「二人ノ世界。二人の世界。」二人ノ世界 はるたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
二人ノ世界。二人の世界。
少し遠出しましたが評判が良かったので足を運んでみました。観れて良かったです。
首から下が麻痺して動かない俊作。ヘルパー募集を知ってやって来たのはサングラスに白杖をつく女性、華恵。
事故で突然体の自由を奪われた俊作と、徐々に光を失っていった華恵の"二人ノ世界"が京都の町のひと部屋を舞台にぶつかり合いながらも時を刻み始める。
出会ったばかりの華恵に俊作を託すと決めた年老いた父の覚悟。
「毎日天井を見て、食って、垂れ流すだけ」他人を寄せ付けない俊作の荒んだ心に華恵の温もりがじんわりと染み込んでゆく。
その人の心の痛みは本人にしか分からない。他人が知った風に踏み込むことでどれ程傷付けてしまうのか。けれどその痛みにそっと触れてくれる誰かがいたら、もしくはその誰かだって人知れず痛みを抱えているということを知ったなら今よりずっと優しくなれるはず。
そう思うのはただのきれい事か。絵空事か。
「どっちがどっちの介護をしてるんですか?」そんな質問に苦笑する俊作。
華恵と共に暮らして行きたいという気持ちに正直に向き合う。
自分がしてあげられることがどれだけあるだろうか。
華恵をこの世界に踏み留まらせた形見の鈴の音が暗闇に吸い込まれてゆく。
いつもの部屋。二人だけのラストシーン。
この目でその顔を見ることはできない。
この腕でその体を抱き締めることはできない。
それでも二人にこのままこの部屋で幸せに過ごしてほしいと願うのは私のエゴだろうか。
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