「明日かもしれない物語」ニューオーダー 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
明日かもしれない物語
結婚式が無事にとり行われ、マリアンは幸せの絶頂にいた。
そんな時、かつての使用人の男ロランドが結婚式にやってくる。
彼は病気の妻の手術費用が高額のため、マリアンたちにお金を借りたいと頼ってきたのだ。
彼女は必死に解決策を探すが、家族たち全くは取り合ってくれない。
時を同じくして、街では低所得者たちが突如反乱を起こし始めていた。
そして、その地獄は富裕層が集まるマリアンの結婚式会場にまで忍び寄っていた。
目を背けたくなるような現実の映画。
ただし、せめて映画の中だけでもしっかり直視しなければならない。
社会に根強く存在している目に見えないヒエラルキー。
その均衡の崩壊は今すぐにでも起こる可能性があるし、映画内の地獄のような惨状は今も世界のどこかで起きている真実だ。
緑の塗料が社会組織の危うさや脆さを鮮明に色付ける。
きっともう現実は水道水が緑になるレベルまで達しているはずだ。
特に印象的だったのが、敵も味方もないというところ。
はじめは貧困層の富裕層に対する反乱だったのだが、それをすぐに治めた軍隊が今度は覇権を握る。
秩序を守るものが壊れたら元には戻れない。
金のために金持ちを誘拐して拷問にかけ身代金を要求する。
そして金のない一般市民には罪をなすりつけ微塵の遠慮もなく殺す。
軍部がクーデターを起こし…という事象は日本でも起きているようにものすごく身近だ。
これは軍などに問題があるというよりは社会のシステムの問題。
平和ボケしている現代の日本人こそ観るべき作品だと思った。
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