「「山の彼方の空遠く」に幸せの国があります。幸せの意味を考えるきっかけになる作品です。」ブータン 山の教室 もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
「山の彼方の空遠く」に幸せの国があります。幸せの意味を考えるきっかけになる作品です。
予告で見たブータンの少女
純朴な笑顔に心を奪われました。
幸せの国へ行ってみたくなり鑑賞です。
◇ まめ知識
舞台のブータン
九州くらいの国土。人口は70万人。 ふんふん
首都はティンプー。
標高2300メートルに10万人が暮らすそうです。
そしてルナナ村。
首都からさらに北。 ヒマラヤの麓 (中腹…?)
標高4800メートル ひぇぇ
2000メートルを超える場所には
一度も行ったたことがありません。
富士山+1000メートルの高さは想像不能 …です。
◇
主人公のウゲン。
首都で教師をしている が、無気力。
オーストラリアに行き
音楽で暮らしていきたいと考えている。
祖母と暮らしているが、置いていくつもりらしい。。
そんなウゲンに役所から呼び出し。
「1年間、ルナナ村で教員をしなさい」
「…高山病になるので…」
「あなたの病気は怠け病です!」
「…」
ささやかな抵抗も聞き入れられず
しぶしぶ赴任の準備をするウゲン
途中までバス。
終点からは徒歩。 徒歩 とほ とほほ
野宿。 また野宿。
ようやく到着。
迎えに来た村長に 「ボクには無理です」
…はたして彼はやっていけるのか
◇
次の朝
疲れて寝ているウゲンの元にやってくる女の子。
ペム・ザムちゃん。 9才。
小学生で級長をつとめるしっかりした子。
「何?」
「授業の時間を過ぎているの先生が
にいらっしゃらないので、様子を見にきました」
…
教室にいき、みんなで自己紹介をする。
教室は薄汚れていて
黒板も置いてなくて でも
生徒たちの眼はキラキラとしていて
帰りたいと思ってもすぐには無理…。
ならば居る間に少しでも と
村人に黒板を作ってもらったり
街から教材を送ってもらったり
そしてある日
学校の前の草原から聞こえてきた歌声。
「ヤクに捧げる歌」
を歌う少女との出会い。
ウゲンの体と心がゆっくりと
ルナナの空気と大地に溶け込み始める。
季節が過ぎ
冬になる前に山を降り、街に戻るウゲン。
「また戻ってきて」 と、子供たちの願い
「私はここに居ます」 と、ヤクの歌の少女
そしてウゲンはどうするのか…
◇
この作品を通して
伝統的生活を守ろう とか
そういったメッセージ性はあまり
感じられないのですが
「幸福ってなんだろう」
とのメッセージが感じ取れました。
簡単には行くこともできない
けれどそこにも 人々の暮らしがある
そんな場所が この地上にあってもいいんじゃないか
そんな風に思えます。
色々と考えるきっかけになる作品です。
観て良かった。
◇ あれこれ
日本から見れば
ブータン自体が山奥の国ですが
ルナナという場所は
ブータンのなかでも、秘境中の秘境。
なにせ
「ラジオもねぇ、テレビもねぇ」
のは当たり前
そんな吉幾三の世界のはるか上をいく世界。
「先生のためにトイレットペーパーを用意」
→ 村人たちは葉っぱを使うらしい
「暖房で燃やす紙がない」
→ 紙は貴重。
燃料はヤクの糞
おそらく
昭和初期 (100年前くらい) ころまでは、
日本の山奥にもルナナのような村は
あったのではないか思います
何かを手放し 何かを手にする。
永遠に変わらぬ物などないとは思いますが
願わくは、100年後のブータンでも
ヤクに捧げる歌を歌う声が聞こえますように。
# 外部の人間の、無責任な願いと思いつつ
◇ あれこれ その2
幸せの国はどこにある
「幸せの国と言われているのに
幸せを求めて国を出て行く人たちがいる」
う~ん。
重い…。
これが現実なのかもしれません ふぅ
フン闘するウゲン
ヤクの糞を求めて山の中
手を伸ばし迷い無く掴む ぐちょ …あぁぁ 生…
かまわず次々と… ふん ふん ふん
…
すっかり山暮らしに馴染んだウゲンの姿が
そこにありました。
後日、ヤクの歌の少女に指摘されます。
「拾うのは乾いたフンよ」
ああ …ですよね
◇最後に
気軽に 「風景の綺麗な場所」 なんて
いってはいけない時もあるでしょう
けれど
遠くには白く雪におおわれた山々
手前には一面に広がる草原
綺麗です。
神の舞い降りる土地。
まさにそんな感じがしました。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
今晩は
「帰去来辞」・・陶淵明。
数十年ぶりに思い出しました。
私のレビューでは、ウゲンが夢だった筈のオーストラリアのパブで誰も聞いていない”ビューティフル・サンデイ”から”ヤクに捧げる歌”を朗々と歌うシーンを観て、”ウゲンはルナナに戻り、笑顔で”私はここにいる”と言ったセドゥと再会し、幸せな家庭を築いて欲しいなあ・・、”と書きましたが・・、
似たような感想を抱かれたのですね。
心に残る、佳き風合の作品でしたね。
こんばんは、共感ありがとうございました。
レビューを読ませていただき、あの映画の各シーンをふつふつと思い出し、あの映画に出逢えた幸せをもじんわりと思い返しています。
こども~若者~壮年~お年寄りまで、みんなで楽しめる映画ですね。
きりん