「殺人に対する葛藤の薄さ」ベイビー・ブローカー さくやさんの映画レビュー(感想・評価)
殺人に対する葛藤の薄さ
『三度目の殺人』が、映画の中で一番好きなので、期待して観に行きました。
是枝監督らしく、感じ方は視聴者に委ねるスタイル。
どんなメッセージを受け取るか、何を感じるかを押し付けない代わり、画面の中に、音に、セリフに、ギュギュッとメッセージが凝縮されています。
この映画のメインテーマは「すべての命への祝福」なのだろうと思います。
そして、命への責任を負わされて、全うし切れなかった人間への赦し、でしょう。
祝福だけでも赦しだけでも足りない。
祝福された命を、やむを得ない事情で一人では背負いきれなかった人間を赦す、この矛盾した二つがこの映画全般を通して語られていたように思います。
しかしただ、これは韓国映画だけでなくハリウッド映画にも感じるのですが、相手が「悪人」であれば、あまりにも簡単に殺しすぎないか。
この映画で殺されるのはヤクザ世界の人々なのですが……殺人者にあまりにも葛藤がなさすぎて、感情移入しきることができません。
いくら大切な人を守るためとはいえ、一気に殺人に短絡してしまうのは、ルサンチマンや恨のなせるわざなのでしょうか?????
それにしても。
その点でやはり、この映画は「韓国映画」なのであって、「是枝監督の映画」として評価してはいけないのかもしれません。
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