「子どもの幸せを願わずにはいられない」ベイビー・ブローカー chikuhouさんの映画レビュー(感想・評価)
子どもの幸せを願わずにはいられない
子どもは親を選べない 自分が生まれてきた背景、生まれてからの実親の葛藤、「ものごころがつく」までの育てられ方、 子どもは自分の知らないところで多くの人に喜ばれ、ときには疎まれ、憎しみをもたれ、それでも多くの人のかかわりの中で成長して「ものごころがつき」、自分の生まれてきた環境、親や親族の姿を知って、自分ではどうしようもない「枷」(かせ)の中で生きていく
日本でも「夕陽のあと」という実親と育ての親の2人の母親が、子どもを取り合う話の映画が3年前にあった 我が国の特別養子縁組という制度は、普通の養子縁組ではなく、実親との関係を完全になくし、養親である育ての親が唯一の親であるとするものであり、それが「子どもの福祉」に資するものと制度が作られた時の趣旨であった
韓国における考え方は違うのかもしれないが、産みの母親の気持ちには大きな違いはないだろうし、母親を支える方法があるならば異なる決心をするものかもしれない 我が国でも赤ちゃんポストをめぐって様々な議論があった
一方で「子どもの福祉」を阻むものは犯罪として、本作ぺ・ドゥナ演じる警察、日本でも児童相談所が「張り込み」を重ねる中で証拠を固めて「立件」して、「子どもの福祉」を守ろうとしている
長い時間を共有することによって、お互いの思いが通じ、「かべ」が崩れていく本編の過程は、子どもは守られるべき存在であり、その子どもの存在によっておとなも変えられていく「可能性」を感じるものでした モーテルの一夜、遊園地でのひととき、普段は煩わしいと思っている存在であっても、そこに誰かがいることで、苦しい・悲しいと思っていたことが共有されていく 苦しい生活であればこそ、そういったつながりが育まれていく「可能性」があるのでしょう あくまでも「可能性」の話であって、現実には貧困を脱する手段としての「売買」はなくなりませんが、そんな希望を持つ作品でした 私としては数年前虐待を受けている少女を救うために立ち向かう「左遷されたエリ-ト警察官」を演じた7年前の「私の少女」でのぺ・ドゥナ目当てで観にいきました (同じ警察官でありながら「匿って逃げる警官」、今作は「追い詰める警官」でありました) 彼女も久々の是枝監督との仕事でしたが、変わらず名演でありました(6月26日 イオンシネマりんくう泉南にて鑑賞)