私たちの青春、台湾のレビュー・感想・評価
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民主主義の根本的な難しさに触れた作品
世界中で民主主義が困難に直面している。台湾は東アジアにおける民主主義の優等生と言われる。しかし、内情はそんなに単純なものではないとこの映画は明かしている。台湾独自の問題もたくさん描かれるが、それらを通して見えてくるのは民主主義が本質的に抱える難しさだ。
ひまわり運動で行政府を占拠した若者たちは、透明性のある政治を求めて行動を起こした。その当人たちが、占拠中にデモの方針を不透明な密室で決めてしまう。そのことを当人たちも矛盾していると感じている。
運動のリーダーだった青年は選挙に出馬するが、過去のスキャンダルが発覚して失脚。側近メンバーが思わず本音で「コネでもみ消せないかな」と漏らすのをカメラは捉えている。リベラルで多様な価値観を認めるはずの若者たちが、中国人留学生を国籍だけを理由に排斥する。
矛盾だらけの民主主義。でも、立ち止まらず反省し、かろうじて前を向く監督の誠実さは特筆に値する。誰かに期待を押し付けないこと、それがいかに残酷なことなのかに気が付くこと。民主主義の本質的な困難さを乗り越えるためには、本作で監督自身が発見したことを、多くの人が気づく必要がある。
民主主義の難しさ
台湾で2014年3月に中国との貿易に関する立法について、過程の透明性を求めたひまわり学生運動が起き、学生達が立法院を占拠した事件の前から、その後を描いたドキュメンタリー作品。
この運動でリーダーをしていた男子学生のウェイティンと中国からの留学生で台湾の様子をブログ発信していた女子学生のボーイーに興味を持ち、彼らなら何かを変えてくれるんでは、と期待したフー・ユー監督が2012年頃から2人を追っかけてきた。
結果として、監督の思うような展開にはならなかったけど、中国大陸、台湾に香港も含めた難しい問題に踏み込んでいるのは素晴らしい。
2017年までだったが、その後香港はもっと中国の弾圧が厳しくなっており、台湾の危機感はこの作品以降もっともっと高まっているものと想像する。
民主主義に向け中国の圧力という危険はあると思うが、続きが観たいと思う作品だった。
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