「韓国でも是枝節が炸裂」ベイビー・ブローカー Minaさんの映画レビュー(感想・評価)
韓国でも是枝節が炸裂
名優、ソン・ガンホを主演に迎え、オール韓国キャストで送る是枝監督最新作。
「人」を過剰なまでに丁寧に描くそれらのシーンの数々は、胸に深く刺さる物が多い。赤ちゃんポストは日本にも存在するが、実際稼働している場所は一つしかない物で、本作を通してその存在を知った位である。子を捨てる様に聞こえるが、遺棄や虐待死をするのに比べればまだ良心があるのだろう。だが、そこでは悲しい現実が待ち受けているのである。捨てる人間がいればそれを売る人間もいる。鑑賞前はブローカー側の悪行に多少嫌悪感でも抱くかと思ったが、ここで是枝監督の十八番である、芯に刺さる様な穏やかでありながら現実を見せるスタイルで一気に引き込まれていく。本作ではブローカー側とペ・ドゥナ演じる刑事側の2つの視点で描いていくのだが、それぞれが「生きる」意味を見つめ直す形で交錯していく。その両者を繋ぐ役割を果たすのが、捨て子の実の母親であり、それが涙腺を刺激する展開に発展するのである。観覧車で目を隠して話すシーンはかなりぐっと来た。実の母親役を演じるのは、韓国の国民的歌姫であり、「国民の妹」の異名を持つ IU ことイ・ジウン。個人的にファンであり、アルバムも全て購入しているこちらからすると時折うっとりしてしまう笑。
是枝監督作品に対して苦手意識がある方々ともまれに遭遇するのだが、「あの感じ」は前述の通り健在。韓国映画はえげつない描写や怒涛の展開が目を話せない良い意味でも悪い意味でもブラックな映画が多い為、せっかくの韓国での物語ならばとそういう物を期待してしまいがちだが、これは心穏やかに、ゆっくりと時の流れに任せる形で観るのが良いだろう。