劇場公開日 2020年11月27日

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「子供から大人まで親しみやすい語り口が魅力」アーニャは、きっと来る 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5子供から大人まで親しみやすい語り口が魅力

2020年11月28日
PCから投稿

このところ、ナチスドイツやユダヤ人を描いた映画となると、リアリティを追求したシビアな物が多かったが、一方の本作はモーパーゴの同名小説をベースにしていることもあり、各々のキャラクターであったり、登場人物が心を一つに何かをやり遂げようとする姿にこそ中心を据えているようにも思える。ノア・シュナップが演じる羊飼いの、ユダヤ人少女たちを逃がす手伝いをしながら徐々に使命感を高ならせていく姿が非常に健気で、透明感溢れる佇まいや瞳に惹きつけられてやまない。トーマス・クレッチマン演じるナチス下士官もまた、画一的ではないドイツ兵を内面深く演じる。喪失感を重ね合わせた彼と少年が束の間の擬似父子のように思えるのも、おそらくこの場所が、過酷な現実を忘れさせる圧倒的自然の中だからこそ。ある意味、性善説が強調された物語であるし、親子そろって味わって、この時代のことや主人公の気持ちについて理解を深めることのできる作品だ。

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牛津厚信