「ストレートに響いた」ベイビー・ブローカー andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)
ストレートに響いた
是枝作品は個人的に合わない…と感じていたのだけれど、これはストレートに感動した。予告編を観なかったからかもしれない。是枝作品の予告編は大体本編を反映していないから…。感想を見ていると「サスペンスかと思った」という人が結構いたので「三度目の殺人」みたいな予告編を作ったんじゃないかと勝手に予想している。
物語としては、擬似家族ものとしては「万引き家族」に通ずるものがあるし、それぞれに何か抱えているというのも同じではあるのだが、こちらの方がなぜか感情移入の度合いが高かった。この差はなんだろうか。追う刑事たちと、途中入ってくる少年ヘジンの影響は大きい気がしている。
相変わらず是枝監督は全てを暗喩的な示し方ではっきりさせないのだが、今回はそれが却って抑制的な感動につながる気がした。ぺ・ドゥナが電話するシーンが最初にぐっときて泣いてしまった。あのぺ・ドゥナにどこかしら自分を投影していた。
IUは内に秘めたるものをつっけんどんな態度でしか示さないという役柄なんだけれど、彼女の変化、感情(というか言葉)の表出こそが「家族になる」ということなんだろうなあと。
是枝監督が「目」の演技を期待したらしいカン・ドンウォンがいちばんストレートに表情(やっぱり目)を変化させていて、言葉数が少ない分やはりいい演技でした。そういえば「義兄弟」のソン・ガンホとカン・ドンウォンでめちゃくちゃ泣いたな…。全然ストーリー違うけど…。
そしてこれまた個人的には「ソン・ガンホに外れなし」を標榜しているのだが、今回もやはりソン・ガンホは素晴らしかった。道化のようで、かつ背負うものをあからさまに見せず、抑制した表現。ラストの表情。やはりさすがであった…。
「生まれてきてくれてありがとう」がこんなに心に刺さるとは正直意外でもあった。この物語の根幹は「母がその言葉を言えるまで」にあるのかもしれない。