ベイビー・ブローカーのレビュー・感想・評価
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とにかく普通
台詞の巧妙さや、間の使い方などが是枝さんの技法の特徴と思っていたんですけど、ディテールにこだわったシーンとかはあまり感じられませんでした。
あまりにど直球な演出が多くてちょっと退屈でした。印象に残ったシーンがないというか、何から何まで思っていることを説明しなくてもなぁと。国の違いもあるのかも知れません。全員がピュア過ぎて少女漫画の印象を受けましたね。
前半の警察のシーンはとにかく食事をしていましたが意図が分からなかったです。咀嚼音が必要以上にあって正直不快でした。これも国の違いかもしれませんが。
ラストはキレイ風に撮ってますけど、かなり異常な状態だと思いました。冷静に考えると不気味です。
このテーマなら「朝が来る」の方が心は揺さぶられましたね。話は粗かったですけど。
5年経ったら忘れられる映画だと思いました。
社会問題を真正面から
赤ちゃんポスト、育児放棄といった社会問題を描いた本作は、産む側それぞれの事情はあれど、育児放棄や望まれない出産は哀しみの連鎖につながり、痛みを伴うというメッセージ性が込められていました。シビアで重いテーマではありますが、一歩で血の繋がりではない家族の絆や形には温もりや希望を感じ、救いのある作品になっていたと感じます。
物語全体としては比較的シンプルな構成でありながら、たっぷり間を取り余白を残して進むため、やや退屈に感じてしまった部分も。エンタメ性が薄く、終始重苦しい空気感だったのも気になりました。
チャレンジングな姿勢やテーマの興味深さはあれど、もう少し娯楽作品としても楽しめると良かったのにな…。
いい映画だが、是枝作品としては物足りない
是枝監督のファンには申し訳ないが、自分が期待していたほどの作品にはなっていなかった。
やはり、韓国の問題や民族性などが、自らの血になるぐらいの関わりがないなら、外国人である是枝監督が、この作品を作るのは控えた方がよかったように思う。
結局、作品としては社会問題を追求し、その背景やそこで生きる人たちの気持ちや優しさ、どうしようもない嫌な面などを描き切れなかったのではないか?それは、監督が日本人であるため、韓国と妥協せず向き合い迫ることができなかったからではなかったか?
また、この作品は何がテーマなのかはっきりしない。ベイビーブローカー、子どもの養子縁組み、海外への臓器提供などの問題、子どもを捨てる社会的背景、韓国の家族や人間関係の温かさや特徴、個々人が大切にされない社会等々。これらは、監督自身の韓国作品への迷いや追求のにぶさが出ているからではないか?
だから、映画の流れが平板で単調に成りがちで、映画に引き込まれるような迫力やリズムが感じられない。つまりそれは、日本人監督の作品であるが故に、韓国作品に真実みを実感できないことから来ているように思う。
決して悪い作品ではないが、是枝作品としては物足りない。
不覚にも泣かされた
万引き家族、風な…
心が揺り動かされた。
まさに是枝監督のテイスト満載
タイトルなし(ネタバレ)
所々で寝てしまった。15:40上映だったから朝から起きてた私に睡魔が襲う。映画の内容も派手なアクションがあるとか、コメディで面白い、わけでもなく、特に盛り上がりがなく進んでいくので、刺激が無くて眠い。
是枝監督作品をまともに見るのは初めてだ。AmazonPrimeでさらっと過去作を観たことはあるけれど。まぁ、彼らしさの映画なんじゃない?ヒューマンドラマで社会問題を切る。
本作のテーマは貧困と赤ちゃんポスト。貧しくて赤ちゃんを捨てるわけではないんだけど、ブローカーは借金返済のために赤ちゃんをさらって売ってる。
中絶したほうが良かった、それを赤子に言えるのか?こんなやり取りがあって考えさせられる。
結局赤ちゃんは売られることなく、ブローカーを追っていた女性刑事に引き取られたようだ。なんで?
始めは少し分かりにくかった。ソン・ガンホが帰宅する際に刑事が追いかけてきた。そこまでの流れが理解できないでいた。なんで捕まえないんだろう?と思っていたら、赤子を攫ってから売るまでを見届けて現行犯逮捕したいらしい。
母が赤ちゃんポストに入れなかった、というやり取りもあって不思議だった。確実にポストに入れてたし、ブローカーが動画を編集して証拠隠滅してたのに。よくわからない。
母役はIU。写真で見ると大変綺麗だが、映画だと役作りもあってか普通だった。ヤンママみたいだったからな。
ブローカーはソン・ガンホ。パラサイト半地下の家族で知った。それからタクシー運転手 約束は海を越えて、グエムル−漢江の怪物−も見たよ。役者として凄い人なんだと思っている。
家族とは何だろう
オープニングの画面上に大雨と急坂、そして階段の暗い映像が出て、パラサイトを彷彿とさせるようなイメージが、しかし始まってみればそんなイメージは一新でした。
赤ちゃんポストに預けた子供の売買事件に関する謎解きかと思いきや、登場人物たちそれぞれの人生模様から家族の在り方を読み解くドラマなのだと理解してからは、色々と推察を思い巡らせたのですが、スポットが当たっている人物が多く、しかもその背景がぼんやりとしていて、誰にも感情移入できないまま終わってしまいました。
翌日に三姉妹を鑑賞したのですが、今作品を含め日本と韓国の家族像の違いからか、どちらもそれほど共感を得られませんでした。
是枝監督作品は万引き家族や海街ダイアリーでホロリとさせられたので、やはりお国柄なのでしょうか。
それでも家族(血縁だけではない結びつきも含めて)の在り方、育ってきた環境、何が子供にとっての幸せなのだろうか、などなど考えさせてくれる良い作品ではありました。
是枝監督らしい作品
丹念な取材が物語を重厚にする
本作を観て、さらに作品パンフレットを読んで、人口が日本の約半分という韓国で、日本より一桁多い赤ちゃんポストの利用があると知った。
今年初め、米国に里子に行った韓国人青年の苦悩を描いた米国映画『ブルー・バイユー』も観たが、一方で移民問題もあり、根が複雑に見える。
さて、『ベイビー・ブローカー』である。
主要人物が、その俳優の起用を想定した「当て書き」をされていたということもあり、驚くほど俳優の個性と役柄がマッチしていた。
映画の冒頭で反感を持った役柄もいたが、物語が進むにつれて共感へと変わってきたから不思議だ。
日本では、最初に「赤ちゃんポスト」を始めた熊本の慈恵病院以外では、北海道の一例しかないようだが、それで足りているはずがない。
これらの施設には、行政からの補助もないらしいが、赤ちゃんが育つ環境の充実は本来国の責務のはず。政府の少子化対策も掛け声ばかりで何ら実効性がない。
「赤ちゃんポスト」のような施設が広がらない一方で、日本では相変わらず、乳幼児の死体遺棄や虐待の問題が報じられている。
『ベイビー・ブローカー』自体は是枝監督オリジナルの創作だが、この作品をきっかけに赤ちゃんの育つ環境について全国的な議論が起きることを期待したい。
家族とは?生きるとは?
少し期待しすぎた感はあったけど、普通に面白かった
旅を通して悪意は善意に変わり、憎しみは愛に変わる
裏で赤ちゃんの横流しを行うブローカーのサンヒョンとドンス。
いつも通り赤ちゃんポストに預けられた子どもを高く売ろうとしていたところにその子の母親が戻ってくる。
ひょんなことから始まった偽家族による養父母探しの旅。
彼らを現行犯で逮捕したい刑事のスジンは後輩のイ刑事と共に彼らを追うが…
韓国映画だから所謂韓国映画を期待してしまうが、あくまでも韓国が舞台の是枝映画だった。
要所要所に韓国映画を意識してるような点が見られるが、監督自身もそんなに韓国映画を意識しすぎず普通に撮れば良いとも思う。
でもやっぱり是枝映画。外さない。
歪な家族が旅を通してお互いを知り、絆を深め合っていく愛の物語。
これといった急展開もなく、赤ちゃんを高く売るための逃避行と言ってしまえばそれだけのことだが、確実に映画の中で愛が育まれていく様子に感動した。
メインはサンヒョンやドンスだが、悪と捉えてもおかしくないソヨンや本来そこまで目立つはずのないヘジンに花を持たせているところに好感を持った。
息子に授乳する養母を後ろから見つめるシーン、洗車のシーン、ステーキのシーン、射的のシーン、観覧車のシーン。
好きな場面は語り尽くせない。
どのシーンを切り取っても絵になる非常に満足度の高い作品だった。
唯一気に入らなかったのが物語の落とし所について。
正直あの登場人物にはもっと第三者でいて欲しかったので、あの展開はあまりに予想外だったしあまり満足がいかない。
寧ろ最後の数分の「その後の物語」は描かず、一つの旅の終わりまでで切った方が綺麗な終わり方だったと思った。
でも、2回目を観にいきたいくらい好きなことに変わりはない。
取り敢えず今夜はIUの曲を聴くことにしよう。
世間では「子は鎹」と言うけれど
共に旅をするうちに、
次第に打ち解け胸襟を開き理解し合う、
或いは過去のわだかまりが氷解する、
{ロードームービー}の基本スタイルであり
本作でもそれはきっちり踏襲。
しかし、その結果の次第は、
切なさと共にほろ苦さも包含。
主人公達にとっては勿論、
鑑賞する側にとっても、
各人の親子や家族関係を思い起こし
心が揺さぶられることは間違いない。
『是枝裕和』の最新作は
舞台を韓国に移し、彼が過去から度々選んできた
家族をテーマに人間模様を語る。
物語の発端となる「赤ちゃんポスト」が
日本では二ヵ所しかなく、いくらフィクションとは言え
生々しくなりすぎるための選択かとも思ったのだが、
お隣の国でも施設の数自体は似たようなものなのね。
ただ、年間に預けられる嬰児の数や国の補助の有無、
加えて国民の理解度等、見方には大きな違いがあるよう。
より、一般的な施設であることからの
選択の様な気もする。
そして本作は、映画的な二つの基本、
脚本と映像をよすがにしたにした省略が
頗る良く配されている。
前者で言えば、主要な登場人物達は皆々が何故か不可思議な行動を取る。
雨が降る寒い夜に「赤ちゃんポスト」を訪れた若い母親が、
その中には入れず、わざわざ外に置き去りにする導入部から、
それを見ていた張り込み中の若い女性刑事が、
わざわざ中に入れてやる一連の冒頭の部分がその最たるもの。
以降も、ブローカーの二人の男の態度、ましてや若い方は
ワケのあるその出自を照らし合わせると、行動自体が謎でしかない。
が、矛盾と疑問が渦巻く中、幾つもの不自然な行いには
夫々納得の行く理由が付けられ、鑑賞者の脳内は綺麗に整理される。
手練れの筆致によるものと感心する。
後者であれば、子供をポストに預けた女がショッピングモールで姿を消し、
実際にはトイレに入った後の行為に留めをさす。
子供を産んで間もない女性の生理と、
手放すことによる悲しみが如実に表現されるシーン。
一つの科白も付加されずとも、
見ただけで状況や感情が理解できる秀逸な場面。
ことほど左様に、映画的な造り込みの巧さは、
もう既に職人の域にまで達している。
離婚による親権の問題から、
故有って子供を手放さざるを得なくなったシングルマザー、
生活の困窮から売春をせざるを得なくなった女性の在り様や、
実際に施設に預けられた子供の成長まで
本作で取り上げられる事象は多岐。
一方で、それらに巣食い不正な利益を貪る社会悪の存在も、
仄聞的にはあるものの、遺漏無く俎上に乗せる。
予告編を見た時点では、子供に纏わる取引が
なかなか纏まらぬ{珍道中モノ}と思っていたが、
中途からサスペンスの色合いが濃くなり、
さいごはズバッと社会問題に切り込みつつ余韻を持たせて終わる。
タイトルとなっている「ベイビー・ブローカー」は
人身売買なので犯罪なのには違いない。
が、実際に「赤ちゃんポスト」に預けられた子供が
長じてからその商売に加担していることが本編での一つのミソ。
その動機には何があるのか?
選択権の無い子供の進路に、
大人はどこまで膾炙するべきか。
正解の無い疑問ではある。
韓国映画で製作した意図
血縁ではないもので結ばれた家族の巡礼をやさしく見つめる養父母を求めて流離う韓流版『リトル・ミス・サンシャイン』
『アジョシ』、『ただ悪より救いたまえ』、『バニシング 未解決事件』と人身売買や臓器売買を題材にした作品が多い韓流映画ですが、それは悪しき商売として描写されるのがデフォルト。それを覆したのが『声もなく』で、そこでは人身売買は野菜でも売買するかのように淡々と行われていました。そして本作では更に踏み込んで人身売買をWin/Winのビジネスにしようと奮闘する話にしています。そこは当然荒唐無稽な話であり眉を顰める人もいるでしょうが、それは是枝監督の『万引き家族』でも敢えて試みられたこと。万引きや車上強盗、覗き部屋でのバイト等後ろ指を刺されるような稼業に手を染めざるを得ないまでに追い詰められた人々が家族を形成する『万引き家族』に対して、本作は赤ちゃんポストの前に捨てられた子供を介して人身売買ブローカーの二人組と孤児と子供の母親が出会い、養父母を求めてさすらいながら家族を形成する話。そして『万引き家族』より一歩踏み込んでいるのが、人身売買の現場を押さえてブローカーを現行犯逮捕しようと執拗に彼らを尾行する刑事コンビと子供と母親を追う謎の男をドラマに絡めていること。この複雑なプロットは非常に韓流的ですが、直視したくないような凄惨な場面を敢えて詳細に見せつけることでドラマに深みを持たせるような韓流的演出はほぼ取り除かれているので、その非韓流的なアプローチに是枝監督の作家性が滲んでいる気がしました。
この世に生を受けた時から持っている血縁と偶然が積み重なって繋がった縁には本質的な違いはないことを繰り返し見せた後に訪れる結末は様々な感情を静かに揺さぶるもの。養父母を訪ねて回る旅はまさしく巡礼であり、そこには『リトル・ミス・サンシャイン』の巡礼と同質の優しい贖罪があります。
しかし本作が封切りされた日に米国の連邦最高裁判所が“ロー対ウェイド“裁判以降半世紀に渡って支持されてきた“中絶は憲法で認められた女性の権利”とする判断を覆したという報道があったのは衝撃的でした。それは決して民主的な判断ではなく、福音派の信者であるペンス前副大統領がこの判断に歓喜するツイートをしたことでも明らかな通り極めて政治的かつ宗教的な背景を持つもの。福音派がもたらす救いとは異なるものを鮮烈に描いた『三姉妹』とともに本作は今まさに観るべき作品です。
ちなみに本作には『三姉妹』の長女を演じているキム・ソニョンも出ているのでそこにも奇妙な縁を感じます。
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