劇場公開日 2021年5月1日

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「負の連鎖と悲しみを生んでいるのは日本人」海辺の彼女たち バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0負の連鎖と悲しみを生んでいるのは日本人

2021年6月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

藤元監督の演出は本当に見事です。
まさに今起きている瞬間に寄り添っている
ような映像。が故に、目に入ることものが
ストレートに心に刺さります。
ただ横で撮っているわけではないのに、
そう見せるって・・・恐ろしい演出です。

海外からの技能実習生の酷使、都合よく
こき使う話は聞いたことがあります。
本作は酷使された職場から逃げた技能実習生の
その後の話です。実際の被害者の話を元に
作り上げた物語ですが藤元監督演出が故に、
「どこかで起きている事実」として、
技能実習生当人達の心情も含め
リアリティ120%で我々に届きます。

本作は「あまり知られていない事実」を
虚飾なしに「多くの人に伝えられる」ために
作られたと思っています。
この奴隷のような悲しい日々を送っている
彼女達を作ったのは国でも法律でも制度
でもないです。実習生を受け入れ、弱者を
食い物にした一般人です。
逃がし屋で稼いでいるのも一般人。
証明書偽造で稼いでいるのも一般人。

我々の生活のすぐ横で悲劇が起きているかも
しれないということを知る必要があるのです。
本作がもっと有名になって全国でいや、全世界で
上映されて欲しいです。日本の多くの方に知って
欲しいです。その結果、多くの方が近所の
技能実習生を受け入れ元を注目するようになれば
良いと思います。
全世界の多くの方に知ってほしいです。
日本への実習滞在について二の足を踏むように
なれば良いと思います。
いい気になっている日本人はそうでもしなくちゃ
気づけないのでは?と思います。

彼女達を生んだのは一般人です。
彼女達が負の連鎖から逃れられない、
逃れる術を持てないのは準備できていない
役所、行政側に問題があるのでしょう。
性善説でしか運用整備をしていないのではないか?
施策の振り返りや改善をせずやりっぱなし
なのではないか?
いや、そもそも搾取する連中がなぜ生まれるのか?
(人材斡旋という人身売買にも見えます)

今発生している事実は本作や「僕の帰る場所」で
藤元監督は十分語っていただけたので、今後は
この「なぜ?」を描いて欲しいです。
そして、我が国の海外受け入れの問題点を
提示して欲しいと願います。

観て知るべき内容の秀作です。

バリカタ