「何処かでイレギュラーな感じがしながらと、骨太で真っ直ぐな将棋映画です。」AWAKE 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
何処かでイレギュラーな感じがしながらと、骨太で真っ直ぐな将棋映画です。
予告編を観てから、興味があった作品なので、タイミングが合ったので観賞しました。
観賞した「新宿武蔵野館」は超がついてもおかしくないぐらいの満員ぶり。
で、感想はと言うと、面白い!
緊迫感もあり、話がブレる事なく、ストレートに進んでいく。
それでいて、何処か爽快感もある作品です。
将棋棋士と言う職業は個人的には羽生善治棋士から始まって、最近では藤井聡太棋士の活躍に脚光が浴びている感じですが、日本の古典的な遊具でありながら、プロと言う職業があっても、正直どうやって金銭を稼いでいるかが割りと知られてない感じでまっこと謎な職業ですが、書道や相撲に通じる様な佇まいに威厳を感じます。
近年の棋士ブームに関わらず、以前よりプロを憧れる者は後をたたず、それでもプロになれる者はほんの僅かと狭き門には、知識を知らなくても、難しい職業だと思いますが、プロになれなかった者は山程居るんですよね。
「月下の棋士」や「ハチワンダイバー」と言った漫画や「泣き虫しょったんの奇跡」「八月のライオン」「聖の青春」と言った映画だったり、大阪の伝説の将棋棋士、坂田三吉をテーマに「王将」と言う歌があったりといろんな将棋に纏わる物がありますが、この作品はコンピュータと人間の対局を描いてますが本質は人と人、そして自分自身との戦いを描いているのでそういう意味では真っ直ぐな将棋作品です。
主人公の清田はプロ棋士になれなかった事からなかなか立ち直れなかったが、とある切っ掛けからコンピュータのAI将棋をプログラムする事に生き甲斐をみつけ、自らプログラムした「AWAKE」でプロ棋士で元同期だった浅川と対局すると言うのが大まかなあらすじ。
清田演じる吉沢亮さんや浅川役の若葉竜也さん、落合モトキさん、寛一郎と言った実力派若手俳優のキャスティングも良い。
個人的には磯野役の落合モトキさんが良い感じなんですよね♪
無敵の将棋プログラムAWAKEに絶対的な自信を持っていたが、とある打ち手をされるとハメ技の様なバグ的な要素が発生する訳ですが、既に提出されたプログラムの改良は認められず、その打ち筋は広く出回っている為、AWAKE=清田は絶体絶命になる。
ただ、プロとしての打ち筋ではない事から、浅川がその打ち筋をするかどうかで、浅川はハメ技の打ち筋をし、清田はその打ち筋に投了を宣言する。
様々なオチを考えてたので、このパターンにはちょっとビックリ。
でも、この解釈はプロとして浅川に恥をかかさないと清田の意図にも考えられたし、自身の発明したAWAKEがキチンと負ける姿を見たくなかったとも取れるけど、どちらかと言うと、対浅川との対局でプロのプライドをかなぐり捨てて、その手を選んだ浅川へのリスペクトと自身で過去に投了を発せられなかった清田の成長と取りました。
また、いずれコンピュータの進化は何時か人を凌駕する事を何処かで感じている清田のささやかな抵抗と考慮かなと思ったんですが、どうでしょうか?
どちらにしても、互いの全てを賭けて、静かに闘志を燃やした戦いはちょっと呆気なくも感じましたが、将棋の打ち合いに時間を掛けると物語のテンポが落ちるかと思うので、良い判断にも思います。
ラストが良いんですよね。将棋を遊戯として楽しむ事が出来ないプロ棋士と将棋に振り回された元棋士と言うしがらみを無しにしての良い締め方です。
難点があるとすると、テンポが良くてサクサク進む分、清田に比べて浅川の成長や苦悩と言った人間味の部分が少し薄いかな。
監督の山田篤宏さんはこの作品が商業作品デビューとの事ですが、かなり骨太な感じで直球に作品を撮られたのが物凄く印象深い。
また木下グループのキノフィルムズは最近意欲的かつ良い映画を連発してる感じ。
2015年のコンピュータと棋士との実在の対戦、電王戦をモチーフにしてますが、調べるとコンピュータを使った将棋の読み合いはもう半世紀以上前から行われているらしいんですが、コンピュータの性能は日進月歩な訳で、正直、人の読み合いの進化どころの騒ぎじゃあないんですよね。
そう考えるとコンピュータとの対戦なんて、分が無い感じですが、そこに挑む面白さが楽しめました♪
将棋の作品としては少しイレギュラーな感じがしながらも、作品としては真っ直ぐでどっしりと骨太な感じの良作ですので、未観の方で興味がありましたら、是非是非。
結構お勧めな作品です。
PS
今年はコロナの事もあり、4~5月はほぼ映画館は閉館し、その後もソーシャルディスタンスで席間隔を空けての営業。
ミニシアター系の映画館や制作会社もギリギリの状態。
また洋画の大作系も上映の延期や中止といろんな部分で向かい風が強かった訳ですが、作品としては良い物も多かったかなと思います。
個人的には2020年に劇場に足を運んで観賞した作品数は全部で110本。念願の100本超えと去年を16本も上回りました。
2本立て上映でない限り、基本的には映画館での観賞は1日1本と決めているので、ここまで行けるとはと言う感じです。
年明けからも観たい作品があるのですが、100本超えとかをそんなに気にせずに楽しんで観賞していきたいと思います。
皆様、良い映画ライフを♪
レモンブルーさん
はじめまして♪
こちらこそ、カキコ&共感有難うございます。
観た人によって、いろんな解釈があると思いますがそう言って頂けると嬉しいです♪
作品の質から爆発的にって訳ではありませんが、徐々にでも観る方が増えていけば嬉しいですね。
キノフィルムズは尖ってるけど、個人的には好みの作品が多いんですよね。
「人数の町」とか「一度も撃ってません」なんかも好きなんですよね。
キノフィルムズのオープニング、めっちゃ共感です!w
また、お暇がありましたら、覗きに来て下さいね♪
松王〇さん はじめまして。たくさんのレビューに共感をありがとうございますm(__)m。
電王戦の英一の心境と行動について全く同感です!私は上手く表現出来ませんでしたが、松王〇さんの解釈された通りだと思いました!
電王戦からラストシーンに向けてのシーン本当に良かったです!
そして、東京の映画館では満員だったそうで、! コロナ禍の中でも 評判を聞きつけて人が集まって来たということでしょうか?私が行った地方都市の映画館は初日でも十数名という感じで なんとポスターさえ貼りだされて無くて、(鬼滅とか三國志とか他のは有って)悲しかったです。でも…次第に上映館が増えて行くかもしれません😊
キノフィルムズ 「リバーズ・エッジ」や「猫は抱くもの」など ちょっとあまり大衆向けでは無さそうな ちょっと尖った?映画を配給してる(最近では「ミッドナイトスワン」など)なというイメージでした。なので「AWAKE」も小難しい(笑)映画かなと思ってましたが、凄く真っ直ぐな青春映画で面白かったですね! (キノフィルムズのオープニングがなんか好きです。)