「蚊帳の外から彼らを批判するのは簡単だ」スペシャルズ! 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話 Jaxさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5蚊帳の外から彼らを批判するのは簡単だ

2023年5月11日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

「最強のふたり」のような感動コメディを期待してみるとやや期待外れかもしれない。
実際の自閉症患者やその家族も多数出演しているが、彼らと接する職員たちの日常は果てしなく骨が折れるし自己犠牲を伴う。それでいて見返りは少ない。そのような日常が淡々と繰り返される。エンターテイメントとしては面白い類ではないかもしれないが観るべき映画である。

政府の監査官の言い分も間違ってはいない。無認可で一般社会ですら就労が困難な若者を支援員にあてるのはどうなのかというのはごもっともだ。だが施設を閉鎖したところで福祉にも医療にも政府にも見放されている40人以上の子供達を明日からどうするのか。その代替措置すら用意しない政府の尻拭いをするのは患者達に理不尽に殴られても彼らを決して見捨てない人々である。患者達の親や医師たちが政府はブリュノたちのような無認可の施設職員を頼りにしていることを何より恥じるべきなのだ。
人々の正義感や使命感、そして途方もない自己犠牲によってのみ生かされている人間がいるのだ。今この瞬間も。

追記:ブリュノ達と比べてColabo批判をしているレビューが見受けられるが、ブリュノ達の組織は無認可だし、赤字経営なので雑会計でいえば似たようなところだろう。蚊帳の外から支援者を批判する人々が今現在困っている人々に対して何か手を差し伸べることはない。
行き場のない少女たちや自閉症患者の支援も、自己犠牲や使命感なしで出来ることではないのだ。支援の必要な人たちがえてして犯行的であるように、支援者にとってはあまりに見返りがないからだ。Colaboを批判する暇があったら女性たちに嫌がらせしたい一心でバスカフェを妨害する奴らを批判しろ。

Jax