「旅を通して悪意は善意に変わり、憎しみは愛に変わる」ベイビー・ブローカー 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
旅を通して悪意は善意に変わり、憎しみは愛に変わる
裏で赤ちゃんの横流しを行うブローカーのサンヒョンとドンス。
いつも通り赤ちゃんポストに預けられた子どもを高く売ろうとしていたところにその子の母親が戻ってくる。
ひょんなことから始まった偽家族による養父母探しの旅。
彼らを現行犯で逮捕したい刑事のスジンは後輩のイ刑事と共に彼らを追うが…
韓国映画だから所謂韓国映画を期待してしまうが、あくまでも韓国が舞台の是枝映画だった。
要所要所に韓国映画を意識してるような点が見られるが、監督自身もそんなに韓国映画を意識しすぎず普通に撮れば良いとも思う。
でもやっぱり是枝映画。外さない。
歪な家族が旅を通してお互いを知り、絆を深め合っていく愛の物語。
これといった急展開もなく、赤ちゃんを高く売るための逃避行と言ってしまえばそれだけのことだが、確実に映画の中で愛が育まれていく様子に感動した。
メインはサンヒョンやドンスだが、悪と捉えてもおかしくないソヨンや本来そこまで目立つはずのないヘジンに花を持たせているところに好感を持った。
息子に授乳する養母を後ろから見つめるシーン、洗車のシーン、ステーキのシーン、射的のシーン、観覧車のシーン。
好きな場面は語り尽くせない。
どのシーンを切り取っても絵になる非常に満足度の高い作品だった。
唯一気に入らなかったのが物語の落とし所について。
正直あの登場人物にはもっと第三者でいて欲しかったので、あの展開はあまりに予想外だったしあまり満足がいかない。
寧ろ最後の数分の「その後の物語」は描かず、一つの旅の終わりまでで切った方が綺麗な終わり方だったと思った。
でも、2回目を観にいきたいくらい好きなことに変わりはない。
取り敢えず今夜はIUの曲を聴くことにしよう。