「バッファローは山を見上げヤクの帰りを待つ」ブータン 山の教室 フリントさんの映画レビュー(感想・評価)
バッファローは山を見上げヤクの帰りを待つ
山奥の村で先生になる話
大自然の美しさと村民の素朴な暮らし、映像に残すだけでも価値のある作品でした。
電気は無いし娯楽も無い、紙すら貴重な僻地で主人公の目を通して観客に伝わる自然の素晴らしさと心に響く歌声。
文明の進歩は人の心を豊かにしたのか?
便利になればなるほど、思いやりや助け合いの精神は薄れていき、個人主義や自己責任が蔓延してくる。
人間は一人で生きていくことが出来ないのに、現代の生き方は他人とのつながりを希薄にしているように感じる。
映画の舞台となるルナナ村は都会に比べればとても不便だが、村全体が一つの家族のように暖かい。
なんでこんなにも優しいのか、これが本来の人間の姿なのか分からないけれど、とっても行ってみたくなる村だった。
子どもたちの笑顔も、大人たちのおおらかさも、のんびりとした時間も全てがうらやましい。
自然の恵みに感謝して季節とともに生活を変える、なんて理想的なんだと思ってしまうけれど、現地の人たちはその生活から抜け出したいんだよね。
未来に触れるには教育が必要なのだと私も主人公もまったく気づいてなかった。
当たり前に教育を受けられる環境がどんなにありがたく尊いか忘れていた。
本当の幸せと豊かさって何だろう?
山を下りる事、山に残ることの先に待ってるのは何?
人々に受け継がれる歌だけが答えを知っているのかも知れない。
将来への不安とか現実への不満とかの感情を忘れさせてくれるわけじゃないけれど、ちょっとだけ心を軽くしてくれるような映画でした。
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劇中セリフより
「なんで君たちは泥がついてない?」
いくら最新鋭の靴だろうと、避けなければ泥は着く。
大事なのは靴ではなくて道筋と歩き方。