「斬新で美しい大人向けの「ピノッキオ」」ギレルモ・デル・トロのピノッキオ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
斬新で美しい大人向けの「ピノッキオ」
また「ピノッキオ」かとも思ったが、これまで観たどの「ピノッキオ」にもないオリジナリティーを感じることができた。
まずは、ゼペットの息子のカルロが亡くなる顛末がしっかりと描かれている。時代背景も、第1次世界大戦中のことであると明確に示される。
そこから、ゼペットがピノッキオを作った目的が、「死んだ息子を自ら作る」ことであるということも明らかになるし、ピノッキオにカルロのようになってもらいたいと願うゼペットと、自分は自分らしく生きたいと願うピノッキオとの確執も浮かび上がってくる。
そして、この映画の大きな特徴となっているのが、戦争とファシズムに対する明確な批判だろう。何よりも、ピノッキオが、ムッソリーニの目の前で、本人を揶揄するというシーンが出てきたことには驚いた。
ピノッキオの純粋無垢さが、あまりイライラしない程度であるのはいいし、嘘をつくと鼻が伸びるというギミックが、大魚からの脱出の手段として、ちゃんと活かされているのもいい。
そして、ラストでは、ゼペットがありのままのピノッキオを受け入れるのだが、それまで、同じように、父親(もしくはそれに類する存在)に愛されたいと願いながら、それが叶わなかった市長の息子とカーニバルの団長の猿のエピソードがあったために、この親子の和解は、より感動的である。
さらに、木の人形が本物の人間になるというクライマックスが、視覚的にではなく、「命のはかなさ」という観点から描かれているのも斬新だし、物語に深みを与えているように感じた。
ストップモーションのどこか温かみのある映像とともに、心に染みる「ピノッキオ」の物語だった。
コメントする