「ここが地獄」残酷で異常 tokyotonbiさんの映画レビュー(感想・評価)
ここが地獄
伏線の張りめぐらし方、話の展開、登場人物の態度に至るまで後半につれて段階的に明らかにされていく内容にドキドキした。
いい映画。
ある意味でハッピーエンドなんだけど、犯した罪とはどういうことなのか、とこちらにメッセージを発しているようで結構見終わってずっしり来る映画だった。
何度も自分の罪を自覚させるため体験をループさせる、どこにあるのかも分からない施設。罪を犯した者たちが集められるディスカッションは、過激な懲罰こそ無いものの、ここが地獄のように思えてくる。
主人公エドガーと妻メイロンの釣り合わせは語らずとも背景を連想させた。見ている私にもバイアスがあることが苦々しく感じられる。こういう差別や他人からの邪推が起こるだろうと予想できてそれがそう外れていない。
怯えた様子から主人公はもっと残虐なことでもしてるのかなと思ったけど、現実的で過激な犯罪描写に行かずそれが映画の軸をブレさせること無く進ませている。
主人公は自分を取り巻く人物たちを追体験し、自分の知らなかった真相と、他者から自分の行動がどう写っていたのか自覚することになる。
「自分のしたことからは逃げられない したことを認めて生きるしかない」というドリスの台詞が印象的だった。社会の中でその恩恵を受け生きている以上、やったことの責任は常についてくると言われているようだ。
しかも自分のしたことを味合わされるのが死後というから恐怖もひとしお。
「罪を認めたことで得られる安心感 自分の罪を認めたから罰も受け入れられる、痛みから安心を感じられる時が来る」という両親を刺殺した青年の疲れ切った安らぎが薄ら寒い。擦り切れながら延々と罰を受けている。
殺人を犯した人間の「やりなおしたい」、自分のやったことを延々と自覚させられる様は更生施設のようだ。
きっと主人公エドガーはドリスのような人間が来たら助けようとするだろうし、毒入りの食事をする前に誰かに止めてもらうことが無い限り、ループが終わることは無いんだろう。
けれどもだいぶ爽やかだった。映画から伝わる贖罪というものがどういうものか、少しだけ分かった気がする。
雑感
ドリスの自殺が重罪というのもキリスト教色を感じた。けど現実的には、他人を殺した殺人者とは一緒にされたくないよね。だから近付くなって態度が酷かったのね。
木とか洗剤とか小道具が効いててもう一度見直したいと思った。
他者の視点を見る部分だけど、殺されるシーンも中には体験している人いるのかな?
妻メイロンの序盤の演技が浮いてて気になった。
終わり方の自己犠牲も宗教の価値観。けれども結局また戻っている主人公。変えたいといった主人公は変える方法を見つけたし、今後どうなるのか、少しワクワクする。