「自然の美しさや解放感はあまり感じられなかった 年寄りにはつらい映画」ノマドランド カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
自然の美しさや解放感はあまり感じられなかった 年寄りにはつらい映画
ファーンとデイブと本物の車上生活者が主なキャスト。若い女性の原作者に若い中国人女性の監督。
爽やかな青空のシーンや朝日のシーンはほとんどなかった。お湯を沸かして、コーヒーを作るぐらいで、バーベキューなど旨そうな料理の場面もなし。憧れのアメリカ横断放浪生活といったノリは一切ない。
荒涼とした風景シーンが多く、低い雲が大地を覆う暗めのシーンが多かった。さびしい夕暮れから夜の場面が多い。
彼女の心証風景をわざと表していたのかと思う。立派な大きいキャンピングカーは余裕がある趣味で旅行している人たちの車であろう。
夫とともに慣れ親しんだネバダ州エンパイヤ。レンタル倉庫の中から、夫の遺品と思われるジャンパーと父親が結婚祝いにくれたアンティークの皿を選んで狭いRV車に積んだファーン。61歳の設定(2度もオスカーに輝いた フランシス・マクドーマンドは今年65歳)。
会社の倒産。社宅も失い、夫も病死してしまい、子供もいない。好んで放浪の路上生活を選んだ訳ではないと思う。転々と季節労働をしながら、同じように車上生活をする仲間がいるが、ほとんどが高齢者。ファーンと違って、デイブには帰れる家があった。孫まで出来た。デイブの孫を抱っこするファーンの慣れない感じと不安な表情。デイブの申し出にも、気持ちが揺らぐ様子はなし。親切のつもりだったが、大事な皿を割ってしまったデイブをずっと恨んでいるわけではないと思う。それよりも、彼女には譲れない大切な自分の生き方があるのだ。しかし、相当の意地と覚悟がなければ、やっていけない過酷な生活である。
車の故障。
高い修理代。23,000ドルだった??
姉の家に行き、お金を借してもらう。姉の夫は皮肉なことに不動産業で立派な邸宅。姉の方がうんと若々しい。ファーンは煙草🚬も吸うけど、それにしても。姉妹のあいだには積年のわだかまりがあるのだろう。どちらも、同居は無理といった様子。
一番印象深いシーンは古いスライド写真をコンパクトな携帯プロジェクターで、暗い車の中でひとりで見るシーン。幼い頃の彼女と父親が写っていた。たぶん、これが、一番大切なものなのだろう。印画紙の写真ではなくてスライドなのは、お父さんは写真が趣味で、彼の大切な遺品なのだと思う。暗い狭い車内でひとりでみると切なさが倍増しそう。
また、どこかでと言って、さよならとは言わないのは、言いたくないし、言われたくないのだ。
なぜなら、車中での孤独死の可能性が誰もがあるから。
この杯を受けとくれ どうかなみなみ注がせておくれ 花に嵐の例えもあるさ さよならだけが人生さ なんてカッコつけたこと言ってられない現実。
広大な荒野が広がるアメリカならではのノマド生活。日本ではなかなか難しいだろうけど、凍死するような気候ではないのは有利かもしれないが。
バッファローの場面はほんのちょっぴり。少なくなっていて、絶滅危惧種。
小林旭の昔の映画の主題歌 「流浪の唄」を思い出した。
🎵 流れながれて 落ち行く先は
知らぬ他国よ 見知らぬ土地よ いずこの土地にさすらい行きて いずこの土地にこの身を果てん
最後、レンタル倉庫を解約し、なかのものはすべて破棄処分したファーン。この旅を続ける覚悟を新たにしたのだと思う。強い。ファーンの社宅の裏は砂漠が広がっていたような。1930年の大砂嵐、ホーボー(HOBO)を連想させる。Woody Guthrie の アルバム Dust bowl ballads を出そうかな。どこしまったかな😵
アマゾン、アメリカ合衆国に法人税、払ってないんですか?パナマとかどっかに本社があるんですか?許せない!大した税金でなくても、私、払ってます!領収書は人間的より偉いのか!と税務署で学習しました。それ以降、確定申告欠かさずして、還付されることもあればこちらが払うこともありですが、確定申告にはいつも燃えます!
「自然の美しさ(や解放感)はあまり感じられなかった」!私もまさに同感、共感の嵐なんです!なぜなんだろう❓️と考えて、レビューに何か書き加えましたが、ドツボにはまってしまいました…。
デイブに割られてしまい、接着剤で直した花柄のお皿は、ファーンが父親からプレゼントされたものでしたよね。母親でなく、父親を懐かしがる彼女にとても共感を覚えました。