「過去、未来を変えた。ように見えるけど実は…」夏への扉 キミのいる未来へ つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
過去、未来を変えた。ように見えるけど実は…
過去は変えられるというホーキング博士かな?の言葉から、私たちが生きる現実とは違う過去で物語は始まる。
いわゆるタイムトラベルものであることは知っていたので、すでに変わってしまっている過去というのはすでに面白い。過去を変え未来はどうなるのかが焦点かなと考えた。
冷凍睡眠に入る前の段階では人工知能やロボット、永久動力炉などの未来的なパーツはあるものの、SF作品というにはまだ全然で、状況説明が多いこともあり、キラキラした清原果耶だけで何とか保たせた印象。
もしかしたら軽いタイムトラベルとロマンスしかないかも?なんて考えた自分は愚かだった。流石はSF界の巨匠の一角ロバート・A・ハインライン。後半は俄然面白くなる。
山崎賢人演じる宗一郎の視点で物語を追っているので、彼が過去を変えて未来を変えたように見えるけれど、実は何も変わってないってところがこの作品の面白いところなんだよね。
30年眠り過去へ行きまた30年眠るのは宗一郎にとって同一線上にある出来事に過ぎず、明らかに存在している別の並行世界に影響を及ぼしたりしていないんだな。少しの間だけ交わるけどね。
最初の言葉である「過去は変えられる」はミスリードを誘うための仕掛けであり、一つも過去も未来も変えていないところが面白い。
一応ちょっと説明すると、私たちが観ている世界の宗一郎の他に一つの並行世界に一人の宗一郎がいる。どの並行世界の宗一郎も最初に見せられた過去を経験してタイムトラベルし、再び眠り新しい未来になる。全ての宗一郎が同じ経験をするのだから何も変わっていないことになるんだな。
宗一郎視点では過去でのことも未来の出来事ということになる。
ただ、第三者視点で理解しようとした場合、宗一郎はどこかのタイミングで並行世界を移動したことになる。タイムトラベルしたときか冷凍睡眠したときか。
そしてもう一人、宗一郎と同じように並行世界を渡ったと思われる人物がいる。藤木直人演じるピートだ。
最初の睡眠から目覚めた宗一郎が病院を抜け出すが、横断歩道で横に立つピートは、さっきまで病院にいたピートとは別のピートだと思われる。
どこかのタイミングで野良ピートになったピートは好奇心から宗一郎の隣に立つのだ。
つまり、作品内では描かれないがピートにはピートのドラマがありあのタイミングでだけ二人のピートが存在していたのではないか。
病院のピートがただついてきたと考えるよりも面白い可能性だと思う。