劇場公開日 2022年6月24日

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「出生賛美かな」ベイビー・ブローカー 一発屋さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0出生賛美かな

2022年7月9日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

寝られる

予告見て、ベイビーブローカーって極悪人なのかなと思っていたけど本編見てただの優しいおじさん達でびっくり。お金で人を売るのは人身売買に当たるから違法といえば違法なんだろうけど。微笑ましいシーンも多かった。

スジンとソヨンの会話で産むか堕ろすかという議論は永遠のテーマだ。もちろん望まない妊娠はさせる・するべきではないのだが、その後の選択はどちらが正しいとは一概に決められないと思う。私自身、子供が不幸になるなら産むべきでは無いし、子供の立場に立って考えると人間になる前(辛さとか物心つく前)に消してほしいって思っているのでソヨンには同情できなかった。

序盤はソヨンが子を全く抱かなくて「この人は本当に母性が備わってないタイプの女性なんだな」という目で見ていたけど、ソヨンが人を殺したことや自分はいずれ刑務所に入ることになり他の親に託すから情が移らないようにしてたんだ、と分かった時は自分の偏見さに反省した。

上映時間長くて途中画面から目を逸らしてしまったけど、一番印象に残ったのは観覧車のシーン。考えようによって物事の良し悪しは変わるんだな、と。映画見てから1週間くらい経ってしまっているので具体的なセリフは思い出せない。字幕映画はそこがダメだな。視覚でしか情報が得られないからどんな名台詞も記憶に残りにくい。

ソヨン役の女優さん、一見素朴な顔立ちに見えるけど整った綺麗な顔をしていて、心の中に闇がありながらも女性としての温かみを備えていて、とても良い雰囲気があった。「万引き家族」の松岡茉優みたいな雰囲気があった。(素朴な顔立ちとか言ってしまったが、後に韓国では有名な歌手だと言うことを知りました…)

妊娠や出産は女性にとって永遠に付きまとうもの。ソヨンは売春婦だったが、一般女性も他人事では無い。望まない妊娠をしたら堕ろせる?産んだとして最後まで育てられる?男性、経産婦、独身女性でも観終わった後の感想が違うんじゃないかなぁと思った。

この映画、最終的には出生賛美なんですよね。ソヨンが仲間に対して「生まれてきてくれてありがとう」だとか、ウソンが楽しそうに遊んでる場面とか。実際、出産ってそんな綺麗なもんじゃない。そして全ての子供に福祉が行き渡る世の中では無い。「育てられないなら産むな」を訴える映画かと思ったら、「産んだ本人が育てられなくても周りが助けてくれる」「出産は素晴らしい」という印象に変わってしまった。

そしてやっぱり男性無罪だな、と。ウソンの父親は死んでしまったけど、ウソンの父親への責任をもっと追求すべき。妊娠はいつも女だけの問題になる。母親は子を愛して当然で、父親は子を見捨てても社会はそれを責めない。

上手くまとまらないので、避妊しましょう!ってことで。社会問題を描いた作品としては面白かった。ただ、ここで描かれているのはそこまでの弱者でもない。

餅