「マイノリティ/マジョリティの二分法的思考を超える」友達やめた。 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
マイノリティ/マジョリティの二分法的思考を超える
耳の聞こえない映画監督、今村彩子がアスペルガー症候群の友人とのギクシャクした日々を捉えたドキュメンタリーで、人間関係の本質を突いた素晴らしい作品だった。耳が聞こえないという点でマイノリティである監督は、アスペルガー症候群で人付き合いが上手くできない友人と接するうちに、耳の障害以外の部分ではマジョリティであると気がつく。反対に、その友人は身体の障害はないから、その点ではマジョリティだが、心のあり方についてはマイノリティかもしれない。切り取り方によって人はいくらでもマイノリティになったり、マジョリティになったりする。近年、マイノリティ/マジョリティという言葉はよく耳にするけど、それってそもそも絶対的な分け方なんてないんじゃないかと思えてくる。
様々な人々の包摂性が叫ばれる時代だが、マイノリティ/マジョリティを分ける切り口はいくらでも存在する。だとすれば、誰もが切り取り方によってマイノリティになりうる。ならば、人はみなマイノリティであり、同時にマジョリティでもある。これからの時代を生きる上で重要なヒントが詰まった作品だった。
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