「公共性(public)としてのスタジオの存在価値」音響ハウス Melody-Go-Round h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)
公共性(public)としてのスタジオの存在価値
ひとつの新曲がスタジオ(音響ハウス)で制作される過程を通じて、intervieweeが音楽制作への情熱を語り合う音楽愛あふれるドキュメンタリー。
一般の人がSNSで不特定多数に自分の思いを発信できるように、音楽についても今はPCやDAWソフトがあれば簡単に音楽(DTM)が作れて発信できる時代。
供給過多かつ玉石混交の音楽業界で、プロフェッショナルが差別化しマネタイズするのはますます困難になっていくのは映画業界も出版業界も同じ。
あれだけのミュージシャンを集めて曲を作る(なんと贅沢な!)なんて、こんな映画制作の機会でもない限り今どき無理な話かもしれない。
日本のポップミュージックを牽引してきたミュージシャンや制作者たちが絶賛するスタジオ「音響ハウス」。音響設備は当然のことであろうが、ここに集まるミュージシャンや制作サイドの職人たちに吸い寄せられる「公共的空間(public space)」としての価値の面も大きかったのだろう。
2000年頃から新自由主義経済の名のもとに公共的な場や中間共同体を破壊してきた日本。
往年のビックアーティストのコメントからは「昔は良かった」との声が聞こえてきそうだが、彼らから懐古主義的な後ろ向きのコメントは一切ない。
今の時代にこそ音響ハウスは必要な場としてこれからを担うアーティストのためにも存在して欲しいとの思いが強く伝えってくる。
偶然の出会いから生まれるアイディアやコラボレーションがさらに新たなイノベーションを生むエコシステムとしてこれからもどんどん新しい作品を世に出していって欲しい。
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