劇場公開日 2022年6月24日

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「登場人物それぞれの背負う苦悩と覚悟」ベイビー・ブローカー 12shiho28さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0登場人物それぞれの背負う苦悩と覚悟

2022年7月9日
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家族を描き続けてきた是枝監督が、家族を得られなかった(もしくは失った)人々が不器用に紡ぐ絆を、1人の赤ちゃんを軸に描く

捨て子の赤ちゃんを闇で売り捌くベイビーブローカー、と聞くと極悪非道に聞こえるけど、その実態は借金にあえぐ冴えないクリーニング店店主サンヒョンと、孤児院で育った赤ちゃんポスト設置施設職員ドンス
彼らは慣れた手つきで、赤ちゃんを大切に愛しんで世話する

彼らが拾った赤ちゃんを取り返すため、若い母親ソヨンが現れた事で物語が動き始め、彼らを摘発したい女性刑事スジンが後を追う

彼らの追って追われての攻防戦かと思いきや、そこに市内で発生した殺人事件とドンスの育った孤児院が絡み、物語は思わぬ方向に展開していく

韓国を舞台に、格差社会の歪みに生きる人々をリアルに描きながら、決して重苦しくなく所々で笑いさえ起きるテイストに仕上げられたのは、ソン・ガンホの存在感によるところ大!

頼りないながらどこか愛嬌を感じさせる彼のリアリティ溢れる存在感が、現実離れしたストーリーをしっかり地に足つけさせ、カン・ドンウォン演じるドンスの優しさと達観、ペ・ドゥナ演じるスジンの頑なさと気付き、IU演じるソヨンの覚悟と苦悩、それぞれに説得力を持たせている

個人的には予想外の展開だったけど、全ての人にとって一番良い落とし所だったのかもしれない、と思えたのは、そこに行き着くまでのそれぞれの苦悩がスクリーンから伝わってきていたからだと思う

全てを描かず、ラストシーンで最後を観客に委ねたのも良い
家族の形がさまざまな様に、受け取り方もさまざまで良いと思う

個人的に☆5中☆4

12shiho28