「正しくない正義」アイダよ、何処へ? 機動戦士・チャングムさんの映画レビュー(感想・評価)
正しくない正義
恐怖を覚えたのは、ラスト。再び教鞭を執るアイダ。未来を生きる子ども達に、何を教えるの?。瞬きひとつしない眼差しの向こうに、何を見ているの?。そして、このシーンを届けた監督さんの思いは、何処にあるの?。負の連鎖を止める術はある?。これを受け取った私達は…?。
しかし、アイダ役の女優さん、素敵ですね。家族のために交渉する時は、仁王様みたいな顔。ラストで子ども達を見つめる時は、凪いだ海のように穏やか。でも、穏やか過ぎて目が怖い。そんな名優さん、実はセルビア系の人。お陰で、セルビアの人から総攻撃されたとか。この事実だけでも、宗教とか民族といったカテゴライズが、ヒトの進化の足を引っ張ることが見えてきますね。
「神々と男たち」で、セルビア人が、イスラムの戦士に、無慈悲に殺害されるシーンがあります。これだけ観ちゃうと、ムスリムって、三度の飯より聖戦が好きなのかしらと思えちゃうんですけど、本作を観ると、真逆に見えるから不思議です。「希望の街角」で、主人公の恋人が、急速にイスラムに傾倒するシーンも、本作に起因するようですね。元々、解体前のユーゴ連邦は、多民族、多宗教で仲良く暮らしていたそうですが…。この辺り興味のある方は、「最愛の大地」をどうぞ。
結局、暴力こそ発言力。軍事力こそ、実効支配力。力なき正義は、屁の突っ張りにもならないという現実に、打ちのめされた私です。「沈黙の艦隊」ではありませんが、国連が、核の使用も辞さない超国家軍事組織なら、戦争は無くなるの?。それはそれで、完璧な独裁社会ですけど。
アイダよ、何処へ?。
そして、世界は、何処へ?。
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