劇場公開日 2022年6月24日

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「丹念な取材が物語を重厚にする」ベイビー・ブローカー クママさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5丹念な取材が物語を重厚にする

2022年6月27日
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本作を観て、さらに作品パンフレットを読んで、人口が日本の約半分という韓国で、日本より一桁多い赤ちゃんポストの利用があると知った。
今年初め、米国に里子に行った韓国人青年の苦悩を描いた米国映画『ブルー・バイユー』も観たが、一方で移民問題もあり、根が複雑に見える。

さて、『ベイビー・ブローカー』である。
主要人物が、その俳優の起用を想定した「当て書き」をされていたということもあり、驚くほど俳優の個性と役柄がマッチしていた。
映画の冒頭で反感を持った役柄もいたが、物語が進むにつれて共感へと変わってきたから不思議だ。

日本では、最初に「赤ちゃんポスト」を始めた熊本の慈恵病院以外では、北海道の一例しかないようだが、それで足りているはずがない。
これらの施設には、行政からの補助もないらしいが、赤ちゃんが育つ環境の充実は本来国の責務のはず。政府の少子化対策も掛け声ばかりで何ら実効性がない。
「赤ちゃんポスト」のような施設が広がらない一方で、日本では相変わらず、乳幼児の死体遺棄や虐待の問題が報じられている。

『ベイビー・ブローカー』自体は是枝監督オリジナルの創作だが、この作品をきっかけに赤ちゃんの育つ環境について全国的な議論が起きることを期待したい。

クママ