劇場公開日 2022年6月24日

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「どうしてここまで優しい眼差しを注げるのか。」ベイビー・ブローカー ごーるどとまとさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0どうしてここまで優しい眼差しを注げるのか。

2022年8月4日
PCから投稿

赤ちゃんポストに子どもを置いた母親とその子を売ろうとするブローカーの2人組。それを追う刑事たち。
設定はすごく興味深いものなのに正直に言うと前半はちらちらと腕時計を見てしまっていました。
ですが、養父母を探す三人の旅に施設の男の子が加わったあたりから俄然面白くなってきました!
母親、ブローカーコンビ、男の子がいつの間にか疑似家族のようになり・・・。

ずっと家族を描いてきた是枝監督の眼差しはいつも温かくて優しい。
この題材で他の監督さんが撮っていたら、ブローカーは間違いなくもっと“悪い人”だったでしょう。
そう、「万引き家族」でも犯罪に手を染めている家族(血のつながりは無い家族)にどこまでも優しかったですよね。
この作品でも完全な“悪人”は出てきません。それどころか監督はみんなに愛情を注いているから、観客のこちらまでがみんなを抱きしめたくなるほどに愛しく思えてしまうのです。

階段の多い街並みと土砂降りの雨。冒頭のシーンは「パラサイト 半地下の家族」を意識しているのでしょう。日本人監督作とはいえ、このオープニングで韓国が舞台であることにすっと入っていけました。
対照的に観覧車の場面はどこまでも明るい光が注がれています。洗車のシーンも良かったなぁ。
雨、水滴、光。そしてソン・ガンホ。良き。

監督の優しさゆえにちょっとファンタジーになってしまっていて、そこが賛否分かれるところなのかもしれません。
泥臭さやもっとガチガチの社会派作品を求めると物足りないと感じるのかもしれません。

でも私は好きですね、こういうのも。
しばらくじんわりと噛みしめていました。

ごーるどとまと