「素敵な作品ほど、上手く言葉で感想をまとめるのが難しい。 これは映画...」ベイビー・ブローカー yyさんの映画レビュー(感想・評価)
素敵な作品ほど、上手く言葉で感想をまとめるのが難しい。 これは映画...
素敵な作品ほど、上手く言葉で感想をまとめるのが難しい。
これは映画館で観て良かった。映画体験ってこういうことだよなとしみじみ。感動って言葉だけでは薄っぺらいくらい、私にとっては貴重な経験ができた。
是枝監督作品はもともと好きだが、今作はその中でも傑作だった。
理由は良いシーンが多すぎるから。感覚的には6個くらいあった。大体の映画で良いシーンは数個あれば良いのに、この映画はどのシーンも良かった。
そしてそれぞれの良いシーンが「良いシーンですよどうぞご覧下さーい!」って厚かましさがないのが凄い。非常にナチュラルに受け止められる。
音楽もすごく良かった。ピアノの透明感と雨音がしっくり馴染む。
雨だれのシーンでは前半なのに既に泣きそうになった。
ストーリーも、序盤からの流れをくみ取り、徐々に厚みを増してそれらが人物たちの想いとして形に表れていくのが美しい。人数も多いのに自然にキャラクターをまとめお互いに物語を進めていく流れは、さすがの手腕。最後まで目が離せず、この先どうなってどう終わりを迎えるのか、全く予想できない。
それぞれ誰かに捨てられた人らが、一時でも家族としての絆をつむぎ、最終的には自分たちは生まれてよかったと思い、目の前の赤ちゃんにも生まれてよかったと思って欲しいという願いがひとつになっていく。愛のある親が子に当たり前にするように、「この子には幸せになって欲しい」とみんなが願う様が美しい。あの瞬間は間違いなく家族だった。
少子化はこれからも続いてしまうし、なかなか私自身も産む選択もできなさそうだが、この映画のように新しい命にはやさしい社会であってほしいと願う。ウソンみたいに愛される子が増えたらいいな。