劇場公開日 2021年5月1日

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「日本の新しい現実を見つめる作品」海辺の彼女たち 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0日本の新しい現実を見つめる作品

2021年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

技能実習生制度にかんする報道は多くなされ、その人権侵害的な実態が多く知られるところとなっている。だが、なかなか、この問題に対する関心が高まらない。日本人は仲間に優しく、そうでない者に冷たい傾向がある。この映画に描かれた3人のベトナム人女性は、多くの日本人にとってまだ仲間ではないということなんだろう。
だからこそ、この映画は大変に価値がある。すでに彼女たちのような存在なくしては仕事が回らない場所が日本にはある。なんとか、日本にとどまり、故郷の家族に報いたいと過酷な生活を頑張る人たちがいる。異国で働くというのはとても大変なことだ。当たり前の権利が当たり前でなくなる、例えば、この映画にも出てくるように病院にかかるのも一苦労なのだ。1人のベトナム人女性の妊娠がプロットの中心を占めるのだが、心電図を見た彼女が漏らす「小さい」の一言に心が動かされる。
すでに、日本は多くの移民が流入する国だ。彼女たちもこの国の一員なのだと認めねば、社会を前に進めていくことはできない。この映画は、日本の新しい現実を見つめている。

杉本穂高