劇場公開日 2022年11月25日

「ムッソリーニをおちょくった処や怪魚の造形などデル・トロらしいが、基本的にはデル・トロ作品には珍しいストレートな人情劇。ラストクレジットに流れる曲・音楽はまるで往年のハリウッドミュージカルの様。」ギレルモ・デル・トロのピノッキオ もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ムッソリーニをおちょくった処や怪魚の造形などデル・トロらしいが、基本的にはデル・トロ作品には珍しいストレートな人情劇。ラストクレジットに流れる曲・音楽はまるで往年のハリウッドミュージカルの様。

2022年12月4日
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鑑賞方法:映画館

①ラストクレジットで錚々たる面々が声を当てているのにビックリ。ユアン・マクレガーが『ムーラン・ルージュ』以来(私にとっては)朗々たる歌声で歌い上げてくれる。
②2019年の『ほんとうのピノッキオ』では結構説教臭い話だったんだと思わされたが、本作では説教臭さは殆どなく風刺精神は残しつつエンタメ(ミュージカルな味付け)+ファンタジーとなっている。
③時代背景をイタリアがファシズムに席巻された第一次世界大戦と第二次世界大戦との間の時期にし、原作の悪辣な商人によって子供達がヤギに変えられるところをファシストが子供達を戦士にする設定に変えたところも巧い改変。
④ピノッキオはいい子に成ろうとは言うが、(妖怪人間ベム・ベラ・ベロのように)“人間に成りた~い”とは言わない。最後まで人間の子供には成らず、木の人形のままというのも『シェイプ・オブ・ウォーター』を監督し異形好きのデル・トロらしい。
⑤ピノッキオが木の人形なので何度も生き返る(死なない)ところや、死の国、死を司る精霊が登場するところは『パンズ・ラビリンス』に通ずるダーク・ファンタジーの味。
⑥本作のピノッキオは良い子と悪い子との間をあまり言ったり来たりしないし、クリケットもピノッキオのガイド役というよりもコメディリリーフ役に近いが、ピノッキオの胸のところの洞(うろ)が家というところが、『人造人間キカイダー』(ピノッキオの物語がモチーフ)のジェミ二(良心回路)を思い起こされて懐かしい。
⑦嘘をつくと鼻が伸びるピノッキオの有名な弱点を逆手にとったクライマックスの工夫も上手い。
⑧『ナイトメア・アリー』にはガッカリさせられたが、本作は良かった。ややベタなラストにも泣かされたし。

もーさん