劇場公開日 2021年3月26日

「【”又、どこかで会おう・・” 現代の遊牧民達の”個”を大切に生きる姿を、雄大な自然を背景にドキュメンタリータッチで描く作品。現代アメリカが抱える諸問題もサラリと盛り込んだ社会派作品でもある。】」ノマドランド NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【”又、どこかで会おう・・” 現代の遊牧民達の”個”を大切に生きる姿を、雄大な自然を背景にドキュメンタリータッチで描く作品。現代アメリカが抱える諸問題もサラリと盛り込んだ社会派作品でもある。】

2021年3月26日
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鑑賞方法:映画館

知的

難しい

幸せ

ー エンドロールをよく観ていると、出演者の7割程度が、ノマドの生き方を選択した、本人である。誰が俳優で、誰がノマドかの境は、今作では薄い。それ程、ノマド達の表情が豊かなのである・・。
 その中で、屹立した存在感を保つ女優フランシス・マクドーマンドの凄さを再認識する。ー

■感想 <Caution! 少しだけ内容に触れています。>

 ・ファーンは、夫が勤めていた企業が破綻し、町自体が無くなってしまい、住み慣れたネバダ州の家を失い・・、夫を失い・・。
 そして、季節労働者として、アマゾンの物流センターで定期的に働き、契約が切れると、愛車ヴァンガード(先駆者)と名付けた亡き夫と作り上げた拘りの古きヴァンで、放浪の旅に出る。旅先でも、キャンプ場の係や、ハンバーガーチェーンの店員として働く生き方を選択している。

◆企業城下町の終焉はいつの世にもある。永遠に栄える町はないのである。
 現代アメリカの非正規雇用率が高いのは周知の事実。アマゾンでも同様。単純労働者は基本的に非正規雇用者である。それにしても、アマゾン、良くぞ物流センター内の撮影を許可したなあ・・。単調な作業をこなす人々の姿。
 アマゾンは今作では、”物質主義の象徴”として描かれている・・。

 ・ノマド達の集まりRTR(Rubber Tramp Rendezvous)での、物々交換のシーンや、参加者の殆どが高年齢者である事に、驚く。
 60歳を超えているフランシス・マクドーマンドが、若く見えるのである。
 彼らは、お互いに助け合いつつも、”個”を重視し、孤独に向き合いながらも、生きている事が分かる、幾つかのシーンが印象的である。

 ・孫が出来、ノマドから定住生活に戻った老人の家の感謝祭にファーンが誘われるシーン。一緒に暮らさないかと言う老人の言葉に、無言を貫くファーンの姿。

 ・”ホームレスではない、ハウスレス。”と言うファーンの言葉。
 自らの生き方への覚悟と、誇りを感じる台詞である。

 ◆安寧だけれど縛られた定住生活か、自由だが、様々な不自由、リスクと隣り合わせの生活か・・・。究極の選択であろう・・。それは、彼女の妹との会話でも、表現されている。ー

 ・そんな、ノマド達の姿の背景には雄大なアメリカ西部の風景が常に映されている。ファーン自身も、全裸で山間地を流れる小川に自然に身を委ねる・・。
  広大な自然は、人間の営みを時に厳しく、時に優しく無言で見守っているようである。

<ラスト、愛車ヴァンガード(先駆者)を、広大な山脈に向かう荒野の一本道を走らせるシーンが
 ”この生き方で、私は亡き夫と共に、生きる。”
 と言うファーンの想いを象徴している。

 現代アメリカが抱える様々な問題を、サラリと描きつつ、”尊厳ある生き方とは何であるか”という深い命題を観る側に問いかけてくる、ドキュメンタリータッチの作品である。>

■2021年3月28日 レビューの誤謬をご指摘頂き、一部修正しました。ご指摘、有難うございました。

■追記1
・今作品の風合いが気に入った方はクロエ・ジャオ監督の前作「ザ・ライダー」も、是非お勧めしたい。

■追記2<2021.4.27>
・今作、鑑賞時は発売未定となっていたパンフレットが、
「SEARCHLHIGT PICTURES MAGAZIN vol18」として発売された事を知り、会社帰りに購入。
 このマガジンが取り上げる作品は、ほぼ秀作である。
 特に、クロエ・ジャオ監督のインタビューは必読であろう。

NOBU
アンディぴっとさんのコメント
2021年12月17日

おはようございます☔️
この映画を観ると、人の幸せってなんだろう、て考えさせられます。まあ人によってそれぞれあるんでしょうが。
生きるためには働くこと。人との繋がりは大切。楽しむこと。
改めて、この映画が気づかせてくれたかな。
さあ、今日もしっかり働きましょう💪🏻

アンディぴっと
ゆり。さんのコメント
2021年5月13日

NOBU様、スリービルボードへのコメントありがとうございました。フランシス・マクドーマンドの演技は素晴らしかったですね。あちらでは過激な行動が多かったですが、花の世話をする場面は印象的でした。本作を低評価する方の中に、ドキュメンタリーの中にマクドーマンドが入り込んでいるだけだから、という意見がありますが、彼女のセリフのない時の演技を良く見て、と言いたいです。一人でいるシーンをずーっと見ていられる希少な俳優さんです。

ゆり。
レモンブルーさんのコメント
2021年5月12日

すみません。途中まで書いて変なものを送ってしまいました。最近NOBUさんのレビューにコメントしたのは『八日目の蝉』だったと思います。

レモンブルー
レモンブルーさんのコメント
2021年5月12日

NOBUさん 「あん」への共感と コメントをありがとうございますm(__)m。
しかし、勘違いされてると思います。私は「ノマドランド」を観てはおりません。ので、どなたかと。私が最近 NOBUxbk弱々、

レモンブルー
pipiさんのコメント
2021年4月15日

うふふ。いえいえ、まったく「山をやる」とは言えないレベルですので、NOBUさんの足元どころか遠く何百里も及びませんw
ロープワークとか垂直下降とかが必要なとこは登れません。

実は先にエベレスト3Dのレビューを拝読してまして、岳人を愛読されていたとの事、なるほど〜と思っておりました。
今回、お花摘みを出したのもNOBUさんがきっと反応して下さると期待してました(テヘペロ)

私の周囲には真の山屋が結構おりまして、その影響もあり、息子にはクライミングをやらせたいと思って、3歳からは毎夏、家族で2000m峰登山。(と言っても黒姫山レベルです。技能不要^^;)
6歳からは優れた師匠をつけて、岩をやらせてたんです〜。ただ、関東から関西へ引っ越したのもあって息子は辞めてしまったんですけどね、勿体ない〜!

常宿は岩の関係もあって小川山。
(私は岩、登れません。美味しいキャンプ飯担当w)
平地の高規格組からは遠く離れた木立だらけの山中・斜面のサイトに天幕を張ります。
1泊、2泊の人が大半の中、子連れで1週間も2週間もいるものだから「その道の達人」的な先輩諸氏も好意的にして下さり。
聞けば、夏はひと月以上、野営で暮らしているとか。皆さん、結構高齢でしたよ?リタイア組、往年のワンゲル組なのでしょうね。だからノマドランド観た時は彼らがめっちゃ重なりました。

でも、最近は著しい体力低下につき、コテージやバンガローなんつーヤツも悪くはないな?と思い始めている軟弱者です。
岐阜以西〜広島、四国辺りの野営地模索中。

大学は京都じゃないです〜。関東です。山小説は「神々の山嶺」くらいで(獏さん、好きなんです。)まともな山岳小説は未読です。

好きな車はオンロード。(以前はサーキット走行もしてました。草レースですけど)
車高低い車の腹を打たんように、悪路を慎重に走行するのは得意です(笑)(そんな車で、山に行くな!って?w)
最近はオトナになったので、ジェットバッグ積んだクロスポロでの山行が多いです。泊まらずに峠を楽しむだけの時にはラテンの車です。

とゆーわけで、ただの料理好きキャンパーですね、これでは。
NOBUさんみたいに、本格的な登山をなさる方は非常に尊敬します!

長文、大変失礼致しました〜。

pipi
masamiさんのコメント
2021年4月13日

NOBU様コメントありがとうございます😸
本当にドキュメンタリーのような映画でした。多分、監督は膨大にカメラを回したのかな・・・と思います。フランシス・マクドーマンドの女優魂は凄いです。

masami
亞光速さんのコメント
2021年3月28日

スワンキーはツバメの思い出を語っていた老女ですよ。イケメン老人は役者さんのようです

亞光速
グレシャムの法則さんのコメント
2021年3月27日

アマゾン…あまりに巨大で独占的なGAFAとして、攻撃対象になることも増えてきたので、労働者側であることをアピールする狙いもあるのかもしれませんね。

グレシャムの法則
talismanさんのコメント
2021年3月26日

企業が破綻すると、街も破綻!これが資本主義なのかな。見て良かった映画です。

talisman