「なかなかに難しい内容だけど、今だからこそ。」親愛なる同志たちへ yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
なかなかに難しい内容だけど、今だからこそ。
今年103本目(合計376本目/今月(2022年4月度)13本目)。
リアルではNHKなどが報じているウクライナ侵攻ですが、私たち一般人は通常、ウクライナ等に行くこともなければ、まして今問題視されているロシア等には(特に興味があるのでもない限り)行くことはないし、ロシア文化やロシア語を習うということも少ないのではないかと思います。せいぜい、数少ないロシア料理等が日本で知られているところです。
さて、本映画です。
ほぼモノクロという展開です。ただ、リニューアル版というわけではなく、当時の雰囲気を出したかったためにこうしたのだろうというところです(そのため、リボンの色が青だとか何だとかという発言は、確かめようがないという問題も一応あるのはある…)。事件自体も実際に起きたもので、ソ連崩壊→ロシア成立の1992年まで延々と隠されてきたので、そもそも現在でも「何が正しくて何が正しくないのか」という点が完全にはっきりとせず(関係者も亡くなった方もいれば、墓地等を掘り起こすというのは(倫理上)まずいということもあり、「現在、情報公開が進んだロシアの中で得られた情報を総合的に勘案した結果」という扱いです。
内容として、結構、日本基準で見ていて「わかりそうでわかりにくい字幕が多い」点がやはり気になりました。日本は漢字圏なので、わからない単語でも漢字で書いてある限り、漢字からの推測が利きますが、それこそ、原始的な共産主義(マルクス等)の「共産党宣言」などのレベルから、当時のソ連の共産主義の語、さらに事件の舞台となった地域(ただ、こちらは原則、漢字で出る)と色々出るので、実は「漢字圏である日本では」、ある程度推測がつくものもあるが、それは漢字圏であるからであり、その推測が正しいかどうかは保障されない、というものです。
ひるがえって映画の内容を見ると、1960年代という時代背景から見ると、日本も無批判で他国のことを言えるわけではなく、戦後間もない混乱期は、それこそいわゆる「正規の裁判」によらずに処刑をしていたり、現在基準で考えれば支離滅裂というような事件は結構あったりします(なお、これらのほぼ全ては現在では当事者謝罪という形でクローズしていあす)。そのため、日本も「実は」こういう「支離滅裂なことをやっていた時代」があったということは知っておかなければならないところでしょう(戦後の混乱期等)。
なお、現在(2021~2022年)に日本でもロシアでも、同じような事件が起きたら、それはもう証拠が完全に残りますから、どちらにも言い分はありません。
さて、この映画の舞台となった都市は、いわゆる「非正規軍」という扱いの「コザック」という文化がソ連(ロシア)にはあり、その集まりでできたのが、この町です。したがって、19世紀の本当の終わり(1890年ごろ)には、当時、まだフェミニスト思想すら危うかったソ連(ロシア)に女学校がたてられるなど、文化は首都をしのいでいたようです。第二次世界大戦で一時期、ナチスドイツに占領されていた時期もありましたが、この都市はこの当時、旧ソ連の中でも工業都市として知らない人も少なくはなかった(ただ、ソ連が大きすぎたために、全部を知っている人が(共産主義で秘密主義という文化もあって)少なかった、という妙な論点もあった)という特異な経緯を持ちます。
本事件そのものはソ連内部の「組織のもめごと」ですが、そうなる過程というのには必ず何かが入っています。1人や2人でこういう行動はとれないからです。複数人のチェックが入っているのが普通であり、それが映画内での描写でもあり、今のウクライナ侵攻でもまさにそうです。
ただ、他の方が何度も書かれれているのであえて書きませんが、本映画を通じて、「正しい意味で」「ロシア文化に興味を持っていただければ」という強い願いです。「国同士のモメ愛とエンターテイメントをいっしょにしちゃいけない」(日本と韓国は仲は良いとは言えないけど、エンターテイメントである韓国映画はどんどん来ます)のです。
このことを間違えると、15日、東京の駅だったでしょうか、キリル文字の看板「だけ」を外していたものが元通りになった(もっとも、キリル文字を使う=ロシア人(語) とは限りません)のことも、結局グチャグチャになってしまうのです。
本映画がそれこそ本当に今回のウクライナ侵攻について是か非かを論じているのなら、それにはレビューで答えるつもりですが、「政治経済の問題と、エンターテインメントを混ぜることの危うさ」も理解はしているので、ここは「解答なし」になるかな、と思いまう。
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(減点0.3) ロシア映画という事情もあるので、字幕などやはり担当できる方が少ないのはわかるのですが、字幕不足という点は結構見られます。
最初から何が足りないこれが足りないという話はどんどん出るのですが、「スーパー」だの何だのという表記は一切ないので(というより、この映画の舞台となる街は、前述したように、かなり大きな都市で、ほぼ何でもあった)、セリフのマニアックさ(漢字圏なので理解はできるが…というだけ)も入ると、さらにきついです。
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