劇場公開日 2021年5月1日

「日本で暮らす外国人の生きづらさを伝える藤元明緒監督の第2作。バトンをつなげるのは観客一人一人」海辺の彼女たち 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

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4.5日本で暮らす外国人の生きづらさを伝える藤元明緒監督の第2作。バトンをつなげるのは観客一人一人

2021年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

前作「僕の帰る場所」と同様、藤元明緒監督の長編第2作も日本で暮らす外国人の生きづらさを描いている。本作製作の発端は、藤元監督がミャンマー人の妻と一緒に運営していたFacebookページを通じて、ミャンマー人技能実習生の女性からSOSのメッセージを受け取ったこと。実習先で不当に扱われ逃げたいと書いてきた女性とのやり取りや、自身の妻が日本で体験した差別や不安、そして近年は技能実習生の半数を占めるというベトナム人が多く失踪している現状などに基づいて脚本を書いたという。

フォン、アン、ニューの3人はベトナムから来た技能実習生。3カ月働いた職場では土日も休みなく1日15時間働きづめだが残業代も支払われず、ある夜逃げ出して青森の港町にたどり着く。そこでブローカーから漁港での仕事と寝床を世話してもらう。故郷の家族に仕送りをするため新たな環境で懸命に働く3人だったが、やがてフォンが体調を崩してしまう。

藤元監督は冒頭、技能実習生が劣悪な条件で過酷な労働を強いられ、失踪~不法就労という苦渋の選択をするまでを前提として示す。外国人受け入れをめぐる問題への視野を広げてくれる序盤だが、映画の主眼はそこではない。家族から遠く離れた異国で心細い思いを抱えながら働き暮らす彼女たちの支え合う姿や、不自由な選択肢の中から決断するしかないフォンの孤独な“前進”へと、物語はシフトしていく。大きな社会の問題を客観的に眺めるのではなく、困難な状況にある当事者として、あるいはそばにいる仲間として、この物語を受け止めることが促されているように思う。

本作は鑑賞して完結する映画ではない。日本に暮らす観客ならなおさらだ。とはいえ、なにも社会の変革や制度の改善のために行動を起こせなどと言うつもりはない。自分が思ったこと感じたことを、たとえば映画.comのレビュー欄でもSNSでもいい、誰かに伝える。そうしたささやかな想いのバトンがつながり広がっていくことで、明日の社会が今日より良くなっていくのだと信じたい。

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高森 郁哉
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