ニューオーダーのレビュー・感想・評価
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「緑」が表すものとは?
SFディストピアはまぁまぁ胸糞悪くなる事もあるが、本作の胸糞度はかなり高めだと思う。子どもが興味を持つ映画では無いが、PG-12で公開された事に違和感を覚える。
上流階級の結婚パーティーにて暴徒化した市民が押し寄せ、地獄絵図と化す展開なのだが、それはこれから始まる悲劇の発端に過ぎず、目を疑うシーンが満載の衝撃展開となっていく。
確かに金持ちの人間には成功と闇がチラつき、庶民からすると例えばその人物が汚職等で財産を失ったりすると「ざま見ろ」と心のどこかで思うだろう。本作では短い本編の中でそんな上流階級の人間、下流階級の人間それぞれの光と闇を映し出している作品となっている。
主人公のマリアンは家がかなりの資産家で、結婚パーティーに数多くの著名人等が訪れる家系だ。そんな中、元使用人の男性が訪れ、妻の手術代を援助して欲しいと申し出てくる。それでも主人公以外は冷たくあしらい、追い返してしまう。このシーンは我々一般市民から見た金持ちのイメージ像だろう。コネや賄賂等金で解決して私利私欲を満たすのに、困っている低所得層には見向きもしない。これが彼らにとっての光と闇の一部である。そこに押し寄せた暴徒化した市民。彼らには上流階級の家々を襲い、金品を略奪して暴行や殺害をする事が支配からの自由を表している。だが、最終的には軍の鎮圧によって大勢が命を落とすという闇が訪れる。冒頭で芸術的な演出に多く「緑」が使われるが、緑は平和の色であり、緑の羽募金等で一般的にも知れ渡っている。ところがその緑を不快感たっぷりに描いており、生理的な嫌悪感をもよおす位だ。その理由が終盤で描かれているという構図なのだろう。終盤で描かれるあの新体制が平和であり自由と考えるのか否かと観客に訴えかける様になっているのだと思う。
本作は明確には描かれないものの、メキシコが舞台(あるいはメキシコを模した架空の国)だが、時代背景も描かれていない為、SF感を感じることは無い。恐らく近い未来のイメージだが、時代は進めど国によっては情勢が不安定だったり、市民が自由に思想、発言が出来ない国や地域がある事は変わりないだろう。我々日本人には現実味が湧かないかも知れないが、この出来事をSFではなく、現実にも近い事が起きている事も忘れてはならない問題だ。本作はあくまでも1つの作品であるが、そんな事を考えさせられる様なテーマとなっている。1人でじっくりとこの現実味を帯びたSF物語を味わうことをお勧めしたい。
よかった
貧困層と富裕層の対立を描いているのだけど、一部を切り取って富裕層側からの目線で描いていて、全体像がよく分からず非常に食い足りない。もっとすごい面白いのを期待していて、実際面白くできそうなので残念だ。メイドが貴金属をごっそり盗っていくのがらしくていい。
ありそうな話だから恐ろしい
主人公は、富裕層家族の中で育った娘マリアン。幸せ絶頂の結婚式の日に、身内の手術費がないとお金を借りにきた昔の使用人に対しても、親身になって何とかしてあげたいと、親族や知り合いからお金を集めるために走り回る人格者でもある。
本作の世界観としては、貧困層の増加によって、政府や富裕層に対しての不満が爆発。使用人や労働者たち、そして同調する者たちが結託して、暴動に発展してしまっているというカオスなもの。
しかし今作が恐ろしい点は、現実に起きてもおかしくないということだ。
ある程度の誇張はされているものの、舞台となっているメキシコは、貧富の差が激しく、常に麻薬カルテルや人身売買、武装した強盗の襲撃など、危険が絶えず、穴を掘れば人骨が出てくるというような嘘のような本当の状況なだけに、フィクションとは言っていられない。
本作と同じような思想や不満をもった人々は、必ずいるのだ。
それを富裕層ではあるが、混じりっけのない人格者であるマリアンの視点で描かれるというのが、これまた皮肉に満ちている。
貧困層をバカにしたような、性格の悪い富裕層はいたぶられるというような、ホラーにおけるリベンジや教訓メタファーではなく、徹底的に人格者がいたぶられるのは複雑な気分にさせられるし、富裕層のもとに生まれたマリアンが自分の人生を恨むような、耐え難い体験の数々は、観ていてかなり辛くなってきてしまう。
『父の秘密』『母という名の女』といった濃厚な人間ドラマを撮り続けてきたミシェル・フランコが手掛けたスリラーという時点で、ストレートなものなはずがないとは思っていたが、ここまで後味が悪い作品だったとは……。
企画の発端はあの事件?
粛正、拷問、処刑、、、
新しい秩序は酷い。
でも生きる、愛する、、。
は『大地と自由』だったか。
1995年のパルムドールを、
クストリッツァの『アンダーグラウンド』と、
最後まで競った傑作。
構造的なニューオーダー、
場当たり的なニューオーダー。
怖さの質が違う。
最近だと、『ホテル・ムンバイ』
『ジェノサイド・ホテル』が近いか。
某国で撮影していた時に、
この国では、交渉する相手、
順番、タイミング、を間違えると、
取り返しのつかない事になる事が多いので、
気をつけてください、と言われた。
一生、出国できないどころか、
存在を消されるのか!
と絶望した、あの瞬間が、
フラッシュバックした。
空港で足止めされた。
道路が封鎖されていた。
窓外の男がこちらを見ている。
音だけヘリ。
水道の蛇口から緑色の水。
怖さを積み上げていく。
後半はあまりシナリオを整理しないで、
ニューオーダー、
新しい仕切り、
秩序の順番、
力のヒエラルキーなどを、
カオスのまま、
2014年のあの事件を匂わすように描いたのはインパクト増しを狙ったか、
または、
元々の企画はあの事件を描こうとしてたとか、なのかな。
シナリオを変更していくと、
元の企画はワンシーンのみの、
エッセンスだけ、、、
というのは海外の作品に多い。
根は階級格差か
(劇中で明示的な説明がないので想像だが、)メキシコを擬した某国で、貧富格差を背景に起こったデモが暴動と上流階級への襲撃・略奪に発展、これを契機に軍が政権を掌握(クーデターか戒厳令か)。秩序回復がままならない中、下級兵士の一団が上流階級子弟の誘拐ビジネスに精を出す。
裕福な一家の娘である主人公も誘拐された一人で、事件は父の知己である軍政の指導者とおぼしき将軍の知るところとなり、当該兵士たちは即座に銃殺される。
そして、救出された主人公は彼女を保護した兵士により殺害される。彼女の解放に奔走した使用人の親子が誘拐の「犯人」とされ処刑される。
娘を失った父は将軍と並んで、自分の使用人や同様に犯人に仕立てあげられたのであろう人々が絞首される場に立ち会う。国歌とおぼしきファンファーレが鳴り響く。
ニューオーダーというタイトルだが、この映画は今までと違う新たな秩序の到来というより、
・階級格差と相互不信
・組織犯罪の担い手が実は政府側の人間
・治安組織は組織内の不正に厳しく対処するが(犯人兵士の死体がガソリンで燃やされたのは見せしめ)、身内の恥は隠蔽する(娘を殺害したのは明らかに口封じで、他の被害者も殺されただろう)
・暴力を持つ者が支配する
といった、今のラテンアメリカ(と決めつけられるほど知識がないが)社会の病巣的問題を濃縮したディストピアの一例として寓話的に描いたように思える。
特に、使用する側とされる側の間で育まれた信頼や疑似家族としての階級を超えた親愛の情が、無意識あるいは意図的な悪意により、下層階級へのヘイトとして固定化され、結局は支配の道具となってしまう様がどうしようもなくやるせなく感じた。
個人的胸くそ悪い映画のトップ3にランク入り。
格差社会の末路を容赦なく描き出すドッシリと重たいラテン系ディストピアスリラー
豪邸に招かれた沢山のゲストで賑わう結婚パーティが一瞬で地獄になる話はスペイン産ゾンビ映画の傑作『REC レック3 ジェネシス』に似たプロットだなと思いましたが本作ではそこはツカミ程度の話。物語の核になっているのは極限まで振り切った格差社会の末路。裕福な者が貧しい者をこき使うことで成り立っている世界があっさりと崩壊する件には正直爽快感を感じるほどですが、本作は主人公の花嫁マリアンが余りにも善良であるがために別の地獄の扉が開いてしまう不条理が残酷過ぎて呆然とします。そこで繰り広げられる地獄絵図の容赦ない描写には忖度のカケラもないですが、メキシコの現状を考えると今日明日にでも現実になるかも知れないリアルな緊張感もあって壮絶なまでに不快です。裕福であろうと善良であろうと深い信仰心があろうとそんなことにはその後遅いかかる災厄の前では何の意味もない、それを乱暴に投げつけて終了する底意地の悪さに開いた口が塞がりませんでした。最悪の気分にはなりますがどっしりと重いメッセージは現代社会に暮らす我々の誰もが触れなければいけないものですので広く知られて欲しい作品です。
"予定調和なんかしてやらない!"な映画
なかなか衝撃的場面の連続でしたね…。
背筋も凍ると言うか…中途半端なホラーよりもよっぽど寒気しましたわ、これ。
中盤から後半は、もうほとんど人質にでもなったような気分で過ごさせていただきました…笑
で…
"新しい秩序"下では、不都合なものは、徹底して闇に葬り、"それ"は無かったこととなる。
そして、下らない映画的、ハリウッド的予定調和なぞ…
Mierda!…でした(笑)
*90分間ドキドキしたい方は、どうぞ!
でも、心臓弱い方はダメダメ!笑
*ちょっと補足。
中南米では、empleada(エンプレアーダ)と言って、超金持ちでなくても中流家庭であれば普通に"お手伝いさん"を雇っている事が多いです。だいたい低下層のインディヘナのようです。そして、お金持ちは、だいたいヨーロッパ系の白人ですね。
この作品では、低下層の人々が反乱を起こして政府を乗っ取ったのかと思いましたが、違いましたね。やはり、バックにいるのは白人の金持ちでした。
なんて日だ!!
うーん😔格差社会が生み出す地獄絵巻
結局現実ってこうだよね。
ハードなディストピアものですよ。舞台はメキシコ?でいいのかな?
近未来・・・というか、あと3〜5年でこうなっちゃっても不思議じゃないかもなぁ?国によっては。いやいや、当たり前のように武装勢力が存在する国では背筋が冷たくなるようなお話じゃないでしょうか?
こういう作品見ると、世の中って微妙なバランスで成り立っているんだろうなぁって思います。どこかの脆弱な部分をツンと突いたら、パァン!!!って爆発するような状態なんじゃないかなぁ?民衆が持つ不満と満足のバランスですよね。本作は、妙なヒューマンドラマが全くなく、ただただ殺伐と欲望のままに話が動いていくところが良いんですよね。結局そうですよね。畳み掛けるように襲い掛かる不条理こそ現実なのではないでしょうか?
そして、さすが!って思えるのはラストです。結局社会は一握りの権力者のものであり、彼らの意のままってのを、変わらないんだってことを言いたいのかな?舞台の地域はきっと何度も同じことを繰り返し、民衆は無意味な死を重ねていくだけなのではないだろうか?
つまり、一部の為政者。権力者への痛烈な皮肉で覆われた作品だと思うのです。
ハードな内容ですが、長すぎずズバズバと描かれるのでとても観やすいです。ただ・・・僕が平和ボケしているからなのか?途中体制の関係性が分かりずらいところが出てくるんですよね。軍隊と武装勢力(?)の違いがよくわからなくなっちゃいまして。そこがなぁ・・・。また、中盤の話に厚みを持たせたらどえらく面白くなりそうな1本でした。でも、面白い!
面白いとかよかったとは決して言えないけど、ここまで理不尽にしんどい...
貧富の格差に対する抗議活動が暴徒化したということだが、ちょっとピンとこない…。
メキシコの社会的状況は、よくわからない。しかし、社会的秩序が保たれていないことは想像がつく。
この映画の最初の展開は、貧富の格差に対する抗議活動をする者たちが暴徒化し、結婚披露パーティーの会場となっていた上流階級の豪邸を襲うということになっている。
しかし、その前振りは水道から緑の水が出たり、銃で武装していたりと、かなり計画的に見える。
暴徒と言うより、武装勢力に近いと思うが、その武装勢力の人間が銃で人を撃ったり、人を誘拐して拉致したりするのだが、警察が破壊された街の中で武装勢力を鎮圧する場面は出てこない。街の中も車で自由に移動している。
貧富の格差はテーマ的には受けるのだと思うが、観ていてリアリティを感じない。
すでに警察権力が通じなくなっているという設定なのだろうか。しかし、そんな世情で結婚披露パーティーなど行う訳がない。
ベルリンで賞を取っているようだが、ウケ狙いの映画であることは否めないと思う。
かなり期待外れの映画と言えるかもしれない。
暴動、クーデター、軍政、腐敗
あるのは、暴力
幸せになるはずの結婚式
そこに、貧困者が暴徒となり現れ
従業員達は、裏切る
さんざんこき使いやがってって。
助けてくれるはずの軍も同じ
安月給で命かけられるか!
今のウクライナの戦場も同じ
掠奪、レイプ、殺人
やるせない
話だが
これから
ありえる話だろうなあ!
後味は相当苦いが、味わってみる価値はある
ある豪邸で開かれている結婚披露パーティー。
裕福で若い新郎新婦を祝いに集った政財界の名士や華やかな面々。一方そこから程近い地区では貧富の格差に対する抗議デモが爆発的な広がりを生み暴徒化が拡大していた。
不穏な空気を感じながらも進行する祝宴は"招かれざる客"によって、殺戮と略奪の渦の中へと一気に呑み込まれていく。
ついさっきまであった日常が一瞬で崩壊し、地獄のような混乱へ突き落とされるが、しかし恐怖はそこで終わらない。
暴動は軍部によって武力鎮圧され街には戒厳令が敷かれるのだが…。
New Order= 新たな秩序。
善意も温情も正義も通用しない。
僅かな希望は容赦なく踏みにじられる。
真実は都合よく歪められ、力無き者が無条件で支配されすべてを奪われていく。そしてまた暴力の連鎖が善と悪の境界線をかき消していく。
絶望のディストピアは空想世界の話でなく、戦時下のウクライナをはじめ、表からは見えにくい世界中のどこかしこに存在することを痛烈に思い知る。
名匠ミヒャエル・ハネケの「ファニーゲーム」という問題作があったが、あれに近い不快感や嫌悪感を覚える人もいると思うので軽々しくオススメはできない。人によってはいわゆる"胸糞映画"の部類に紐付けられるかも。
しかし現実に戦場という無法地帯で繰り広げられる殺戮や性犯罪、拷問、銃社会における殺人や略奪行為の不条理と恐怖を、濃密なリアリティーでえぐり出した裏側に見え隠れするのは、腐敗まみれの社会構造や歪んだ秩序への危機感と、未来への警告だと気づく。
メキシコが抱える社会問題と治安はもちろん日本とは大きく異なるが、ここ数年のパンデミックで浮き彫りになったようにグローバルにシームレスにつながり合う世界に生きる私たち人類が行き着く先にある"新たな秩序"は、一歩間違えればこの作品に描かれる悪夢のようなものになりかねないと。
救いのない無慈悲な現実に晒され続ける人々のニュースを日々目にする今、これを下世話なフィクションだと受け流す気になれないのも本音。
時には逃げずに"最悪な世界"を体感して、ネガティヴに想像を膨らませてみるのも悪い事じゃない。
後味は相当苦いが、味わってみる価値は確かにある。
ディストピアSFではない
日本に生まれて良かったと実感する。
メキシコ・フランス合作なので現代のメキシコの都会が舞台だろう。戒厳令下の混乱をドキュメンタリー調で冷淡に描いた作品。
軍事クーデターの戒厳令下の非常事態の映像は見る人を不安にさせ正義や善人も存在しない恐怖をリアルに感じた怖い作品でした。
2020年・第77回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員グランプリ)を受賞したディストピアスリラー。
ハリウッド映画だとトム・クルーズの様なヒーローを活躍させてヒロインを助けて無事終わるのだがこの作品は最初から最後まで全く救いがなく衝撃のラストも後味も悪く他人にはお勧めしにくい。しかし映像は力強く民衆の混乱もスケール感もあり出演者も熱演、現実感が半端なくとても見応えがありました。
全く娯楽要素はないのですが見る価値は十分あるので覚悟を決めて86分を耐えてください。
ニューオーダーとは”新しい秩序”という意味らしいです。
日本に生まれて良かったと実感します。
選挙には行った方が良い
緑色が強いポスターで、ホラーと書いてあったので、『スピーシーズン種の起源』みたいな、謎の生物に襲われて緑の体液が出てくるやつを想像してましたが違いました。
メキシコ(?)の上級国民が酷い目に遭う話でした。
日本では大規模な反政府でもはないし、災害に乗じた大規模な略奪はない、軍事クーデターは100年前の話しです。日本人の多くは暴力と無縁の塀の内側にいると思っているはずです。本作を見ている間中、日本でも数年のうちにこんなことが起こる可能性を想像して怖かったです。
過去60年間政権交代が有ったのは6年間らしいです。毎週のように政権与党のスキャンダルが発覚していますが、かつてのように報道されません。30年間所得は増えず、年金の給付は削られ、物価は急激に上昇し、投資に対する優遇策が作られようとしています。経済問題だけでも酷いのに、直近の選挙では与党の優勢が伝えられています。その上、言論や表現の自由を縮小する立法が検討され、基本的人権を制限する憲法改正を謳う政党が沢山あります。
さらに、排外主義的で、より経済的な立場の弱い人々を攻撃する政策を掲げる、新興政党が複数現れていますが、彼らは直ぐには政権を取れそうにはありません。また、宗教的思想を背景に持つ勢力もいます。
国内の紛争映画はかつても沢山ありましたが、中南米やアフリカや東南アジアなどの開発途上国が舞台で、他人事でした。
今日の日本はすでに、先進国とは言えない経済状況ですよね。武器はどうするかと言えば、みんなの嫌いなあの国が工場を作ってくれますよ。『The MOLE』見ませんでしたか?
そんな妄想をしながら鑑賞したので、結構怖かったです。エンドロールが全く無音になるんですよ、観客も無言で席をたたない。上映後に劇場の扉の外から銃を持ったゲリラが登場するサプライズでもあるのかと思いました。
選挙権があるうちに、選挙は行っておいた方がよさそうです。この映画も上映できなくなりますよ。
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