「どこか懐かしさを感じる風景」ブータン 山の教室 Jaxさんの映画レビュー(感想・評価)
どこか懐かしさを感じる風景
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淡々と、起伏がそこまでない話なのだけど、山奥のWifiはおろか電気も満足に無い生活が地味に丁寧に描かれているのが良い。風景といい人の顔立ちといい質素な暮らしといい、昔の日本のようだ、と思う人も多いだろう。
まず主人公がルナナ村に着くまでの6日間を作中30分(!)もかけて描かれている。
設備もろくに無い学校、質素すぎる部屋、着いた途端に帰りたくなる都会育ちの主人公ウゲン、でも新しい先生の到着に目を輝かせている子供たちに後ろ髪を引かれてそのまま教えることに。
ノートも黒板も無いなかで、子供たちに丁寧に教えるウゲンの様子からは、教職課程にやる気が無いようでも、全く教師としての素質や情熱がないわけでもなかったことがわかる。アルファベットのCを教える際、車(Car)を見たことない知らない子供たちに牛(Cow)を代わりに教える機転もある。
不便な生活にも慣れ、ヤクの糞で火をおこし、黒板やチョークを自作し、自室の窓に貼られていた防寒用の貴重な紙を生徒のノートのために使うところはぐっとくる。
ラスト、主人公は望んでいたビザを手に入れ、オーストラリアで望んだ歌の仕事に着いても心はルナナ村にある。ルナナ村の生徒たちと一緒に歌っていたときの方がずっと生き生きとしていた。
「お坊さまと鉄砲」でも描かれたように、ブータンも近代化の波の影響を受け、質素な暮らしに満足している国民ばかりでは無くなってきているようだ。それでも子供たちが将来の夢のため熱心に勉強する様を見ていると、未来が明るいことを願ってやまない。
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