劇場公開日 2020年11月27日

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「ノア君と美しいピレネー山脈」アーニャは、きっと来る bionさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ノア君と美しいピレネー山脈

2020年11月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 今週2本目のノア君主演の映画。ノア君は、やっぱり目の動きがかわいいね。小動物みたい。

 この作品は、ナチス・ドイツの極悪非道ぶりが強調される映画とは一線を画している。ノア君演じる主人公のジョーは、ユダヤ人であるベンジャミンと出会うだけでなく、村に進駐してきたナチス・ドイツ軍の伍長とも図らずも親しくなってしまう。頭の中では、敵国である軍人と仲良くなってはいけないと思いつつも、次第に打ち解けていく。伍長は、積極的な平和主義者でもなく、ヒットラーに絶対的な忠誠を誓うような軍人でもない。普通の人間ができうる限りのヒューマニズムを体現することがこの作品のテーマかもしれない。

 ユダヤ人であるベンジャミンは、ジョーの「なぜユダヤ人は嫌われるのか」という質問に対して、「ナイル川の氾濫を鎮めるには、生贄が必要なんだ。私は、迫害する側を哀れむ(pity)」と答える。迫害を受ける身でありながらも、人間は時として悪魔的な行動をとってしまうことをジョーに伝える。憎しみを煽ることで自分への支持を強化しようとする指導者が、現代でも存在するのだからこの言葉は重い。

 ピレネー越えのシーンは、絶景が続きとても美しい。

bion
グレシャムの法則さんのコメント
2020年11月29日

伍長のような人も実際いたのだと思いますが、見て見ぬ振りをして逃がしてあげたナチ側の人間とユダヤ人との交流、みたいな話は、私は知らないし、あったとしても、そこに触れることは許されない禁忌(タブー)のようなもので、作品にできないのかもしれないですね。

グレシャムの法則