「淡々としたストーリーなのに何故か面白い。観てみて欲しい。」空に住む サチコさんの映画レビュー(感想・評価)
淡々としたストーリーなのに何故か面白い。観てみて欲しい。
両親を亡くしても泣けない。そんな自分自身に戸惑いあるいは幻滅さえしている直実。父は直実のことを「雲みたいなやつ」と評していた。おそらくこの『雲』とは白くてフワフワなどの可愛らしい意味合いではなく、実体が在るように見えて実はただの霞みであるという冷やかな例えなのではないか。仕事に夢中の父、その父に夢中の母。直実は両親の眼中に無い自分自身を憐れみ構ってくれない両親を心の奥底で恨んいたんじゃないだろうか。だから涙が出ない。
直実の叔母さん。料理が全く出来ない彼女はおそらく親に甘やかされて育ったのだろう。直実とは真逆。天真爛漫なお嬢様がそのまま大人になったような人。しかし天真爛漫が許されるのは子供の頃まで。きっと彼女には友達がいない。夫と直実しかいない。だから子供を欲する。
直実の同僚、愛子。彼女は結婚を控えた身でありながら妻子持ちの子を孕む。
バレやしない。バレてるかもしれないけど大丈夫。直実を呆れさせる強気な発言は全部フェイク。結婚式当日、ウェディングドレス姿で鏡に写る彼女の強張ったあの笑顔。あの表情は凄い。
で、時戸森則。彼は難しい。解らない。
「俺も両親はいない」と言っていた。これがそのまま意味なのか、健在だが切り捨てたという意味なのか。
スキャンダルの相手が相当年上という情報はマザコン気味を意味するのか、ただ見境が無いだけなのか。
本当に謎な男だよ。
「気を使われると淋しい。だから気を使っていると悟られないように気を使っている」という台詞。位牌を前にして帽子をとる姿勢。
その一方で「一生続く人間関係は地獄」と言う。お腹に子供を宿した妊婦を気色悪と言い、卵さえ厭う。
ああ…解らない。森則が気になり過ぎてもう一回映画館に行くしかない。
映画自体もすごく良かった。基本淡々としたストーリーなのにあっという間に終わってしまった。いや、本当に数日前に観てからずっとこの映画のことを考えてる。