋画は数週間前に公開したと思いますがまだまだ上映回数5回以上(字幕版吹替版合わせればもっと)、一番大きなスクリーンで上映中です。 だからこそ、是枝監督の日本映画として、日本の俳優が演じて(カンヌ出品作として)この映画があったなら、もっとテレビで取り上げられて、もっと大きなスクリーンで、もっと色んな人がこの映画を見に劇場に足を運んで、もっとこの社会問題が浸透したんじゃないかと惜しい気持ちもあります。 映画には大満足です。
子どもの幸せを願わずにはいられない
子どもは親を選べない 自分が生まれてきた背景、生まれてからの実親の葛藤、「ものごころがつく」までの育てられ方、 子どもは自分の知らないところで多くの人に喜ばれ、ときには疎まれ、憎しみをもたれ、それでも多くの人のかかわりの中で成長して「ものごころがつき」、自分の生まれてきた環境、親や親族の姿を知って、自分ではどうしようもない「枷」(かせ)の中で生きていく 日本でも「夕陽のあと」という実親と育ての親の2人の母親が、子どもを取り合う話の映画が3年前にあった 我が国の特別養子縁組という制度は、普通の養子縁組ではなく、実親との関係を完全になくし、養親である育ての親が唯一の親であるとするものであり、それが「子どもの福祉」に資するものと制度が作られた時の趣旨であった 韓国における考え方は違うのかもしれないが、産みの母親の気持ちには大きな違いはないだろうし、母親を支える方法があるならば異なる決心をするものかもしれない 我が国でも赤ちゃんポストをめぐって様々な議論があった 一方で「子どもの福祉」を阻むものは犯罪として、本作ぺ・ドゥナ演じる警察、日本でも児童相談所が「張り込み」を重ねる中で証拠を固めて「立件」して、「子どもの福祉」を守ろうとしている 長い時間を共有することによって、お互いの思いが通じ、「かべ」が崩れていく本編の過程は、子どもは守られるべき存在であり、その子どもの存在によっておとなも変えられていく「可能性」を感じるものでした モーテルの一夜、遊園地でのひととき、普段は煩わしいと思っている存在であっても、そこに誰かがいることで、苦しい・悲しいと思っていたことが共有されていく 苦しい生活であればこそ、そういったつながりが育まれていく「可能性」があるのでしょう あくまでも「可能性」の話であって、現実には貧困を脱する手段としての「売買」はなくなりませんが、そんな希望を持つ作品でした 私としては数年前虐待を受けている少女を救うために立ち向かう「左遷されたエリ-ト警察官」を演じた7年前の「私の少女」でのぺ・ドゥナ目当てで観にいきました (同じ警察官でありながら「匿って逃げる警官」、今作は「追い詰める警官」でありました) 彼女も久々の是枝監督との仕事でしたが、変わらず名演でありました(6月26日 イオンシネマりんくう泉南にて鑑賞)
既視感・消せない罪
まず冒頭、雨の降る寒い日に赤ちゃんを赤ちゃんポストの外に置き去りにする。刑事さんが張り込んでいなかったら確実に命を落としていただろう行為に拒否感が爆発してしまった。
その後、40人に1人の本当に迎えに来るつもりの人だったとしても、不幸な過去により教育を受けることができていなかったとしても、オムツを甲斐甲斐しく交換しても、擬似家族と共に楽しい時間を過ごしても、この2人目の殺人未遂行為により全て薄っぺらく感じてしまった。
そして、その行為の償いがたかが数年で終わってしまう。韓国の法律は全く分からないが何て軽い罪なのだろうか。
歪な関係の擬似家族のまやかしのような楽しい時間が崩れていってしまうというのは、どうしても「万引き家族」や「パラサイト半地下の家族」をチラつかせ、またこういうお話かと思ってしまった。
何回も観返せば新たな発見もあり、また別の感想を抱くのかもしれないが、何度も観る程の情熱が生まれる作品ではなかった。
血の繋がりと、そうでない繋がりと。
韓国で赤ちゃんポストに預けられる子の数は日本の比ではないそう。そして養子縁組はかなり難しくブローカーが存在すると知り今回韓国で撮影されたことに説得力が。ソンガンホはじめ皆さん実在?と思うほどの上手さだし、是枝さんの力でもある。またキムソニョンさん出てた!売れっ子だなあ。
しかし万引きが犯罪であったように、今回やってることは「人さらい」なので、これはやはり認められないことだと思うよ…母親が後悔して取り戻しに来ても、誘拐されてしまっていたらもう会えない。登場人物みな家庭や生い立ちに問題を抱え、それを細やかに描かれていて良いのだけど、頷き切れない自分もいる。ましてや万引きとは違って、犯罪対象が人間だからね。しかしそこも含めて韓国の出産・育児放棄・養子縁組問題の闇であると捉えることもできるね。
万国共通で言えるのは、「あのさー、これは『女の問題』じゃあないんだけどな?父親どこ行った?」だよね。
いちばん心に響いて泣けたのはソンガンホの「ひとりでぜんぶやる必要はない」だった。追い詰められた母親が必要としてるのはその言葉だ。
そもそもの赤ん坊を買う理由に納得いかない
2022年劇場鑑賞149本目。 赤ちゃんポストに入れられた赤ん坊をこっそり回収して、売る男たちと捨てた母親のロードムービー。買う方の理由が語られるのですが養子縁組を待てない親が買うって完全に意味がわからないんですよね。みんなそこスルーなんでしょうか。臓器がほしいとか、性的な目的で買うなら分かるんですが・・・。色々調べてみましたがそういう理由で買う人が多いというニュースもないですし。 どう落としどころ作るのかな、という興味はありましたが、こんなに長くなくてもいいんじゃないかと思いました。日本で作らなかったのはニホンよりは韓国の方がこういう事しそうということなんでしょうかね?ソン・ガンホは確かに文句ない実力の持ち主ですが別に役所広司でもできますしね。
赤ん坊の世話はたいへん
ソン・ガンホ、ぺ・ドゥナ大好きな俳優さんと是枝監督の作品となれば絶対いいに決まってる!とハードル上げまくりで行った。是枝作品の中では凄く好きな映画だった。理不尽な社会で、サバイブする人間の美しさが垣間見れる瞬間をしっかり切り取って表現されてた。 レビューをみてると、映画の出来について細かいところを色々と言ってる人がいっぱいいるけど、わたしはそれに目をつぶっても全然いい。それ以上に、心に残るシーンがいっぱいあった。 赤ん坊の世話をワンオペでしたことない人には、あの彼らの珍道中に、良きものを見ることはできないかもとおもった。 赤ん坊の世話はやってみると想像以上に大変だ。それを一人でやるのはほんとにきつい。でも、そこに何人か人がいると、その大変さを分けあえる。大変さが少し軽減されるだけでなく、喜びも共有できる。そういう豊かさがある。 それが大家族とか核家族とか婚姻や血縁による家族でおこなわれるのは伝統的な見慣れた風景かもしれない。それが得られない母親はひとりで世話をしろというのは酷すぎる。 実際に赤ちゃんを世話するとなったら、他人でも本当はぜんぜんよいのだ。赤ちゃんを売る旅とはいえ、赤ちゃんをちゃんのお世話をし、あやし、話しかけ、そこに大人が3人と小さいお兄ちゃん、その4人が同じ空間にいる風景は、束の間とはいえ幸せな風景であった。 実際、そういうセリフあったよね。 母親ばかりが責任を問われ責められる世の中で、なんでそこに不在の父親は責められないのか?という憤りが、この作品にはちゃんと描かれてた。「母親が無責任になる」といったセリフに対してちゃんと、反論する。その言い合いの応酬があるところとか、しっかり表現されてる。そういうところが、是枝監督の好きなところ。 女のことを「勝手に産んだ」って責めるなら、その前に妊娠させんなよ。ってはなしじゃないですか?なんで妊娠させた男の非が問われないのか?ほんとに理不尽。 コインロッカーの事件とかでも、赤ちゃんを捨てた母親が見つかればそこで捜査は打ち切り、母親が逮捕される。その母親を妊娠させた男の捜査はしない。妊娠させた男は逃げれちゃう。おかしいよね。 望まない妊娠をさせたら逮捕されるっていう世の中だったら男性はもっと慎重に振る舞うだろうか?
疑似家族側の視点だけで良かったのでは…
印象的なのは観覧車でのカットと特急電車のカット。こういう画作りはさすが是枝監督。安易なハッピーエンドに逃げないのも良かった。 ソン・ガンホの佇まいが素晴らしい。その分なのかはわからないけど、ソン・ガンホが出てないシーンは明確に眠い。特に警察側の視点は、結局掘り下げられてないし、他にも案件あるはずなのになーって思ってしまう。
洗濯屋サンちゃん
赤ちゃんポストに息子を捨てた母親と、その子を売買しようとするブローカーが行動を共にするロードムービー。 厳密にはポストには入れてないけど。 兼業神父と養護施設職員の男がグルになり、赤ちゃんポストに入れられた子を売る為に連れ帰ったものの、翌日母親が現れて一緒に買い手のもとへ向かうことになっていくストーリー。 捨てられる子がいるからポストがあるのに、ポストがあるから捨てられる子がいるという、ありがちだけど実社会で抱えている問題にも触れつつ、息子を捨てた理由やブローカーは本当に悪人なのか、赤ん坊に対する思いや捨て子に対する思いを、シリアスにせずにみせていく展開は良かった。 ただ、当番決め辺りから少しダレた感じがして、最後は刑事を含め、う~ん…当たり障りのない締め方といえばそうだけれど、その分温くて、現実的になる表現から逃げた感じを受けた。
うーむ、心動かない
最近何観ても涙ポロポロのしてやったりの自分が、この映画には入り込めなかった。 なんでだろう? ひねくれてるからかなぁ、 万引き家族は心動いたんだけど、そういえば「〜父になる」もこんな感じだったなぁ せっかくの韓国の俳優さん達もなんだか魅力的に感じなかった。
韓国で撮ってもしっかり是枝作品だ。
タイトルや予告編から想像してたのは、ブローカーと警察のアクション映画。そんなの是枝監督が撮るのかなと思っていたら、やっぱり違ってました。 赤ちゃんをベイビーボックスに捨てた母親。それからブローカー達と子供を買ってくれる客探しになる。その背後で動く警察。彼女達は、人身売買を現行犯で逮捕する為に、客を紹介したりする。それ倫理的にどうなの? なぜ、子供を捨てたのか?母親の気持ちをずっと知りたかったんだけど、後半になってやっと納得の理由。彼女なんですぐ逮捕されないで、ベイビーブローカー逮捕に協力させられてんの?謎。 とにかく韓国映画なのに、あまり感情をぶつけ合わなかったり、悪い人がいなかったりの、万引き家族的な他人の集まりの是枝邦画タッチ全開でした。 最後は、まさか!?と思いながらもウルッ。
やはり
1.評判なのに⭐️が少なくて変だと思った。 2.会話が多くフランス映画のようだった。眠くなった。 3.主人公の1人の女の子。ヘアスタイル変えたらもっと可愛くなったと思う。今頃ソパージュ?韓国では流行っている? 3.女刑事、食べ方が汚い。夫の扱いも雑。あの子きちんと育つかなぁ?そして、最初から出ていて、最後はあんたが引き取るんかーい。 4.最後、主人公は何処へ?邪魔する人を殺した?なんか1人だけ逃げた? 5.あの子供、本当の母さんやら、金持ちの夫婦やらいっぱい来られたら、訳分からなくなるんじゃないか? 6.刑務所から出てきた人は、だいたいガソリンスタンド。 7,最後ニュースで言っていた殺された人は誰?4千万円?は何?わからなかった。 8.明るいサッカー好きの子供はどうなった?あの赤ちゃんだけ皆大事にして。なんかかわいそう。
家族とは?を考えさせられる
赤ちゃんポストに入れられた赤ちゃんを別ルートで売りつけるというブローカー2人組。 ちょっとしたきっかけで売る相手をポストに赤ちゃんを入れた母親と共に韓国中を移動しながら探すというロードムービー。 ブローカーにも、母親にもそれぞれの事情があり。 誰が悪くて誰が良いという分かりやすい線引きなどすることができない状態が続く。 それが見ている人への問題定義となり、考えさせられながら作品を観るという体験になっていると思った。 それぞれの事情の描き方も過剰な演出はなく、自然と理解ができるような構造になっているのはさすがだと思った。 登場人物すべてが痛みを抱えながらもやさしさを持っていることに、観た後に前向きで優しい気持ちになることが出来る作品だった。
静かに響く人間物語
是枝監督が、韓国でこれ以上ないくらいの素晴らしいキャスティングで制作された『ベイビー・ブローカー』。いきなり余談になるが、現代がブローカーでほぼそれで公開前から通っているのに、敢えて邦題に"ベイビー"を付けてるのが、いささか別にそこで区別出さなくても、と思ったのだが、 まあいいだろう。 是枝監督の過去の代表作品と共通するように、親子や家族と言うテーマを用い、ベイビーボックスや人身売買という、韓国映画だから少し踏み切った要素を入れてきた今作。序盤は、それぞれのキャラクターの背景や人間性を醸し出しつつ、決して色んな事をあからさまにしない、どちらかと言ったら静かな展開。後半にかけて、一気にそれぞれの個性が溢れ、ストーリーも展開し、一気に時間が過ぎて行った印象だった。 個人的にはイ・ジウン(IU)のセリフに任せぬ表情での演技だ。彼女の作品は『マイディアミスター』で演技を見ただけだが(むしろ楽曲はずっと大好き)、何となく影を背負った若い女性を演じる姿は同じだった。もしかしたら是枝監督はあの作品を観て彼女をキャスティングしたのだろうか。 彼女は決して恵まれた環境からスターダムになったわけではないから、こういった役どころは彼女の人間味が出て凄く良いのかもしれない。 もちろん他の俳優陣も、静かにも内に秘めた役柄を演じている。セリフも味わい深いし、あのヘジンという男の子がまた味がある。 予告編やイントロダクションだと捨てられた子を売ろうとするブローカーとそれを追う警察、みたいな感じに見えるが、本編はもっと人間模様や一人一人の心情が見えて趣深い内容だった。スリリングな展開を期待した人には物足りないかもしれないが、まあこんな感じが是枝作品らしいと言えばそうかなという感じ。あとはやはり役者陣がとてもレベルが高いので、彼らなしには良作にはならないだろう。 ※2回目を観ると、より鮮明に見えてくるので、このタイプの映画は数を重ねた方がより映画の良さも見えてくる。また、今作はかなり多くのメディアで取り上げられているので、そちらでの監督や俳優陣のインタビューなんかも参考にすると味わい度が高くなる。
尤もらしいが。
長いのは物語演技演出が題と配役からの想定内ゆえ。 単調な割に変な偶然が挟まり解りにくくも。 行程の障壁、進捗、追っ手の迫り加減が不明瞭でロードムービー書式が寧ろ仇に。 女刑事の話しは丸ごと余計。 是枝、仏作に続き凡打。 折角のガンホとドゥナだが。 尤もらしいが。
『万引き家族』が"怒"とするなら…
背中のシワになったシャツ、とりわけクリーニング屋さんを生業とした者のそれ --- 現代最高の役者の一人ソン・ガンホでしかない最高に魅力的な主人公。彼のために当て書きされたのだろうなというのがよく分かる、"いかにも"じゃないセルフイメージに近い名演技。また、カン・ドンウォンも彼らしい最高に格好良い役柄で、年齢差や過去/状況の違った最高のコンビだった。そこに、事情ありな産みの母と途中参加サッカー大好きヘジン(海進)少年を加えて、それぞれがそれぞれの立場を象徴する。もちろん画一的でなく、子を捨てた親や親に捨てられた子の一例として。 是枝監督のミューズ = ペ・ドゥナ(いくつになってもかわいい!美)演じる刑事/躍起になる追手がある意味で、"冷めた"というよりもしかすると一般的 = 多数派な観客の視点や反応を、そして何より社会的な立場を代弁しているようだった --- "育てられないなら生むなよ"。けどそれでも言っていく、《社会の受け皿がもっと必要》だ。それは困窮した人たちを利用し搾取するのでなく、雨が降ったときに2人入れる大きな傘を持って迎えに来てくれる人がいること & 服を持ってきてくれる人がいること。裏社会/犯罪ドラマの側面/要素を織り込むのも巧く、これくらいが地に足着いた形で実現でき、胡散臭くなく自然だと思う。そして、それらによって苦しめられている人たちがいること、世の中の時に目を背けたくなるようなリアルも…。 赤ちゃん(の入ったカゴ)を抱くペ・ドゥナ→「ただのブローカー」 「ただのブローカー」→赤ちゃんを抱くペ・ドゥナ どのキャラクターも愛しかった、丁寧な描写に奥行きがあって好きになれる瞬間/キッカケがあった --- 作品を作り、物語を語るということは特定の視点を選び取り、そこからメッセージを発信することだと思っていた。けど、本作は違っていた。きっと映画館の空調のせいじゃなくて、鳥肌立ってしまうような心温まる瞬間がいくつもある。観客も登場人物たちとそうしたかけがえのない時間 = 後々考えたときの思い出を共有することで、感情移入と言っていいか分からないけど、共感/同情そして(そうならないと悟りつつ)応援してしまう。 けど、すぐ次の瞬間には、また異なる一面が見えて変わってくる。近づけば、また離れる。気を許せば裏切られる、そうした図式で揺さぶられてはドラマは"面白く"なっていく。観客を引き込む方法を、人々に効果的に訴えかける手腕をこの上なく知っているのだなといつも実感しては、好き嫌いなど超えて世界中の誰もが認めるであろうドラマを紡ぐ達人マエストロ = 是枝監督らしい《社会の貧しい人々に向けられた眼差し》と、子供への演出。度々、演出の意図がしっかりと伝わってくるようだった。よって無視できない。清貧じゃいられない。 「生まれてきてくれてありがとう」 おかしな疑似家族によるロードムービーで、『万引き家族』の精神的姉妹分のような作品 --- なにより紛れもない"家族"(について)のドラマ。だけど『万引き家族』が社会に突きつけられた"怒"の傑作だとするなら -- 本作にもそうした部分/面は多分に認めることができるし、それが合っているか分からないけど --- もっとこう、なんだか"哀"であり、温かくも、最後には微かな希望を手繰り寄せるように、祈りにも似たものがあった気がした。この"物語"は僕らが見る前から始まっていて、終わってからも続いていく、という"いい"物語に必要な素質をしっかりと持っている。 音楽や映画、アート/表現というものは度々作り手自らの立場で政治的なことを描き言及するかというのは普遍的テーマ/スタンスとして存在すると思う。自作の中でどれくらい社会的側面に比重を置き、前面に押し出すか。その点で、是枝監督のバックグラウンドとしてあるテレビマンユニオンのドキュメンタリー番組などにも通ずる生活者の観察者的なところは以前からあったけど、昨今の、とりわけ『万引き家族』と本作におけるそれは顕著かつ、もっと意識的なものだと思う。"もうこれ以上、静観できない"あるいは"もっと直接的に描き、声を上げる必要がある"と切迫した危機感に駆られたような、気持ちの変化以上に急を要する状況の変化。道標はある。
ストレートに響いた
是枝作品は個人的に合わない…と感じていたのだけれど、これはストレートに感動した。予告編を観なかったからかもしれない。是枝作品の予告編は大体本編を反映していないから…。感想を見ていると「サスペンスかと思った」という人が結構いたので「三度目の殺人」みたいな予告編を作ったんじゃないかと勝手に予想している。 物語としては、擬似家族ものとしては「万引き家族」に通ずるものがあるし、それぞれに何か抱えているというのも同じではあるのだが、こちらの方がなぜか感情移入の度合いが高かった。この差はなんだろうか。追う刑事たちと、途中入ってくる少年ヘジンの影響は大きい気がしている。 相変わらず是枝監督は全てを暗喩的な示し方ではっきりさせないのだが、今回はそれが却って抑制的な感動につながる気がした。ぺ・ドゥナが電話するシーンが最初にぐっときて泣いてしまった。あのぺ・ドゥナにどこかしら自分を投影していた。 IUは内に秘めたるものをつっけんどんな態度でしか示さないという役柄なんだけれど、彼女の変化、感情(というか言葉)の表出こそが「家族になる」ということなんだろうなあと。 是枝監督が「目」の演技を期待したらしいカン・ドンウォンがいちばんストレートに表情(やっぱり目)を変化させていて、言葉数が少ない分やはりいい演技でした。そういえば「義兄弟」のソン・ガンホとカン・ドンウォンでめちゃくちゃ泣いたな…。全然ストーリー違うけど…。 そしてこれまた個人的には「ソン・ガンホに外れなし」を標榜しているのだが、今回もやはりソン・ガンホは素晴らしかった。道化のようで、かつ背負うものをあからさまに見せず、抑制した表現。ラストの表情。やはりさすがであった…。 「生まれてきてくれてありがとう」がこんなに心に刺さるとは正直意外でもあった。この物語の根幹は「母がその言葉を言えるまで」にあるのかもしれない。
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