「〝旅〟と捉えるか、〝孤独〟と捉えるか」ノマドランド shi-naさんの映画レビュー(感想・評価)
〝旅〟と捉えるか、〝孤独〟と捉えるか
季節労働をしながらキャンピングカーで生活をするファーンと、往く先々で出会うノマドたちとの心の交流を描く実話を基にした作品。
ファーンはどんな仕事もそつなくこなし、人の輪に溶け込むことも、積極的に周りに声をかけることができる良い人柄でもある。
心配してくれる友人や手を差し伸べてくれる姉もいる。
誰からも好かれる大きな要素がありながらも〝普通の人生〟を選ばないファーン。
友人の子供からはホームレスと見なされ、姉夫婦(夫はファーンの友人)たちからは自由な人と好奇の目で見られて理解されない。
実情は周りの見方とは異なり、自ら苦労を選んで旅をする(生きる)ファーンの姿にとても惹きつけられました。
亡き夫をいつまでも想う姿は、ファーンにとって夫だけが心の拠り所だったのだろうと…。
人間は弱いと自覚している。だからこそ、彼女はノマドという生き方を選んだのだと思いました。
旅の途中、ノマド仲間から好意を寄せられたファーン。
ファーンもまた徐々に彼に惹かれつつあった。
彼は息子に帰るように促され、親子をやり直すためにノマド生活から降りる決意をする。
道中、ファーンは彼を訪ね「一緒にいたい、此処で暮らそう」と思いを告げられる。
親子の絆を取り戻した彼の姿を見て、自分の居場所は此処ではないと…ファーンは別れも告げずに去ってしまう。
ノマドたちはさよならは言わない。
いつか必ず会えると知っているからだ。
ノマドたちは皆、悲しみを抱えながら自分らしさを大切にしている。
亡き夫との長年住み慣れた場所を訪ね、過去から立ち直り前を向くファーン。
最後は、ノマドという生き方に誇りを持って生きる力強いファーンの姿がありました。
年を重ねて自身がファーンくらいの年齢になった時に、人生の答え合わせのように、その時の目線でこの映画を観返したい。
壮年はまだまだ未熟、そう思わせられた作品でした。