アーニャは、きっと来るのレビュー・感想・評価
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なんだか雄大なんだけど、薄いなぁ
最初ユダヤ人護送用の貨車から父娘が逃亡し、普通の列車に娘を預けるまでは緊張感あった。
「戦場のピアニスト」同様ナチスでも温和な人物はいたのだ。殺戮が常ではないのだというのも良い。
ピレネー山脈の雄大な自然、村人の牧歌的な生活、移牧とともに成長する少年も良い。
ただ肝心の国境越えがよくわからない描き方だし、第二の主役とも言えるアーニャが本当に「どこへ行った?」のか
全く登場しない。最後の抱擁だけだ。
同じナチスでも最近の「キーパー」の方がデキが良かったと思うのは私だけかもしれないけどね。
#105 主人公の子が美少年
ポスターとか見ててっきりこの子がアーニャかと思ってたら男の子だったのね。
誰もドイツ軍に通報する人もなく、ユダヤ人の子供達を逃そうと一致団結するところに驚いた。
伍長は結局良い人だったのか?
心が洗われる良い作品です。
『異端の鳥』と合わせて観たい映画
最近、少年の目を通してホロコーストを描く映画が増えています。『ジョジョ・ラビット』、『異端の鳥』、そして本作です。
その中でも、本作と『異端の鳥』は、かなり対照的な作品だといえます。同じ時代(第2次世界大戦下)のヨーロッパの農村を舞台にしながら、『異端の鳥』は絶望の世界を、本作は希望の世界を描いています。個人的には、『異端の鳥』を観て荒んだ気持ちが、本作で癒されました(とはいえ、両方共に観て、よかったとも思っています)。
本作では、大人ではなく、少年を主人公にすることで、ドイツ人を絶対な悪として描きません。
前の大戦でドイツと戦った祖父、ドイツの収容所で強制労働をさせられた父は、はなからドイツ人は敵でした。一方で、子どもであるジョーは、娘を心配するユダヤ人のベンジャミンとも、空襲で娘を失ったドイツ人伍長とも、心を触れ合います。ちょっとした出来事ですが、この伍長との触れ合いが後の結果に、大きく影響したと、私は感じました。
ホロコーストの虐殺場面を直接描いた作品に比べると、衝撃の度合いは低いものの、戦争の不条理性を深く考えさせられた映画でした。クライマックスでの美しい山々の風景も含め、お勧めの映画です。
ちなみに、村人の会話が英語で話されていたことが残念だという意見があるようです。80年前のフランス南部ですので、村人の会話は、本来はオック語(プロヴァンス語)である可能性があります。「政治的にフランス語の方言」とされてきたオック語ですが、フランス語で代用すれば傷つく人たちもいると思います。そう考えると、私は、英語で代用することも、しょうがないかなと思いました。
フランスを舞台に英語劇とは・・・お約束ですね。
はっきり言って物足りない。単に原作を忠実になぞって映像化した風にしか見えない。しかもナチスをあそこまで善人面にしたてたのも違和感しか残らない。演者はそれぞれ個性があって良かっただけに残念な作品であった。
戦争で本当に悪いのは誰・・・・
第二次世界大戦のドイツモノで、ドイツがフランスを占拠して、管理と言うか監視と言うかされていたひとつの村で起きた事をその村の少年を視点に物語が展開していくお話。
しかし、結局、戦争って、誰が一体悪いんだろう・・・・
先日、中国の習近平が「日本はあの戦争で反省をして」と言っていたけど、しかし、日本人が本当に悪いのか、当時の日本人だって、ドイツ人だって、戦争をしたくない人は大勢いたと思うし、敵国の人で有っても、思いやりを持って接した人は沢山いたと思う。
本作品は、勿論、当時のドイツがフランスやユダヤの人達に与えた非道や苦痛を描いているのだけど、ドイツ側にも、非道や苦痛を与えていた人だけではない的な部分があり、この手の映画を見ていると、当時のドイツ人全員が非道で悪に見えてくるけど、実際、国の命令で行っていた事で、それに背けない人も大勢いたと思う。
本作品は、意外に、ドイツにも、人道的と言うか、悪人ばかりではないと言う視点で描かれていて、ある意味、戦争を知らない私たちには、本作品は、戦争で押している側、押されている側の両面の視点で考えさせてくれる私的には、ちょっと切ない気持ちになったな・・・
ドイツも日本も戦争に負けたので、一番の悪人として捉えられている面があるが、しかし本当に悪いのは一体誰なんだと、問いたくなる作品。
本作品、フランスの山の上にあるのどかな村が舞台なので、景色も雰囲気も大変によく、意外に脇に豪華なメンバーが揃っています。
ジャン・レノも年をとったね・・・おじいちゃん役か・・・・
私の感想が少し外れてしまいましたが、しかし、本当に良い映画でした。
ピレネー山脈の極秘計画
第二次世界大戦中、美しい自然が溢れる南フランスの片田舎。ユダヤ人の子供たちを安全なスペインへ逃がす計画を企てる男と出逢い、その計画に協力をする少年を描いた物語。
羊飼いの少年、ジョーはユダヤ人の男ベンジャミン、そしてひとりのナチス伍長と出逢い、それぞれと親しくなる。
どうにもうまくいかないベンジャミンの計画や、伍長に起こる悲劇と葛藤、戦地から帰ってきた父親とのやり取り等を挟みながら、村の人を巻き込んだ極秘計画がいよいよ実行される。
他の作品と比べ、ナチスの残虐性はそれ程描かれていない本作。しかし、相手が親切な伍長だからこそ、逆にニアミスの緊張感が沸々と…。
山小屋のシーン、ジョーの機転が功を奏したのか、或いは本当は伍長が…?
戦争を描いた作品だが、気が滅入るような描写はそれ程なく、適度にドキドキさせてくれるし、感動させられるし、ピレネー山脈の自然がまた美しい。
作戦遂行中のシーンは、大事なシーンなのに、非常に多くの羊が連なって山道を行く姿が可愛すぎてちょっと笑いそうになってしまった(笑)
全体的に観易くてとても面白い作品だった。
強いて言えば、ガッツリ感情移入させる為にはもう少しベンジャミンとジョーの仲が深まる描写が欲しかったのと、お父さんが味方になるまでにもう一悶着あっても良かったかな。
そして個人的には、このタイトルにするほどそんな重きが置かれていたかな…とも。
戦争とは、戦場で血を流すだけが闘いではなく、こんな片田舎の子供たちにも、彼らなりの闘いがあったこと、そして実際に彼のようなナチスはどのような思いを抱きながら戦争と向き合っていたのだろうか。
また、亡命のユダヤ人を売る市民もいれば、本作のように助ける市民もいたという事実について。
そんなことも考えさせてくれる作品だった。
若干子ども向けのナチス統治下の物語。
癒される山々の映像。あの終盤のシーンは『サウンド・オブ・ミュージック』さえ彷彿させてくれたし、目の保養には最適。1942年の戦争映画とはいえ、ナチスの残虐性はそんなに酷く描かれていないし、13歳の少年ジョーの回顧録のような作品でした。食料を略奪されたことに腹が立つ程度・・・まぁ、ラストには衝撃シーンもありましたが・・・
むしろ、『ジョジョ・ラビット』のように少年とナチ将校の交流みたいなシーンもあったし、親切なおじさん的な雰囲気のトーマス・クレッチマン。徐々にユダヤ人の子供たちを救うことに使命感を覚えていくジョーの成長物語。そんな中でも印象に残ったのが、序盤のクマとの遭遇シーンだったりします。
さらに気になったのは授業中に手を挙げるシーンでした。今でこそドイツではハイルを意味する指を揃えて挙げないようですが、舞台となっている当時の南フランスでも反ナチの表れなのか、人差し指一本を突き出す挙手だったのが驚き。多分、意図された演出だと思う。
アーニャはまだ来ないの??と、すっかり忘れてしまいがちですが、その意外な結末も運命のいたずらを感じて虚しい思いにさせられました。反ナチというより、民族の差別を撤廃しようという内容と、戦争がなければ民族の違いを越えられるようなメッセージもあった気がします。そして、ジャン・レノを見るとどうしてもドラえもんを思い出してしまうのも困ったものだ・・・
ナチス将校のパワハラ
ナチによる迫害。
それを背景とした逆境の中で発揮される人間性の気高さには、素直に感動します。
一方で、ナチに加担してしまう弱さや脆さ(弱い人間である私にはそれを〝人間の醜さ〟と断じることはとてもできません)を抱えた人たちは、この映画には出てきません。なので、後ろめたさに通ずるような〝重さ〟を殆ど感じることなく、全体的な印象としては牧歌的とも言える長閑さの中でのさまざまな葛藤についての物語として、目を背けることなく作品世界に入り込めます。
ナチを題材にした多くの映画に付きものの〝残忍さ〟や〝悲惨さ〟というバイアスを排除することで、戦争という極限状態ではない日常における人としてのあり方を問うことに成功していると感じました。
(余談)
前述したような〝人のあり方〟という視点で見ると、ナチの将校は、究極のパワハラです。伍長は別とした今までの多くの事例から。
処刑(会社でいえば、人事面での処遇やチーム内でのランク付け)のように生々しくて取り返しのつかないような近未来をちらつかせて人を脅しつける狡猾さ。
恐怖でおどおどしてる相手を見るのを楽しむ、という歪んだ嗜好。
収容所で実際に行われていることの実態をどこまで知っているかということとは関わりなく、地位や立場を守ったり誇示したりするという、なんともつまらない動機が人間をいかに〝人でなし〟にしてしまうことか、被害者側の心情を考えるととても重苦しく嫌な気持ちになります。
ベレー帽が欲しくなる映画。
今年は何故か観る映画、映画にナチが出てくる。ジョジョラビットに始まり、17才のウィーン、異端の鳥、そしてこのアーニャ。ジョー少年の成長が嬉しく、ラストにほっとさせられる内容。異端のがあまりに心が折れる内容なので、こちらは肩の力を抜いて観られます。美しい南仏の風景も楽しめました。戦時下でのヒューマンドラマ。ショー少年のベレー帽がとても似合っていて欲しく成りました。
飛翔…鷲に癒された
ピレネー山脈の雄大で美しき風景
雲海の様な羊の群れ…人間達が争う中を
国境なども意図わず悠々と大空を舞う鷲…
重なる様に奏でられる美しく壮大感ある音楽
その為…重苦しき時代背景でありながらもそれさえも感じずにむしろ清々さが心に広がった
村人が一丸となって挑む大救出作戦
サスペンス的な展開にドキドキし、主人公ジョーの家族の愛と絆に心潤いウルっとし
多要素が満載な素晴らしき幸作!光作!好作でございました!
渋さと重厚感MAXの祖父役、ジャン・レノの存在感は流石!
そして何よりもこの作品の完成度を上げた
透明感溢れるノア・シュナップ君に心、癒されました!
彼程、半ズボンが似合う少年はいない!😉
反戦の英雄として讃えたい
主役が数日前に鑑賞した映画「エイブのキッチンストーリー」と同じノア・シュナップだが、本作品は「エイブ・・」とは国も時代もまったく違っているので、抵抗なく鑑賞できた。ただ、フランス南部が舞台なのに話す言葉は英語というのが少し変な感じがしたが、時代劇が現代語で演じられるようなものだと納得することにした。
物語は長閑な村にナチスドイツ軍がやってきてユダヤ人を探して処刑しようとしている中、純朴な羊飼いの少年が隠れているユダヤ人と子どもたちを救おうとするドラマである。主人公ジョーを演じたノア・シュナップはやっぱり上手い。観客はジョーの不安と恐怖を共有し、その勇気ある行動にハラハラすることになる。
ドイツ軍の中には、戦争に疑問を持ちユダヤ人の弾圧はナチスによるマッチポンプであることをジョーに告白する将校もいて、ジョーは戦争の理不尽を少し理解する。戦時中の日本人がそうだったように、ドイツ人の中にも反戦思想の持ち主もいたはずだ。戦時中は国家主義から敵国と敵国民を同一視してしまうが、我々が日本人とスガ政権を同一視してほしくないのと同じくらい、どの国にも反体制的な人々はいるし、いたはずだ。
ライフルを墓地に隠す伏線は最後に回収される。障害者だったジョーの友だちは反戦の英雄として村の人々の記憶に残ったことだと思う。決してハッピーな結末ばかりではないが、それもリアリティだ。ナチスドイツという圧倒的な暴力を前にして屈することなく耐え抜いた村人たちと、勇敢に行動したジョーも、やはり反戦の英雄としてその生き方を讃えたいと思う。
日本でナチスドイツの役割を果たしたのは特別高等警察だ。精神の自由まで奪おうとした理不尽な暴力集団である。反戦の国民にできるのは表立って反対して殺されるか、面従腹背で生き延びるかだ。押し殺した怒りが戦後の復興のエネルギーになったのは間違いない。国家よりも個人の幸福が優先される世の中に漸くなったのだという時代だった。
しかし最近では再び個人よりも国家が優先されるような風潮が蔓延しつつある。トランプのアメリカ・ファーストがその一番手だ。アメリカ・ファーストは、アメリカンピープル・ファーストではないことに、当のアメリカ人が気づいていないフシがある。日本人も「美しい日本」が日本国民のことでないことに気づく必要がある。第二の関東軍、第二の特高を生まないためにはナショナリズムの陥穽に嵌まらないことだが、東京オリンピックを未だに期待している人々が多いのがかなり不安である。
【多くの人々の良心】
ユダヤ人をナチスから救うために手を差し伸べた人々の映画の物語としては、シンドラー、杉原千畝、ワルシャワ動物園の飼育員、映画「家へ帰ろう」のポーランド人の仕立て屋に続くものになるのだろうか。
シンドラー、杉原千畝は個人名も残り、本人が望んだか否かに関わらず、名前が後世に語り継がれる存在になるのだろう。
しかし、本当に多くのユダヤ人を匿ったり、救ったのは、名も無い個人…多くの人々、そして、その良心であったのだと思う。
この物語は、ピレネー山脈を超えてスペインにユダヤ人を逃した、フランス国境の人々の物語で、ナチスの中にも、ユダヤ人の収容所送りに葛藤を覚えるものがいたことなどを散りばめ、ナチスを単に憎悪の対象としないような描き方をしている。
昨今の敵味方を明確にして、憎悪を募らせる方法に変化が訪れているのだろうか。
コロナ禍で、ヨーロッパの民族主義的ポピュリズムは、後退しているように思える。
中国依存を強めようとしていた、イタリアの極右連立政権は、コロナ対応に疑問の残る中国との関係を見直さざるを得なくなった。
また、欧州連合の経済対策や大規模な復興基金、欧州中央銀行の金融緩和の方が、復興や景気回復には、信頼に足ることがコロナ禍で明らかになり、これらは、欧州各国の共通認識になりつつある。
コロナ禍を乗り越えるための解決策は、発展途上国も含めて感染者を減らすことだが、それにはワクチンの広い利用も含めて、国際協調は必須だ。
また、宗教対立による紛争や、中国やロシアなどの民族弾圧も見過ごさない国際的協調が広がることを祈りたい。
主人公の少年とフランス南部の山麓の景色は美しい。物語的には・・・
主人公の少年とピレネー山麓の景色は美しい。
物語の詰めは甘いというかなんというか、そもそも登場人物がいずれも英語喋っていて、住民と占領軍であるドイツ軍が普通に意思疎通するのはありえんでしょ。
感想は以下3点
・ドイツ軍を悪逆非道ではない普通の軍隊と描くのは珍しいですね。むしろ、伍長が優しすぎて不自然に思えるくらい。
・小さな子供たちがどうやって隠れ家まで来たんだろうか・・
・「アーニャは、きっと来る」という日本語題名は、一見映画の中身を表しているようですが、映画の本質的な部分とは関係ないような気がします
(ちなみにアーニャは何才の設定なんだろうか・・・。最後、結構大人びていたように見えたが気のせいか・・)
史実ベースの物語。今週(11/27~)ではお勧めの一本。
今年52本目。
特集・公式サイト通り、ナチス政権のドイツが舞台です。この手の映画は、
1.ヒトラーの賞賛をたたえ、かつ肯定的に取り上げる
(本国ではタブー扱い。日本でも表現の自由はあるが事実上控えられる)
2.a ヒトラーの賞賛はたたえず、ユダヤ人迫害にスポットをあてる
2.b ヒトラーの賞賛はたたえず、ユダヤ人の迫害以外にスポットを当てる
…というもので、2.aがテーマでありつつ、1の話題も入ってきます。
場所はスペインと国境を山脈で接する南フランス。ここからわかる通り、当時のドイツ(分裂後の東西ドイツを別にせず、今のドイツとほぼ同一に扱う。以下も同じ)の兵力を考えても、
1.ヒトラーや側近の執拗なまでのユダヤ人迫害思想は共通テーマではあったが、いわゆる「赤紙招集」で兵士になった一般兵にまで、統一教育は行われていなかったと思われ、また個人の思想の統一も及ばなかった(日本の思想良心の自由に似ますね)
2.そもそも、ドイツからみて南フランスの一つの村という、かなり離れた場所に派遣されたドイツ兵集団の中には(いわゆる「お偉いさん」もそこにはいなかった模様)、「戦争には勝てばいい」けど、あまり現地(ここでは、南フランスの小さな村の住人たち)とモメるのは避けたかった
…という考え方があったと推測され、特に2の事情もあったのか、「もうどうでもいいからモメごとも起こしたくもないし、さっさと戦争も終わればよかったけど、あまりにも仲良くしすぎると上から怒られかねないから、形式的には夜間禁止令等は出しても村人と仲良くもしていたし、形式的にはユダヤ人捜索などは行っていたが、形式的なもでしかなかった」ということがうかがわれます(作品参照)。
このような事情もあり、形式的には村人に対して「かくまっていないか?」と確認をしていたり、形式的に探したりはしていますが、その様態も悪質だったり徹底的になものではなく(ご存知の通り、厳しい場所ではもうそれは熾烈を極めるほどに調べつくされていた)、「1人2人"検挙"してもいいこともないし(どうせ報奨金なんて大したものも出ないんでしょうね)、もう戦争が終わるのを待っていた」(換言すれば、南フランスという「辺鄙な」場所に送られたドイツ軍だからこそ、このあたり「どうでもよかった」「ユダヤ人ではないが、南フランスの住人をいざござを避ける」という事情はあったと推測できる)のでしょう。
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(※) 日本も第二次世界大戦がはじまると、韓国/北朝鮮(便宜上、今の名称)、台湾、中国…に進出しますが、全員が全員残虐行為に走っていたわけではなく、中には中立的立場に接したりした人も多かったようで(下手に抑圧的態度に出て独立活動や襲撃になるなら、いわば「赤紙招集」された一般兵士の中にはもう、とりあえず現地にはいったけど「別に敵意もないからさっさと戦争終わってほしい」と思っていた人もいたと考えるのは当然の話であり、それはここでも該当するでしょう。
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本件はそのような事情があったと推測され、最終的には「史実に着眼点を得た」という史実ネタという映画ですが、さしたる犠牲もなく、日本の高校世界史等でもまずもって取り上げられることもない(大学でドイツ史でも選択しない限り出てこない?)史実を掘り出して映画にした、という点は素晴らしいと思えました。
減点要素は下記の0.2ですが、大きな傷はないと思うので、4.8で5.0まで切り上げています。
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減点0.3:ドイツ兵が南フランスの村で占拠を始めますが、そこで話されているのは英語です。同様に南フランスの村民が話しているのも英語です(ドイツ語でもフランス語でもない)。可能性としては否定はできませんが、かなり高度な語彙も出るので、おそらく史実通りではなく、ドイツ語・フランス語を英語に「吸収」したのだと思います。
それはそれで理解できるのですが、ドイツ兵はまだしも南フランスの村民が英語を流ちょうに話していたと考えるのは難しく、おそらくフランス語でのコミュニケーションであったと強く推認されます。その点は確固たる証拠は取れませんでしたが、常識的にみればそうであり、そう取るのであれば、事実通りに「フランス語での会話」にして、字幕を《○○○》と英語ベースと日本語ベースに二重に翻訳するという「原則」にならってほしかったと思われる点です。
0.1点増:これは映画とはあまり無関係ですが、映画の予告編でも「美しいピレネー山脈の描写…」といった部分は強く感じました。山・山岳の大自然の描写ですね。もっとも本映画はそれがテーマではない(ただし、ピレネー山脈を越えてスペインに逃れるというテーマはある)ものの、そこに美しさはやはりCGだけではなく実写を元にかなり細かく作ったということであり、そこは高く評価しました。
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ユダヤ人迫害のテーマだが。
ユダヤ人迫害の映画はいろんなタイプがあるが、南仏の出来事のものは初めて。
でも単なる逃げるドラマではなく、少年とドイツ人将校の交流をも描く。ものすごく感動したわけではないが、ゆるりと心を動かす映画。
ノア君と美しいピレネー山脈
今週2本目のノア君主演の映画。ノア君は、やっぱり目の動きがかわいいね。小動物みたい。
この作品は、ナチス・ドイツの極悪非道ぶりが強調される映画とは一線を画している。ノア君演じる主人公のジョーは、ユダヤ人であるベンジャミンと出会うだけでなく、村に進駐してきたナチス・ドイツ軍の伍長とも図らずも親しくなってしまう。頭の中では、敵国である軍人と仲良くなってはいけないと思いつつも、次第に打ち解けていく。伍長は、積極的な平和主義者でもなく、ヒットラーに絶対的な忠誠を誓うような軍人でもない。普通の人間ができうる限りのヒューマニズムを体現することがこの作品のテーマかもしれない。
ユダヤ人であるベンジャミンは、ジョーの「なぜユダヤ人は嫌われるのか」という質問に対して、「ナイル川の氾濫を鎮めるには、生贄が必要なんだ。私は、迫害する側を哀れむ(pity)」と答える。迫害を受ける身でありながらも、人間は時として悪魔的な行動をとってしまうことをジョーに伝える。憎しみを煽ることで自分への支持を強化しようとする指導者が、現代でも存在するのだからこの言葉は重い。
ピレネー越えのシーンは、絶景が続きとても美しい。
雄大な景色と戦争と。
ユダヤ人の山越え脱出を助けたフランス片田舎の村人たちのお話。羊飼いの少年が主人公。淡々と話が進むから逃亡の緊張感はないけれどどうにもならない運命の流れはしっかり感じられるかも。ヒトラー一辺倒ではない伍長の存在が拠り所。
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